見出し画像

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則 第1章 人生の目的 なぜ哲学が必要なのか 第4回

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則 第1章 人生の目的 なぜ哲学が必要なのか 第4回

はじめに

経営の神様といえば、パナソニック(旧松下電器産業)の創業者、松下幸之助氏ですが、もうひとりの経営の神様といえば稲盛和夫氏と私は考えています。

本著『「成功」と「失敗」の法則』が出版されたのは、今から15年前の2008年9月24日のことです。

平成20年9月24日第1刷発行
致知出版社


実を言いますと、この本をいつ購入したのか覚えていません。そればかりか、積読つんどくでつい最近まで読んでいませんでした。

たまたま、捜し物をしていた時、この本に気づき、手に取り読んでみることにしました。

読み出すと、腹落ちすることばかりが書かれていました。
今までにも、稲盛和夫氏の著作を何冊か読んだことがあります。

例えば、下記のような本です。


これらの著作物に共通することは、稲盛氏の一貫した考え方である、「人間を磨く」ことを絶え間なく続ける、ということです。

これは生涯を通じて行うことです。ですから一朝一夕で結果が出るものではありません。


稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則

第1章 人生の目的

第2章 思いの力

第3章 自らを慎む

第4章 道をひらくもの

章立ての順序でエッセンスをお伝えしていきます。
特に印象に残った言葉を抜粋します。
稲盛氏の言葉の真意をじっくり考えてみましょう。


第1章 人生の目的 

なぜ哲学が必要なのか

原理原則に立ち返って生きる

 近代の日本人は、生活の中から編み出された数々の叡智えいちを古くさいという理由で排除し、便利さを追うあまり、なくてはならぬ多くのものを失ってきましたが、倫理や道徳といったことも、その一つなのでしょう。
 いまこそ、人間としての根本の原理原則に立ち返り、それに沿って日々をたしかに生きることが求められているのではないでしょうか。私たち一人ひとりが、そう心がけることで、それぞれの人生がより充実したものになるばかりか、社会もより豊かで潤いのあるものになっていくことを、私は信じています。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  pp.27-8           



今日よりよき明日のために

人生でただ一つ滅びないもの

 私たち人間が生きている意味、人生の目的はどこにあるのでしょうか。

 その根本的な問いかけに、私は真正面から、それは「心を高める」こと、「魂を磨く」ことにあると答えたいと思います。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  p.30               


 たった一つだけ滅びないものがあるとすれば、それは、「魂」というものなのではないでしょうか。

 死を迎えるときには、現世でつくりあげた地位も名誉も財産もすべて脱ぎ捨て、「魂」だけ携えて、新しい旅立ちをしなくてはなりません。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  p.31               


試練は魂を磨く絶好の機会

 様々な苦楽を味わい、幸不幸の波に洗われながら、息絶えるその日まで、まずたゆまず一所懸命に生きていく。
 その日々を磨砂みがきずなとして、人間性を高め、精神を修養し、この世にやってきたときよりも少しでも高い次元の魂を持ってこの世を去っていく。
 私はこのことよりほかに、人間が生きる目的はないと思うのです。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  p.32              

 

 生きていくということは、苦しいことのほうが多いものです。ときに、なぜ自分だけがこんな苦労をするのかと、神や仏を恨みたくなることもあるでしょう。
 しかしそのような苦しき人生だからこそ、その苦は「魂」を磨くための試練だと考える必要があるのです。

 人生における労苦とは、己の人間性を鍛えるための絶好のチャンスなのです。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  p.33              


 人生とは心を高めるために与えられた期間であり、魂を磨くための修養の場であると考えられる人___そういう人こそが、限りある人生を、豊かで実り多いものとし、周囲にも素晴らしい幸福をもたらすことができるのです。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  pp.33-4           



✒ 編集後記

『「成功」と「失敗」の法則』は、稲盛和夫氏から私たちへの熱いメッセージです。稲盛氏自身が、人間として、経営者として、数多の成功体験、失敗体験を通じて身につけた不変の法則のエッセンスを述べた書籍です。

頭で考えただけでなく、実践を通じて身につけたものです。

稲盛氏の他の書籍には「利他」「敬天愛人」などの言葉が頻繁に出てきます。どれでも良いので、一度手にとってページをめくってみてください。
何かヒントが得られるかもしれません。

🔷「日々を磨砂みがきずなとして、人間性を高め、精神を修養し、この世にやってきたときよりも少しでも高い次元の魂を持ってこの世を去っていく。
 私はこのことよりほかに、人間が生きる目的はないと思うのです」

この言葉が強く心に響きました。
私はまだ、稲盛さんが到達した高み、領域にはまったく届いていません。

「なぜ自分だけがこんな苦労をするのかと、神や仏を恨みたくなることも」何度もありました。

今でもその気持ちは続いています。

しかし、その気持ちを懐き続けている限り、「少しでも高い次元の魂を持ってこの世を去っていく」ことはできないでしょう。

最近気がついたのですが、パーパス(purposs)という言葉をよく目にすることがあります。目的という意味ですが、存在意義とか存在理由という意味でも使われています。

存在理由とか存在意義といえば、フランス語のレーゾン・デートルが有名で、私もときどき使うことがあります。その言葉に該当する英単語は何だろうかと長年考えてきましたが、見つかりませんでした。

ある時、発見がありました。それがパーパスだったのです。

「私はこのことよりほかに、人間が生きる目的はないと思うのです」の文脈の中で、「人間が生きる目的」「人間の存在理由(パーパス)」に置き換えてもすんなり通るのではないでしょうか。


日経ビジネス(2022.09.12号)で稲盛和夫氏を特集していました。

この記事の内容を3回にわたってnoteに投稿しましたので、お時間がありましたら、ご覧ください。




✅稲盛経営の真髄

日経ビジネスは2022年9月26日号から12回にわたって「稲盛和夫の経営12ヵ条」を集中連載しました。

前回に引き続き「稲盛和夫の経営12ヵ条」の概要2条ずつご紹介していきます。

尚、「本連載は『経営12ヵ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫 著、日経BP 日本経済新聞出版)の内容を抜粋したものです。『稲盛和夫の実学』『アメーバ経営』に続く「稲盛経営3部作」、ここに完結」と書かれています。

第5回 「足し算式の経営」をしてはならない

経営12ヵ条 第5条
売上を最大限に伸ばし、
経費を最小限に抑える
入るを量って、出ずるを制する。
利益を追うのではない。利益は後からついてくる

「今日まで、私はこの『売上最大、経費最小』を経営の大原則としてきました。非常にシンプルな原則ですが、この原則をただひたすら貫くことで、京セラは素晴らしい高収益体質の企業となることができたのです」

「『売上を増やせば経費も増える』といった『常識』にとらわれることなく、売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑えていくための創意工夫を徹底的に続けていくことが大切です。そうした姿勢が高収益を生み出すのです」

「『足し算式の経営』は、絶対にしてはなりません。受注が150まで増えたら、生産性を高めて、本来なら5割増やしたい人員を2割増あるいは3割増に抑えるのです。そうすることで、高収益の企業体質を実現することができます」

「『売上最大、経費最小』を実践するためには、業績が組織ごとに、かつリアルタイムにわかる管理会計システムが不可欠です。組織の業績向上に貢献する会計システムや仕組みを構築することも、経営者の大切な役割のひとつです」

「つまり、経営を盤石なものとするためには、精緻な管理会計システムの構築が不可欠なのです。そのために私が京セラ創立間もないころから苦心してつくり上げてきたのが、『アメーバ経営』です」

「アメーバ経営は、一般の財務会計とは異なり、経営者が経営するために用いる管理会計手法です」

「アメーバ経営では、『それぞれのアメーバが1時間当りいくらの付加価値を生んだのか』という独自の指標で収支を表現しています」

「簡単に言えば、それぞれのアメーバの売上から、使った経費をすべて差し引き、残った金額をその月の総労働時間で割った数字を指標として経営しています。このような仕組みを、われわれは『時間当たり採算制度』と呼んでいます」

(日経ビジネス 2022.10.24『稲盛和夫の経営12ヵ条』pp.064-6)


第6回 「最高の値段」を見抜けるのは経営トップ

経営12ヵ条 第6条
値決めは経営
値決めはトップの仕事。お客様も喜び、
自分も儲かるポイントは一点である

「私は、かつて京セラの役員を登用するとき、商いの原点がわかっている人でなければならないと考え、その登用試験として『夜鳴きうどん屋の経営』考えたことがあります。
 うどん屋の屋台の設備が買えるくらいの資金を役員候補に渡し、彼らに商売をさせてみて、何カ月後かに資金をどれだけ増やして帰ってくるか、それを競わせようとしたのです。なぜ、そのようなことを考えたのか。私は、屋台のうどん屋の商売に、経営の極意がすべて含まれていると考えたからです」

「つまり、うどん屋の商売には、経営のさまざまな要素が凝縮しており、その値決めひとつで、経営の才覚があるかどうかを測ることができるのです。そのため、役員登用の登竜門としたいと考えたのです。実際には実施していませんが、経営の死命を制するのは値決めであるということを固く信じています」

「製品の価値を正確に判断したうえで、製品1個当りの利幅と販売数量との積が極大値になる、ある一点を求め、それで値決めをしなくてはならないのです。その一点とは、お客様が喜んで買ってくださる『最高の値段』でなければならないと考えています」

「この一点を見抜けるのは、営業部長や一営業担当ではなく、経営トップでなければならないはずです。これは、値決めに当たって大切なことです」

「熟慮を重ねて決めた価格で最大の利益を生み出すには、『経営努力』が必要なのです。その際には、材料費がいくら、人件費がいくら、諸経費がいくらかかるといった固定観念や常識は一切捨て去るべきです。仕様や品質など、与えられた要件をすべて満たす範囲内で、最も低いコストで製造する努力を徹底して行うことが不可欠です」

要点
「値決め」は経営者の仕事であると理解しているか
お客様が喜んで買ってくださる「最高の値段」を射止めているか
原価プラス利益で売価を決めていないか、市場価値で利益を出せるか
値決めは、仕入れやコストダウンと連動して考えられているか

(日経ビジネス 2022.10.31『稲盛和夫の経営12ヵ条』pp.066-8)




<著者略歴 『「成功」と「失敗」の法則』から>

昭和7年、鹿児島県生まれ。
鹿児島大学工学部卒業。
34年、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。
社長、会長を経て、平成9年より名誉会長を務める。
昭和59年には第二電電(現KDDI)を設立、会長に就任。
平成13年より最高顧問。
このほか、昭和59年に稲盛財団設立、「京都賞」を創設。
毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。
また、若手経営者のために経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。
主な著書に『人生と経営』『何のために生きるのか』(ともに致知出版社)、『実学・経営問答 人を生かす』(日本経済新聞出版社)、『人生の王道』(日経BP社)、『生き方』(サンマーク出版)、『成功への情熱』(PHP研究所)などがある。 

著者略歴補足 (日経ビジネス 2022年9月26日号)

2022年8月、90歳で逝去。

稲盛和夫 OFFICIAL SITE



⭐回想録


⭐マガジン (2023.04.05現在)


サポートしていただけると嬉しいです。 サポートしていただいたお金は、投稿のための資料購入代金に充てさせていただきます。