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他の誰かに「居場所」を与えるということ。

■おかげさまで「ぷらっとほーむ」も創設して5年目、いろんな人びととの、いろんなかたちでの関わりを経て、現在の姿がある。ある人びとはここをひとつのきっかけとして新しい自分の居場所を見つけて旅立ち、またある人びとはこことの付き合いかたをそのときどきに合うかたちに変えながら利用し続けている。とはいえ、イベントごとなどに際しては、かつての利用者(いわゆるOB/OG)と現役の利用者とが顔を合わせる場面も多い。先日、ある出来事があった。
■あえて詳しくは書かない。概要のみ記す。あるOB/OGが、久しぶりに訪れた居場所において、かつて彼(女)が居場所に通っていたころのそのままの、ある振る舞いを採用した。ところが、彼(女)が採用したその振る舞いは、現在の居場所の秩序においては、現役利用者の間で配分されるべく慣習的に定められた役割であった。現在の居場所を知らない彼(女)にはそのことはわからない。ここで、両者の間に少なからず摩擦が生じた。キャラがかぶってしまったのだ。

■キャラという語彙を用いた。この語句を使い「居場所」を記述すると次のようになる。すなわち「居場所」とは、他の誰ともキャラがかぶらない場所、「居場所」があるとは、所属する集団のなかで自分に割り振られた固有の、誰ともかぶらないキャラがある状態、をさす。私たちの誰もが、集団の秩序をつくる場面においては、成員間の相互行為を通じて、相互にキャラがかぶらないよう、互いのキャラの間の微妙な調整ワークを行っている。「居場所」はかくして確保される。

■「ぷらほ」では、このキャラ調整ワークの過程にスタッフが介入する。キャラの棲み分けによる秩序形成は、当然ながら、スタッフの介入がなくても達成されうる。とはいえ、自己のキャラ開示や交渉が苦手な人びとにあっては、スタッフの介入が意味を成す場面も多かろう。複数の人びとの間でキャラがかぶった場合には、スタッフが同じキャラの異なる側面に意味づけをして棲み分けを図ったり、それとは別のキャラを引き出してその人のキャラをずらしたりする。

■とはいえ、キャラ調整のワークは、何もスタッフだけがすることでも、すべきことでもない。その場に居合わせた誰もがこのワークに関与しうるし、またその責任がある。いかに自分のキャラ=居場所を確保するかだけでなく、ときには自分のキャラ=居場所を抑えて、他の誰かにキャラ=居場所を開いてやること。これもまた一つのキャラ(他の人の居場所をつくるキャラ)である。お互いがこのシャドウ・ワークを担い合える関係性、私たちが目指すのはそれだ。

※『ぷらっとほーむ通信』053号(2007年09月号) 所収

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