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【詩のようなもの】飢えたる者のつみ

さあさあどうぞ、と手招きをして
あたたかい部屋に通されて
あなたは紅茶をふるまってくれる

さあさあどうぞ
クッキーをいかが
とても優しい声と笑顔で

ひとつ、ふたつ
クッキーを取って
ゆっくりゆっくり噛みしめる

こんなにおなかが空いていたかと
食べたらよけいに
おなかが空くみたいだと
そんなふうに感じていた

暖炉の炎はあたたかく
ぱちぱちとはぜて、かぐわしく

ほんとうは
テーブルにあるものをみんな食べたい
サンドイッチも
ケーキも
スコーンも、残らず食べつくしたい

飢えているのはつみですね
卑しいですね
情けないですね
とても哀しいことですね

だけどあなたに嫌われたくないから
ありがとう、ご馳走さま
そう言ってほほ笑んで席を立つ

飢えているのはつみですね
卑しいですね
情けないですね
とても哀しいことですね

だけどいつから飢えていたのか
私には思い出せないの

クッキーをすこしもらったから
よけいにおなかが空いちゃった



お読みいただき、ありがとうございました!




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