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【五木寛之 心に沁み入る不滅の言葉】 第10回
『生かされる命をみつめて 自分を愛する 編』 五木寛之講演集
五木寛之さんの『生かされる命をみつめて 自分を愛する 編』から心に沁み入る不滅の言葉をご紹介します。
五木さんは戦時中から特異な体験をしています。
「五木さんは生まれて間もなく家族と共に朝鮮半島に渡り、幼少時代を過ごしました。そこで迎えた終戦。五木さんたちは必死の思いで日本に引き揚げたそうです」(「捨てない生活も悪くない」 五木寛之さんインタビューから)
今年9月に90歳になるそうです。今日に至るまで数多の体験と多くの人々との関わりを掛け替えのない宝物のように感じている、と思っています。
五木さんは広く知られた超一流の作家ですが、随筆家としても、講演者としても超一流だと、私は思っています。
一般論ですが、もの書きは話すのがあまり得意ではないという傾向があります。しかし、五木さんは当てはまらないと思います。
「誰のために」から
五木寛之の心に沁み入る不滅の言葉 1 (28)
書くことがなにもない日ももちろんあるのです。そういう時でもなにかを見つける、無理に捻りだすという感じで、歓びの一行をつけるという日課を続けました。
「歓びノート」から
五木寛之の心に沁み入る不滅の言葉 2 (29)
今度はひとつ逆療法というのをやってみようと思いました。
一八〇度方向を転換して、一日にひとつ、本当に悲しかった、思わず涙が出たという、「今日はこんなことがあった。すごく悲しかった」ことを書いてみようと思ったのです。
これは、理屈もなにもありません。歓びで駄目だったら、ひとつ悲しみでいってみるかと、こういう感じなのですが、実際その頃、心のなかにいろいろなことで、なんとも言えない悲しいと思うことが、とても多かったことは間違いありません。
「歓びノート」から
五木寛之の心に沁み入る不滅の言葉 3 (30)
喜ぶということは、心に波立ちを起こさせ、感動するという大事なことであると。そして悲しむということも、その反対ではあるが、やはり心を波立たせ感動することなのだと。
喜ぶことと、悲しむことというのは、両極端のように見えますが、とりあえず自分の心を揺すって、そこに波を起こさせ、生き生きとした感情を取り戻すことに関しては同じではないかと思いました。
喜ぶこと、悲しむこと、いずれにしても自分の心というものが柔らかく、そして揺れ動く状態でなければなりません。
出典元
『生かされる命をみつめて 自分を愛する 編 五木寛之講演集』から
2015年10月15日 初版第1刷発行
実業之日本社
✒ 編集後記
『生かされる命をみつめて 自分を愛する 編 五木寛之講演集』は、講演集ということになっていますが、巻末を読むと、「2011年8月東京書籍刊『生かされる命をみつめて』『朝顔は闇の底に咲く』『歓ぶこと悲しむこと』に加筆の上、再構成、再編集したものです」と記載されています。
裏表紙を見ると、「50年近くかけて語った講演」と記されています。それだけの実績があります。
🔷 「喜ぶことと、悲しむことというのは、両極端のように見えますが、とりあえず自分の心を揺すって、そこに波を起こさせ、生き生きとした感情を取り戻すことに関しては同じではないかと思いました」
喜怒哀楽という言葉があります。4つの感情を表す言葉です。
喜ぶこと、怒ること、悲(哀)しむこと、楽しむこと。
この中の喜ぶことと、悲しむことは両極端の感情です。
ですが、五木さんは生き生きとした感情を取り戻すことに関しては同じではないかと指摘しています。
このように捉えることは容易ではありません。
少なくとも私には難しいことでした。
五木さんが、こうした結論に到達するには長い年月が必要だったと推測しています。
あなたはどう思いますか?
🔶 五木寛之さんの言葉は、軽妙洒脱という言葉が相応しいかもしれません。軽々に断定することはできませんが。
五木さんの言葉を読むと、心に響くという言うよりも、心に沁み入る言葉の方が適切だと思いました。
しかも、不滅の言葉と言ってもよいでしょう。
著者略歴
五木寛之ひつき・ひろゆき
1932年福岡県出身。早稲田大学露文科中退。67年、直木賞受賞。
76年、吉川英治文学賞受賞。
主な小説作品に『戒厳令の夜』『風の王国』『晴れた日には鏡をわすれて』ほか。
エッセイ、批評書に『大河の一滴』『ゆるやかな生き方』『余命』など。
02年、菊池寛賞を受賞。
10年、『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。
各文学賞選考委員も務める。
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