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エッセイ|陽の沈まない国

『世界には、陽の沈まない国があるんだって。』

 ドラマのなかのセリフ。

 行く当てのない家出少女たちが、おそらく訪れることが叶わないであろう、白夜の写真を見ながら、寂しげに、けれど一縷の希望を託して、語り合う。

 ドラマの詳細は忘れてしまったが、坂元裕二さんの脚本だったのではないか。それもうろ覚えで、申し訳ないけれど。

 けれど、陽の沈まない国は、同時に、陽の昇らない国でもあるのだ。

 北半球の北極に近い国々では、夏はずっと昼が、冬場はずっと夜が続く。


 そんな国に住むひとびとのインタビューを観たことがある。

 彼らは口々に言うのだ、夜の季節が好きだと。

「夜の世界はこころが落ち着く。」「夜の季節は平和で穏やかだ。」と。

 想像にしか過ぎないけど、きっと彼らの家では、暖炉の炎が一日中ぱちぱちと音をさせ、

 日本の夜よりもずっと暗い、けれどあたたかい色の間接照明に彩られているのだろう。

 もしもそんな国を訪れることができるなら、私は、夜の季節に行きたいと思う。

(おしまい)

お読みくださって、ありがとうございました。


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