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薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 3/3


【『日経ビジネス』の特集記事 】 #18

✅はじめに

⭐『日経ビジネス』の特集記事から、私が特に関心を持った個所重要と考えた個所を抜粋しました。
Ameba(アメブロ)に投稿していた記事は再編集し、加筆修正し、新たな情報を加味し、再投稿した記事は他の「バックナンバー」というマガジンにまとめています。

⭐原則として特集記事を3回に分けて投稿します。
「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」です。
プロフィールから)


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日経ビジネスの特集記事 #18

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 3/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

PART 2 ロシア産LNGが翻弄
寒波が来れば需給逼迫
現実味帯びる史上初「節ガス」

テレビやラジオで「サハリン2」という言葉を見聞きしたことがあるでしょう。

この記事を読むまでは十分な理解をしていませんでした。
一言で言えば、ロシア産のLNGの開発事業です。サハリン1もあります。

ロシアとウクライナの紛争が長引き、その影響でロシア産LNGの供給が困難になっています。

この背景を探ってみましょう。
いったい何が起こっているのか少しずつ理解できるようになるでしょう。

「我々は何も失っておらず、これからも失うことはない」。9月7日、ロシア・ウラジオストクで開かれた国際会議「東方経済フォーラム」でプーチン大統領はこう強調した。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.028


プーチン大統領による理解に苦しむ行動が、世界中に不安と危機感を拡大させています。

6月末、プーチン氏は突如、サハリン2をロシア企業に移管する大統領令を発令。日本政府やエネルギー関係者には動揺が走った。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.028


英シェルが新会社に参画するとプーチン大統領は期待していましたが、英シャルはその期待に応えませんでした。

シェルは9月頭、新会社には参画しないことを決めてロシア側に通告。何も失っていないと強がるロシアは、実際にはシェルを失っていた。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.028


事業開始以来、シェルは実質的なオペレーターとして生産を担ってきた。権益の半分を持つのはロシア国営のガスプロムでも、生産を支えるのは技術力を有するシェル以外にない。
(中略)
売上高2600億ドル(約36兆円、21年)を誇る巨大メジャーにとってサハリン2は小さな事業の一つにすぎない。シェルは経済的損失より、ロシアに迎合して国際的評判を落とすリスクが重いと判断した。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.028


サハリン2の所在地を見ると、日本列島にかなり近いことが分かります。

●サハリン2から日本へのLNG船ルート
薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか
 2022.10.17 p.028


権益維持した日本勢

一方で日本勢は新会社への参画を決めました。

対照的に新会社への参画を決め権益を維持したのは三井物産と三菱商事の日本勢。背景には、日本全体で年間500万~600万トンもの液化天然ガス(LNG)をサハリン2から調達していることがある。これはロシアからの総調達量にほぼ等しい。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 pp.028-9


日本がLNGをどこから調達しているかは、次の円グラフで構成比が分かります。オーストラリアが全体の1/3以上を占めています。
ロシアは想定していたよりかなり少ないと思いました。

ロシアから1割弱のLNGを調達する
●日本のLNG輸入国の割合(2021年)
出所:財務省貿易統計
薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか
 2022.10.17 p.029



英シェルが新会社に参画しないことが分かり、次にどの企業が加わるかが注目されています。

今後、注目されるのは、シェルの後釜にどの企業が入るかだ。シェルが抜けたあとの新会社の27.5%の株式は現在、ロシア政府が保有し、売却先を探している。一部で噂される中国は対米関係の悪化を懸念し消極的だという。今、名前が挙がっているのがロシアのガス大手、ノバテク。これが実現すれば、50%の株式を保有するガスプロムと合わせて、7割以上がロシア系で占められる。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.029


日本にとって気になるのは、サハリン2からのLNGが途絶することです。この場合想定できるケースは2つあるそうです。

できれば避けたいサハリン2からのLNGの途絶。想定されるのは2つのケースだ。一つは、ロシア側が日本に制裁を加えようと意図的に止めてくるケース。そしてもう一つは、ロシア側も予期せぬトラブルに見舞われ、停止するケースだ。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.029


問題はどちらのケースの可能性が高いかです。

前者は今のところ可能性が低いというのが専門家らの予想だ。
(中略)
一方、よりリスクが高いのが後者だ。サハリン2は21年に大規模改修されたばかりだが、トラブルはいつ起きるか分からない。

この1年を振り返っても、日本の複数のLNG調達先でトラブルが発生している。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.029



次に表をご覧ください。
日本各社がサハリン2からのLNGの調達量を示しています。


日本各社がサハリン2からLNGを調達
●各社が契約する年間調達量
薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか
 2022.10.17 p.029


ここで注意したい点は、欧州勢が撤退したため、ロシアは日本との契約は旨味があると考えていることです。

欧米勢が撤退するなか、日本向けLNGで外貨が稼げることもロシアにとって重要だ。日本の電力、ガス会社が21年にロシアのLNGに支払った金額は日本円で4000億円近い。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.030


「日本円で4000億円近い」ということでかなりの金額です。

日本にとってサハリン2はとても重要ですが、トラブルの発生は避けたいところです。

サハリン2は、サハリン1のように「急に生産が落ちることはない」(総合商社関係者)とみられているが、トラブルの発生が引き金になる可能性はある。

「恐れているのは今冬のサハリン2の途絶です」。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.030


そこで、日本は「節ガス」の3段階の要請を設けることにしたそうです。
これは私たち消費者にとっても、とても重要な点です。看過することはできません。

国は都市ガスの逼迫度合いに応じて3段階の節ガス要請を設ける。最も軽い第1段階では、消費者に自主的な節ガスを要請。資源エネ庁の担当者は「風呂や暖房など家庭での節ガスが中心になる」と話す。

第2段階になると、都市ガスの小売事業者が数値目標を決めて企業などに節ガスを要請する。

それでも不足する場合は、法律に基づき最終段階となる「使用制限令」を発令。日付と時間帯、削減割合を企業に提示して節ガスをしてもらう。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 pp.030-1


こうした状況に、国は指を咥えて待っているのではなく、LNGの新たな調達先探しに奔走しているそうです。

電力ガス需要が増える冬を目前にして、国はLNGの新たな調達先探しにも奔走している。

その候補の一つが、数年後に年間LNG生産量が1億トン超と世界最大になる見込みのカタールだ。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.031


カタールと言えば、11月20日から始まる、サッカーワールドカップの開催国です。

毎回、ワールドカップは夏場に開催されてきましたが、暑さが尋常でないため冬季開催となりました。

カタールの首都「ドーハの年間平均気温 27.8℃、年間平均最高気温 33.1℃、年間平均最低気温 22.5℃、年間降水量 75ミリメートル、年間降水日数 9日、年間日射時間 3,432.9時間、1962年~2013年の平均値」(Zen Tech)ということです。


このウェブサイトによれば、11月の過去最高気温は38℃で、平均気温は24.6℃ということで決して涼しくはありませんね。


国はサハリン2からのLNGの途絶に危機感を強めています。
日本は天然資源が乏しく、海外からの供給に頼らざるをえないという実情があります。

国やエネルギー関係者がこれほど警戒感を強めて迎える冬は珍しい。目前にあるのはサハリン2の途絶危機という外的要因だが、日本のエネルギー逼迫の根本原因は国の政策にある。それは今に始まったことではない。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.031



PART 3 懸念は安定供給だけではない
国富流出が止まらない
原発再稼働で国は前面に立て

LNGの調達だけでは日本のエネルギーは賄えないのでしょうか?
もしそうであれば、原発再稼働ということが現実味を帯びてきます。

しかし、現実には難しそうです。

電力の最大需要地である東電管内での原発再稼働が待たれるが、「今冬の稼働は現実的に難しい」と東電関係者は話す。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.032


燃料価格の高騰が追い打ちをかけています。ドル高円安が続いています。
1ドル150円~180円という予測もあります。

しかし、さらに深刻度が増すのは貿易赤字が拡大していることです。

燃料価格の高騰がもたらすのはエネルギー安定調達への懸念だけでない。過去最悪レベルの勢いで膨らみ続けているのが貿易赤字だ。
(中略)
国内の全原発が停止していた14年上期に過去最大の赤字を記録したが、22年上期はそれに迫る5兆6688億円の赤字で過去2番目となった。

貿易赤字が膨らんでいる最大の要因はエネルギー。原発稼働が停滞するなかで今、日本の電力を支えるのが、全体の約7割を占める火力発電所だ。その燃料である石炭や液化天然ガス(LNG)の高騰が止まらないのだから、日本の貿易赤字額はさらに拡大する可能性が高い。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.032


PART 2 ロシア産LNGが翻弄
寒波が来れば需給逼迫
現実味帯びる史上初「節ガス」

で英シェルがサハリン2を撤退したことをお伝えしました。

撤退表明までにシェルはどれくらいの利益を稼いでいたのか書かれています。莫大な金額です!

事実上のロシア「撤退」を決めた英シェルは22年4~6月期の最終利益が前期比5.3倍の180億ドル(約2兆5000億円)と過去最高となった。サハリン1の撤退を表明した米エクソンモービルも178億ドル(約2兆4000億円)と最高益を更新。産出国のサウジアラビアなど中東の国営エネルギー企業も利益を伸ばしている。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.033


エネルギー会社の抱く懸念は?

「ロシアがサハリン2を止めてこないか。それが一番心配だ」。今冬を控え、多くのエネルギー会社が抱く懸念だ。日本のエネルギー安全保障の「急所」をロシアに握られる異常事態。原発再稼働が停滞し、国の対策が遅れるほど日本の国富も流出し続ける。日本は取るべき対策がないわけではない。少なくとも動かすことができる原発がある。これ以上傷口を広げないため、国はもっと真剣に可能性を探るべきだろう。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.033




🔷 編集後記

エネルギー問題は、資源の乏しい日本にとって永遠のテーマです。
「原発の再稼働があるじゃないか」と安易に口にする人たちがいますが、東日本大震災による東京電力福島第1原発事故の恐ろしさを体験した私たちは、原発に対してアレルギーを持っています。

過去、原発事故はメディアが報道していない事故(トラブル)を含めると、度々起きています。

近年では事故(トラブル)の発生件数は減少してきています。
とは言え、原発1基ごとに算出された事故(トラブル)の発生件数を見ると、安心できる状況ではありません。

1件でも大事故が発生すれば、放射能被曝や自宅を捨てて他の地で生活しなければならなくなります。


プルトニウムの半減期は24,110年ですからね。

プルトニウム239の半減期は24,110年である。

プルトニウム239 Wikipedia




⭐ 私の回想録


⭐ 私のマガジン (2022.11.01現在)






















   


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藤巻 隆
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