日経ビジネスの特集記事 87
悪意 vs 企業 カスハラ、炎上・・・ 揺らぐ性善説 2023.03.27 3/3
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
CONTENTS
PART 1 スシロー「ペロペロ事件」が映し出すSNSで正義感は反転 暴走する消費者
PART 2 「三方よし」はもう限界 もろくも崩れる性善説 カスハラにあらがう術
組織にも巣食う悪意の処方箋
PART 3 悪意の予兆を見逃すな 犯罪、不正に迷惑行為 テックで挑む「防衛術」
木村花さんの母 「その投稿は優しいですか?」
PART 4 日本人は「いじわる」気質? ”愛情ホルモン” の功罪 悪意を昇華させるには
第3回は
木村花さんの母 「その投稿は優しいですか?」
PART 4 日本人は「いじわる」気質? ”愛情ホルモン” の功罪 悪意を昇華させるには
を取り上げます。
今週の特集記事のテーマは
利便性を追い求めてきた私たちの社会システムが「悪意」を増長させている。人と人とを結ぶSNS(交流サイト)は悪意を拡散・増幅する装置としても機能する。不透明感の強い社会に渦巻く負の感情は、個人や企業のささいなミスを見逃さない。怒りの対象を「悪」と断定した人々は、容赦ない暴言や嘲笑で“生贄(いけにえ)”を攻撃する。歯止めが利かない悪意の暴走は、個人や企業、社会すら壊死(えし)させる猛毒と言えるだろう。性善説を信じるのは大切だ。だが、降りかかる火の粉からステークホルダーを守らねばならない。
(『日経ビジネス』 2023.03.27 号 p. 009)
です。
ネット上のトラブルで、なかなか根本的解決に至らないこととして、誹謗中傷し、心を破壊してしまう投稿があります。投稿した人間は常に自分の身を安全なところに置くために、顔を晒すことも実名を使うことも決してしません。
暴力には2種類あります。一つは、手や足あるいは武器を使って攻撃し、けがを負わせたり、場合によっては死に至らしめる暴力です。
そしてもう一つの暴力は言葉による暴力です。心ない暴言によって相手の心や精神に傷を負わせ、時には自死に至らしめるものです。心の傷は容易には回復しません。
言葉の暴力をふるった人間は、自分の積もり積もった不平、不満を晴らすためか、あるいは間違った正義感によるもので、相手を傷つけても何とも感じない非人間的な者です。
「己の欲せざることは人に施すことなかれ」(自分が望まないことは他人にしてはいけない)という言葉があります。
または、「己の欲することを人に施せ」という言葉もあります。
これは自分がしたいことを他人にしなさいという意味ですが、誤った解釈をすると俺は他人に暴言を吐きたいから吐いたんだ、となりかねません。
教育には、知育、体育、徳育、食育その他があります。
この中の徳育をしっかり受けていないから誹謗中傷をしても平気でいられるのです。
道徳というとすぐに「古臭い」ということになるのかもしれませんが、これは人間の人間たる所以を規定するもので、古いとか新しいという問題ではありません。
木村花さんの母 「その投稿は優しいですか?」
プロレスラーの木村花さんが亡くなられたのは2020年5月のことです。もうすぐ4年になります。
誹謗中傷を受け、心に傷を負って耐えられなくなって、自ら命を絶ちました。花さんのお母さまの響子さんは、特定された加害者を告訴し、損害賠償請求訴訟を起こし、民事・刑事両面で法的責任を追及しているそうです。
響子さんが『日経ビジネス』のインタビューに答えています。
これからその一部を掲載します。
誹謗中傷は犯罪なのだ、ということを自覚するきっかけになると良いのですが……。
軽い気持ちで誹謗中傷している可能性がある
そのコメントは優しいですか?
心のケアが不可欠
被害者救済に協力を!
誹謗中傷をなくすための活動を続ける
響子さんの言葉で、私がとても印象に残ったものは下記のものでした。
誹謗中傷して楽しんでいる人は、相手への優しさや思いやりの気持ちが欠如していると思います。
心の砂漠化が進行しているのでしょう。
PART 4 日本人は「いじわる」気質? ”愛情ホルモン” の功罪 悪意を昇華させるには
”愛情ホルモン” オキシトシン
⭐オキシトシンというホルモンの働きを理解するだけで、悪意を薄めることができるとは考えていません。
次に書かれているように、負の側面もあるからです。
次の記述には違和感を感じました。そのような面もあるでしょうが、それがすべてではないと思います。
なぜなら、悪意の源泉がホルモンだけで説明がつくほど単純ではないからです。複雑な要素が絡んでいると考えられるからです。
次の説明はかなり飛躍していると感じました。
ある実験が行われたそうです。一つはっきりしていることは、選ばれた人たちがどのようなメンタリティでどうのような経歴の持ち主だったのか、そして年齢層や男女の比率など、限定された条件の下で実験が行われたという事実です。
つまり、同じ実験を別の場所で人も入れ替えて行なった場合、結果はどうだったのか、が検証されていないからです。
日本人は相手が損することを喜ぶ?
*西條氏ら: 高知工科大学フューチャー・デザイン研究所の西條辰義特任教授ら
実験の概念図をご覧ください。
同様の実験を米国人や中国人にも実施したそうです。
その結果は・・・。
ここまでくると、日本人が自分たち民族を貶めているのではないか、と訝ってしまいました。
私の解釈は偏っているでしょうか?
次のケースは、戦前の米騒動(1918年)を例にとって説明しています。
確かに、歴史上の事実かもしれませんが、約100年後の現代日本においてもそのまま当てはまるのかというと、大いに疑問に感じました。
妬みが苦しめた日本一の企業
出る杭は打たれるのが日本社会
出る杭は打たれるという悪しき伝統については強く同意します。
余談になりますが、出ない杭は抜かれるという表現もありました。
出ない杭は抜かれるというのは、何も結果を出さない者は間引きされるー左遷されたり、退職勧告を受けるーという意味です。
こうした例は実際にありました。
SNSに関するフェイクニュースのケースが紹介されています。
コオロギ食
やっかいなことは、国の「ゴリ押し」といった見方が絡んでいることです。
SNSに関しては、プラットフォーマーの監視体制が重要になってきます。
表現の自由とプライバシーの侵害はバランスを取るのがきわめて難しいですが、表現の自由の中に「悪意」が含まれていないかどうかがポイントになると考えています。
投稿者が自分の投稿は正しいと正当化しても、被害者からも第三者からも「悪意」が含まれていると解釈されるならば、その投稿は身勝手なものと断定されます。そして、投稿の内容をきちんと検討せずに拡散する人間も同じ罪を犯していると自覚しなくてはなりません。
良い点は認め、改善すべき課題は指摘する
どうやらこのあたりが落としどころのようです。
経営者に求められること
🔷 編集後記
「悪意 vs 企業」というテーマで取り上げていますが、ここには大きな問題が横たわっています。プライバシーの取り扱い方や、被害を未然に防ぐためにはどうしたらよいのかという点です。
非常にデリケートな問題であるため、一歩踏み込んだ扱いをしたくても、踏みとどまらなくてはならないというジレンマに陥ることがあります。
トレードオフ(二者択一、二律背反)に頭を悩まされることもあるでしょう。あちらが立てば、こちらが立たずということです。
事件を未然に防ぐためのシステム開発が行われても、そのシステムが採用されるとは限りません。プライバシーの侵害に抵触する恐れがあるからです。
日本社会は、どちらかと言えば性善説で成り立ってきたと言えます。
ところが、社会が変容し、人心にも変化が起き、性悪説に則った方針を採らざるを得ない時代になってきていると感じています。
その理由の一つとして、近所づきあいが希薄になってきたことが言えます。
昔ならば、最近、ご近所の誰々さんがの様子がどうもおかしいということに気づいて、ある程度対策を講じることができたことがありました。
ところが、現代では、隣近所にどんな人が住んでいるのかさえもお互いに知らないというケースは特段珍しいことではありません。
事件が起きて初めて、その人物が隣近所にいたことを知るということがあります。
プライバシーの介入はどこまでなら許されるのかというのは、非常にむずかしい問題であり、また時代とともに変化していくものでもある、と私は考えています。
SNSによる誹謗中傷の根絶は難しいかもしれませんが、減らす努力は続けていかなくてはなりません。
投稿者の特定ができるようにするべきだと思っています。希望的観測ですが、無責任な発言が少なくなる可能性があると信じているからです。
日経ビジネスはビジネス週刊誌です。日経ビジネスを発行しているのは日経BP社です。日本経済新聞社の子会社です。
日経ビジネスは、日経BP社の記者が独自の取材を敢行し、記事にしています。親会社の日本経済新聞ではしがらみがあり、そこまで書けない事実でも取り上げることがしばしばあります。
私論ですが、日経ビジネスは日本経済新聞をライバル視しているのではないかとさえ思っています。
もちろん、雑誌と新聞とでは、同一のテーマでも取り扱い方が異なるという点はあるかもしれません。
新聞と比べ、雑誌では一つのテーマを深掘りし、ページを割くことが出来るという点で優位性があると考えています。
🔴情報源はできるだけ多く持つ
海外情報を入手しようとすると、英語力が必須であったり、膨大な情報がクラウドサービスを利用すれば手に入りますが、それでも非公開情報はいくらでもあります。まず信頼性の高い文献に当たってみることが必要になります。
日本の国立国会図書館のウェブサイトや米国の議会図書館のウェブサイトに当たってみるのも良いかもしれません。
もちろん、ロイターやブルームバーグなどの報道機関の日本版(PCやアプリ)がありますから、これらを利活用すればある程度の情報を収集することは可能です。これらのLINEアプリもありますので、情報を収集することはできます。
あるいは『日経ビジネス』や『東洋経済』、『ダイヤモンド』、『プレジデント』などの雑誌やウェブ版から情報収集することもできます。これらの雑誌やウェブ版の購読をお勧めします。
あとは自分で、関心のあることに絞って検索したり、ChatGPTやBardに質問してみて、知見を広めるのが良いでしょう。
ロイター
ブルームバーグ
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