歴史を変える「実行力」について考えてみた
突然だが、戦略を生業にしていると「実行力」という言葉には耳が痛いことも多い。戦略のスペシャリストというのは、本当に実体のないものを売る商売である。
ビジネスはいくらきれいな絵を描いたとしても、実行されなければ無意味・無価値どころか、絵を描くのに使われたコスト(人件費・外注費・レポート購入費などなど)さえも回収できない。
(・・・んなことは、誰だってわかってるわ!)
では「実行力」とは何なのか?
色々な意見があるところだとは思うが、
tarakoなりにイメージしやすい解釈をここにまとめたいと思う。
想定読者:
世界を変えるようなアイディアがあるが実行できていない方、組織を動かさねばならな立場の方、戦略実行の壁にぶち当たっている方、など
本記事での「実行力」の定義
「実行力」という言葉は、実にあいまいで欺瞞に満ちている。
tarakoはいつもそう思ってきた。
なので、この記事で対象とする「実行力」を以下のように定義・限定したうえで、議論したいと思う。
定義:
自分のアイディア(戦略)に対して、社会・顧客・自組織が呼応し、自分のイメージする事業(戦術)が収益を生み出すこと
「実行力」の必然性と偶発性、それに内部要因と外部(環境)要因
上記の定義に従って、「実行力」の必然性と偶発性について考察したい。
tarakoは「実行力」の結果を見たければ、今成功しているビジネスや社会変革を見てみればよいと思う。
例えば、Googleでも、航空会社でも、読者の方自身の所属している組織でもいい。読み進める前にまず一つイメージしていただきたい。
(大企業や長年続く老舗などであれば、何らかの成功を積重ねてきている)
ここで、最も重要な質問:
100年前にタイムスリップしたとして、あなたはその成功を再現できますか?
(下世話に言えば、「未来の知識を使って大金持ちになっていますか?」)
この質問が実にクリティカルである。
つまり、今ある「成功」は先人の類稀なる実行力の上に成り立っており、あなたが100年前に戻ったとして、(強くてニューゲーム的に科学・経済・歴史の知識を持って行ってもいい)
その成功を再現できるか?という問いである。
後述するが、tarako自身は自信がない。。
時に天才は時代が追い付かず、アイディアが死後に再評価されるなんてことが大いにある。
芸術などであればそれもよいのかもしれないが、ビジネスでの成功や社会変革を目指すのであれば、生きているうちに形にしたいものである。
つまり、
どんなに世界を変えるようなアイディアと、天才クラスの才能・知識を持っていたとしても、実行力がなければ認知される形では成功はしないということだ。
一方で、偉大な事業、例えばGoogleのような覇権的検索エンジンは、ラリーとセルゲイがいなければ、今の世の中に存在しなかったのだろうか?
こればかりは誰にも確かなことは言えないが、おそらくNoではないか?
彼らがやらなかったのならほかのだれかがそのポジションをとっていただろう。(偶発性)
実際、堀江貴文さんも同時期に同等のアイディアで検索エンジンの開発を進めていたそうである。つまり、日本語圏で開発していなかったら、とか、コードのエレガントさではなく、泥臭い物理的なサーバー拡張という手段を取っていたら、とか、偶発的に発生したストーリー分岐で、未来の人が語る「実行力」というのは変わってしまうのである。
堀江さんは継続的に多様な事業を成功に導く類稀な実行力の持ち主であることは言うまでもない(後述する内部要因)。
確かに、彼らは当時、他のだれもまねできない規模のサーバーを買い込み、アクセスの集中に備えたという逸話もあるなど、泥臭い実行力があるのは確かである(必然性)
つまり、「実行力」と一言で言ったとしても、実行者の類稀な実行力の上に、偶発性(タイミング、フィーリング、ハプニング的な)が一定程度必ず残ってしまうという点は、実行力に苦手意識のある者にとっては救いであり、悲しい部分でもある。
さらに、実行者自身の実力・アイディアといった「内部要因」にくわえ、
アイディアを実行するインフラが整っているか?自力でそこから整えられる覚悟があるか?という「外部要因」もしっかりと捉えておかなければならない。
100年前にタイムスリップしたとして、
Googleのような検索エンジンを作ろうとしたら、
知識がいくらあったとしても、基盤となる技術に全くアクセスできず、
実行はできないだろう。
tarako自身に「実行力」はあるか?
とはいえ、実行できないからと言って、
外部要因や偶発性といった逃げ道にすがってはいけない。
確かに、100年後でなければ実現できないようなアイディアを思いつくくらいの天才ならば、そういった悩みもあるかもしれないが。。
最近Yoasobiの大正浪漫を聞いていて、
「今のSNSが空間軸を越えたコミュニケーションを可能にしたなら、次は時間軸も越えたコミュニケーションを可能にできないか?」
とか思ったが、tarakoにはそれを実現するような実行力は、今はなさそうだ。
実行力のない人のパターンは大きく4つに分けれれると思う。
実行したいアイディアなんて、そもそもない(実行不要型)
→無理しなくてOK。世界の9割はこのセグメントだと思う。アイディアはあるが、はじめの一歩の腰が重い(ビビり型:tarakoもココ)
→実行できる理由・阻害されている理由を「内部要因 x 外部要因」「必然性 x 偶発性」で整理してみよう。(後述)アイディアが未実行だが、実行しなくても出口があり、満足している(SF作家型)
→今のままでもOK。ただし、ソードアートオンラインがSONYとコラボしたように、ファンを増やしたうえで、実行主体を巻き込んであなたの世界観を現実世界に近づけてみては?アイディアがあり、実行も試みたが、失敗したため、再挑戦できないでいる(トラウマ型)
→実行できる理由・阻害されている理由を、失敗した理由を「内部要因 x 外部要因」「必然性 x 偶発性」で整理してみよう。
「実行力」のイメトレ(←訓練中)
上記の2-4のセグメントであれば、
「内部要因 x 外部要因」「必然性 x 偶発性」のマトリックスで整理してみると、実行の道筋が見えてくるだろう。
今回は粗い粒度で試してみるが、
各要因を詳細に記述することで、アイディアとそれを実行に移すためのリソース・不確実性を可視化・共有できるので、ぜひ使ってみていただきたい。
身近な事例で練習問題:
最近何かと制約の多い日本。子連れで海外に移住したい。
と思いつつ、2-3年重い腰が上がらない。。ついついできない理由を探してしまうので、家族にすら相談できていない。。
海外移住のアイディアを実行に向けたプランを作成しなさい。
(今回は背景分析まで。実際は皆さんの状況を踏まえて考えてみてください)
解答例:
あまりきれいに分けられていない部分もあり恐縮だが、、
少なくとも、これを見て言えることは、サンクコストやトレードオフは必ず発生し、
最後は不確実な中での決断が必要である。
そしてさらに重要なのは、上記の難しい決断には、不利益を被る可能性のある家族や親族、会社(特に人手不足の自部門など)といったステークホルダーとの調整が必須ということだ。
これは、ビジネスにおいては日々発生することであり、
リーダーたちはこういった(or もっとシリアスな)難し決断を常に行っている。
①1週間以内:家族・親族のOKを取り付ける(初めの一歩が最重要。必然性の問題はクリア)
②1-2週間以内:社内募集に応募してみる
(部署への相談と礼儀は必要だが、最終的には個人のキャリアを尊重する)
③社内募集で採用後:可能な限りすぐに渡航する
(迷いを生じさせない)
tarako自身、
上記のように、身近な実行力から鍛えていこうと思う。
(参謀的に意思決定をサポートすることは得意なのだが、自分が実行者になるのが、自分のキャリアのステップアップの障壁と認識している)
久々の記事作成、かつ、書きたいことはたくさんたまっているので、
少し話が発散したが、順次記事にしていきたいと思う。
ちなみに、上記の練習問題は、少し脚色してあるが、
ここ最近tarakoが経験した海外移住の話に近い。
その時のTips含め、共有していけたらと思う。