世紀末、という言葉がこれほどふさわしかったことが、未だかつてあっただろうか。
世紀末、という言葉がこれほどふさわしかったことが、未だかつてあっただろうか。
テロや戦争はもちろん悲惨だけど、私はずっと、人間レベルの手には負えない、例えば地震とかの自然災害や地球温暖化の方が恐怖のレベルでは遥かに怖いと思っていて、
特に最近の地球温暖化による世界中で起きている気候異常や森林火災に、
もはや地球は100年以内に住めなくなるのかもしれない、なんて思っていた矢先に。
ウィルスが世界をこんな風に震撼するなんて、想像すらしていなかった。
当然だ。現在地球に生きる誰もが、こんなの経験したことないんだから。
ことの組み合わせが、史上最強の確率で、最悪だった。
発生したのがもしアメリカだったり、日本やイギリスや他の国だったら、
こんなことには絶対になっていなかった。
今や世界一の勢いで経済が加速する中国だ。
数年前から中国の人々はメインランドから世界中に旅立ち、
凄まじい勢いで活躍し世界に新たなストリームを築き始めていた。
人口14億人の大国が、だ。
エボラがアフリカ以上に広がらなかったのは、
アフリカ人で国外に飛べる人なんて、ほんの限られた裕福な人しか無理だったことは、間違いなく大きな要素だと思う。
そんな私は今これを、アラブ首長国連邦の、シャルージャ空港で書いている。
軽蔑されても呆れられても構わないけれどそう、私はこんな世界的危機の最中、アフリカのケニアから、ネパールに向けて飛んだ。
アメリカ人のパートナーと遠距離をしていて、ネパールに彼のお母さんが住むこともあり、そこで落ち合うことになっていた、数ヶ月ぶりに。
後悔は全くしていないことを前置きしながら、結論から言うと私は彼に会うことも、ネパールに入国することも許されなかった。
ネパール側が私の移動中に入国条件を変更し、ビザも健康診断書も事前に入手していたけど、それでは不十分になり、入国拒否を食らった。
数日前に到着した彼は入国できて、フライトが5回キャンセル変更されて遅れて到着した私は、入ることができなかった。
2日間、食事も水も与えられず、カトマンズのトリブバン空港の薄汚い部屋に隔離された。
私の他に、オーストラリア人とカナダ人の女性が同じ境遇にあった。
入管職員は英語をあまり理解せず、何か尋ねようとしても部屋へ戻れ!とどやされ、
入国条件変更を通知されていたにも関わらず私を乗船させたので、責任は航空会社にあるらしく、
私の横で食べ物や水やブランケットをそれぞれの航空会社から支給されている二人を横目に、
しかし私の航空会社は翌日の、知らされてもいなかった夜中のフライト時間まで現れなかった。
彼が空港に通い詰め、セキュリティに頼み込んで食べ物と水と現金を送り込んでくれた時、
私は泣き崩れた。たったの50メートル、すぐ先にいる恋人に、
でも一瞬触れることさえ許されなくて、さめざめと泣き通した。
監獄とはこんな感じなんだろうか。
そこから経由地のシャルージャに要人扱いで移動させられ、
すると今度はその間にUAEが全ての人にアライバルビザ発行を停止したため、
空港から出ることは許されず、
かつ住んているケニアが基本外国人の入国を拒否したので、
フライトがことごとくキャンセルされている状況。
文字通り、空港暮らし。
例のごとく私の航空会社はちっとも優しくなくて、
フライトまで私はどうすればいいのか、と尋ねると、トランジットエリアで待ってろ、と。
さすがにそこは冷静に論理的に戦い、なんとか空港内のホテルのベッドを無料で用意して貰った。
空きがない、の一点張りだったけど、知ってたわ、絶対にあるって。
寝床さえ確保できれば特に悪くはない。
なんでも手に入るし、とりあえずwifiあるからなんとかなる。
もともとネパールでのんびりするつもりだったから、
大して変わりはしない。
一人きり、ということ以外。
することもないからブラブラしているうちに、
空港の店の店員と仲良くなって、みんな口々にコロナが世界にもたらした影響を嘆く。
あなたはまだマシな方よ、と誰かが言う。
ケニアならフライトは必ず一度は運行されるわ。
でも見て、ここにいるほとんどの人たち、空港にもう一週間もいるのよ。
国境が閉鎖されて、行き場所をなくしてしまったの、と。
この未だかつてない危機に世界が慄く中、それでも私は、
これは起こるべくして、起きるように起きたのだ、と思う。
特定人種に対する差別に、度を越した物品の買いだめ。
露呈した人々のモラルと知性の低さとは裏腹に、
停止した産業活動により大気汚染は改善され、空気は新鮮さを取り戻し、
済んだ水には魚が戻ってきているという。
そう、私たちはこのデジタル時代に、
考える力と真の人間性を失い続け、そして地球を壊してきたのだ。
見て見てほしい。
この状況でいかに、個々の人間性が問われているかを。
いかにその本性が明るみになっているかを。
コロナウィルス以前と以後で、きっと世界は違って見えるに違いないと思う。
それがいい方向に向かうものであって欲しい。
より多くの人がせめてこの危機に、ー人間として問われていることについて、
考えるきっかけになって欲しいと思う。
何度も言い続けているけれど、
私たちは明日にでも全てを失い得るし、死に得る。
人生は思っている以上に儚く短いのだ。
だから愛しているとありがとうは、
声を大にして伝えた方がいいんだよ。
こんな時こそ、かけがえのない人はもちろん、隣人にも、
優しさと愛を持って接していこう。
私たちの、人間性が問われている。
P.S
Air Arabiaの利用はオススメしない。
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