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堀 紘一 名言集 『コンサルティングとは何か』(10)





堀 紘一 名言集 『コンサルティングとは何か』(10)


『コンサルティングとは何か』(2011年5月10日 第1版第1刷発行 PHP研究所)は、堀紘一氏が戦略コンサルティングの第一人者として、コンサルティングについて余すところなく書き綴った、優れた書籍です。

略歴は著者紹介に譲るとして、堀 紘一氏はボストンコンサルティンググループ日本法人代表、ドリームインキュベータ(DI)創業者となり東京証券取引所に上場させました。単なる戦略コンサルタントではありません。

DIは現在電通グループ(電通G)の傘下にあり(電通GがDIの株式を219万株(20.95%)保有しています。筆頭株主です。2023年9月15日現在 SBI証券のアプリから)、堀氏は代表取締役を退任されています。

著名な経営者と「経営の本質」を議論し、獲得した知見は類まれなものです。

優れたビジネス書を数多く執筆しています。難しい言葉は極力排除し、エピソードを交え、誰にでもわかるように解説しています。

本当に優秀な人は、難しい内容を平易な言葉を用い、誰にでもわかるように説明できる人です。堀紘一氏はまさにそんな人です。

*<>は堀紘一氏の書籍で、このコーナーで紹介した書籍の中の名言の通し番号です。1冊の中の通し番号ではありません。



¶ コンサルティング導入に反対するそうした人の声は、ほとんどの場合、コンサルティングというものを知らないがための誤解である

 欧米ではすでに当たり前、日本でも取り入れる企業が増えてきたとはいえ、まだまだコンサルティング・ファーム導入に抵抗を示す人は多い。だが、コンサルティング導入に反対するそうした人の声は、ほとんどの場合、コンサルティングというものを知らないがための誤解である
 たとえば、私の知っている限り、戦略コンサルティング・ファームではない会社、たとえば総研系や会計系に戦略立案を発注して、その結果に不満を持って反対するといったマンガのような話が本当に多い。
 また、代表的な批判として、
「コンサルタントの理論など、机上の空論だ」
 というものがある。
 この批判はまさに、戦略コンサルタントが誕生した五〇年前に浴びせられたものと同じだ。前述したとおり、その批判に対してBCGおよびブルース・ヘンダーソンが出した答えが、TI(テキサス・インスツルメント)社およびデュポン社での圧倒的な成功であった。 

『コンサルティングとは何か』 
堀 紘一の名言1<183>
 


¶ 経験曲線(experience curve: エクスペリエンス・カーブ)やPPM(Product Portfolio Management)は、理論とはいえ現実から乖離かいりした空理空論ではなく、経営の実践の現場で裏打ちされた理論なのだ

 本書ですでに取り上げた経験曲線(experience curve: エクスペリエンス・カーブ)やPPM(Product Portfolio Management)は、いずれもBCGが実践の中で生み出した理論だ。つまり、理論とはいえ現実から乖離かいりした空理空論ではなく、経営の実践の現場で裏打ちされた理論なのだ
 そしてその後もBCGおよび各コンサルティング・ファームは、理論を実践で検証しつつ、そのコンサルティング手法を磨き続けている。それらの理論は、今度は経営学の教科書に採用され、それを世界中の経営者たちが学び、活用している。「コンサルタントの理論など、机上の空論だ」というのは、コンサルティングの世界のことをまったく知らない人間のたわごとである。  

『コンサルティングとは何か』 
堀 紘一の名言2<184> 


¶ 私は、コンサルティングの手法を日本企業に向けてどのようにアレンジしていくかで、いろいろと苦心した。そういう意味で、最初に手掛けた大きな案件がホンダだったことは、大いに役立った

 外資系コンサルティング・ファームが日本に進出するにあたって、問題になったことがある。それが「アメリカで開発されたコンサルティング手法は、果たして日本でそのまま使えるのか」ということであった。
(中略)
 私は、コンサルティングの手法を日本企業に向けてどのようにアレンジしていくかで、いろいろと苦心した。そういう意味で、最初に手掛けた大きな案件がホンダだったことは、大いに役立った
 その後も試行錯誤を続け、BCGのコンサルティングはアメリカの理論を基本にしながらも、日本流にアレンジされたものとして完成されていった。そしてそれを一段と日本化して、官民一体となって発展していくビジネスモデルを作ったのが、ドリームインキュベータである。もっとも、その域まで来るのに三〇年、堀、山川(現社長)と二代かかった。  

    『コンサルティングとは何か』 
堀 紘一の名言3<185> 


¶ 日本の経営者の中には、「その事実は誰が言ったことなのか?」「何に書いてあったことなのか?」といったことを疑う人が非常に多い。「この学会の資料はいい加減だから信用できない」というようなことを言いだすわけだ

 たとえば欧米なら、データを集めて事実を積み上げ、それを元にグラフを書いて説明すれば、方向性が間違っていない限り納得してもらえる。だが、日本の経営者の中には、「その事実は誰が言ったことなのか?」「何に書いてあったことなのか?」といったことを疑う人が非常に多い。「この学会の資料はいい加減だから信用できない」というようなことを言いだすわけだ
 ならばこっちも答えなくてはならない。「じゃあ、誰の言うことなら信じられるのですか?」と聞いて、具体的な人名が出てきたら、その人のところまでわざわざいって話を聞いてくる。それでも信用できないというなら、その人の連絡先を教えて、「直接電話して聞いてみてください」とお願いする。
 こういった伝え方の工夫なども、日本特有の方法論と言えるだろう。 

    『コンサルティングとは何か』 
堀 紘一の名言4<186> 


✔ 出典元

『コンサルティングとは何か』
2011年5月10日 第1版第1刷発行 PHP研究所


✍ 編集後記

🔶  『コンサルティングとは何か』は堀氏の経歴に違わない内容の本です。堀紘一氏が執筆したすべての書籍の底流に流れているのは、まさに「本質」です。

すぐに廃れてしまうハウツーものとは根本的に違います。

私たちは新奇さに目を奪われることなく、常に「本質」とは何かに着目する姿勢を貫きたいですね。

勉強は一生続けることが大切です。世の中は常に進歩しているのですから。劇的な変化にも必ず「予兆」はあります。感度の良いアンテナを張り、見逃し、聞き逃ししないようにしましょう!

「まだ若いし時間があるからまだいいや」とか「高齢だからもう勉強はしなくていい」という考え方は改めた方が良いです。

勉強は一生を通じて行なうことです。もちろん、読書だけが勉強ではありません。いろいろなことを経験するのも勉強です。

失敗から学ぶことはたくさんあります。失敗は経験したからです。チャレンジしたから失敗したのです。失敗したくなければ何もしないことです。
しかし、それでは何事もなしえません。

書籍は手許に置いておけば、いつでも何度でも参照することができます。
自分で「ここは重要だな」と思った個所に色鉛筆で線を引くとか、付箋を貼るとかしておけば、後で読み返した時、「当時はこんな個所に着目したのだな」と思い出すことができます。

逆に、見落としていた個所や、当時は重要と思っていなかった事柄が重要なポイントだったと気づくこともあります。

「この本は良書だ」と思ったらその本を何度も読み返すことが重要です。

一度読んだくらいですぐに理解できたという著書は、中身は大したことはないと判断するべきでしょう。「韋編三絶」という言葉がありますね。

私がnoteに「名言集」を投稿する際に、ごく一部を切り取って紹介するのではなく、関連した前後もできるだけ紹介するようにしています。その理由はその言葉はどのような文脈で発せられたのかが重要だと考えているからです。

そして、投稿する際に、堀紘一氏をはじめ、数多の著名な人物の書籍を再読する機会を得ることが私にとってかけがえのないことだと考えています。

なぜなら、最初に読んだ当時と、年を取ってから再読した時を比較すると、「気づき=重要な点」が異なると思ったことが何度もあったからです。

速読ですぐに読めてしまうような本は中身が薄いと思っています。
例えば、哲学書が速読で理解できますか? じっくり考えながら読まなければ理解のための手がかりさえ見つけることはできないでしょう。

つまり、速読できる本とできない本があると考えています。


🔷「日本の経営者の中には、『その事実は誰が言ったことなのか?』『何に書いてあったことなのか?』といったことを疑う人が非常に多い。『この学会の資料はいい加減だから信用できない』というようなことを言いだすわけだ」

たとえば欧米なら、データを集めて事実を積み上げ、それを元にグラフを書いて説明すれば、方向性が間違っていない限り納得してもらえる。だが日本の経営者の中には、「その事実は誰が言ったことなのか?」「何に書いてあったことなのか?」といったことを疑う人が非常に多い。「この学会の資料はいい加減だから信用できない」というようなことを言いだすわけだ。

上記の経営者が納得しない理由は3つあると考えられます。
1 自分で正しいかどうか判断できない
2 権威主義
3 他の人から聞かれた時のことを考え、「誰々(その道の権威)がこう言っている」という「答え」を用意しておくため

根本的な問題として、物事を論理的に考えるという「論理的な思考プロセス」が身に付いていないからだと推測されます。

学者と戦略コンサルタントとの決定的な違いは、現場で鍛え上げられた実践経験の差だと考えています。

大事なことは、「誰」が言ったではなく、「何」を言ったかだと思っています。


(5,901文字)


⭐参考データ

戦略系コンサルティングファーム一覧【日系・外資系 厳選25社】


1 マッキンゼー・アンド・カンパニー出身者で著名な人物は、大前研一氏
2 ボストン・コンサルティング・グループ出身者で著名な人物は、堀紘一氏
9 ドリームインキュベータの創業者は、堀紘一氏



経営コンサルタントの費用相場と料金体系

上記ウェブサイトによれば、以下のようなポイントがあるそうです。
(2019年05月10日(金))
1 主に3つの契約形態 
 ・顧問契約型
 月に1~2回程度の訪問で月額20万円~50万円程度
 ・時間契約型 1時間あたり5000円~10万円
 ・成果報酬型 内容によりばらつきがあるため、一概には言えません。

2 契約費用の2つの変動要素
 ・経営コンサルタントの経験・実績

 ・会社の規模

3 顧問契約期間
 ・年間契約(1年~)
 ・短期契約(4~6か月)
 ・スポット契約(1か月)

4 経営コンサルタントの選び方 5つのポイント
 ・経営改善の実績が豊富な実力あるコンサルタントか
 ・自社が掲げる経営ビジョンをしっかり理解し、実現のためのアイデアを
  提供してくれるコンサルタントか
 ・現状のキャッシュフローを的確に整理し、将来予想されるキャッシュフ
  ローの把握もしたうえで、的確な経営助言ができるコンサルタントか
 ・ひざを突き合わせて、親身に相談に応じてくれるコンサルタントか
 ・目先の利益を優先せず、中長期的な視点に立ってアドバイスしてくれる
  コンサルタントか

自明のことですが、経営コンサルタントも人間ですから、自社との相性も考慮する必要があるでしょう。


🔶「はじめに」にこんなエピソードが記されていました。

 私は、ハーバード在学中の二年間、それこそ毎日休みなく勉強に励んだ。その努力が、ハーバード三〇〇年の歴史の中で、日本人初の金バッジの栄誉へとつながったかと思うと、感慨もひとしおだった。
 ちなみに、ベイカー・スカラーの名は、ハーバードに多額の寄付をしているベイカー氏への謝意を表している。図書館もベイカー・ライブラリーと呼ばれている。東大に多額の寄付をした安田財閥の名を取って、安田講堂と呼ばれているようなものだ。
 晩餐会のさなか、私は二年前に言われたビショップ教授の言葉を噛み締めるように思い出していた。教授は、私をからかったわけでも何でもなかった。「君は最高の学問をしている」という言葉の意味が、「何が問題か」を定義することがビジネスの世界では最も重要な問題であるということが、今の私にははっきりとわかる。そして、教授を訪ねたまさにあのとき、私は深い学びの場にいたということも……。

 『コンサルティングとは何か』堀紘一 
pp. 6-7 

✒ 堀 紘一氏の略歴

ドリームインキュベータ代表取締役会長。
1945年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、1973年から三菱商事に勤務。

ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction (Baker Scholar)を取得後、ボストンコンサルティンググループで国内外の一流企業の経営戦略策定を支援する。

1989年より同社代表取締役社長。

2000年6月、ベンチャー企業の支援・コンサルティングを行なうドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。

同社を2005年9月、東証1部(現・東証プライム:注 藤巻隆)に上場させる。

2006年6月、同社会長に就任。

主な著者に、『世界連鎖恐慌の犯人』(PHP研究所)、『突破力』『「真のリーダー」になる条件』(以上、PHPビジネス新書)、『人と違うことをやれ!』『30代から大きく伸びる人の勉強法』(以上、PHP文庫)、『一流の人は空気を読まない』(角川 one テーマ21)、『新版 リーダーシップの本質』(ダイヤモンド社)、『ホワイトカラー改造計画』『「心の時代」の企業革新』『21世紀の企業システム』(以上、朝日文庫)、『一番いいのはサラリーマン』(扶桑社文庫)など多数。
(『コンサルティングとは何か』の著者紹介から)


✒ 堀 紘一氏の略歴補足

2020年に堀氏はDIの取締役を退任し、DIは電通の傘下となりました。
近況は下記をご覧ください。
「セカンドライフ」を謳歌しているようです。



⭐出典元: 『コンサルティングとは何か』



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