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クレーム上等! またアマゾンで買ってしまうワケ 2014年度アフターサービスランキング 2014.11.03 1/3 2014-11-05 18:46:01




<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



クレーム上等! またアマゾンで買ってしまうワケ 2014年度アフターサービスランキング 2014.11.03 1/3 2014-11-05 18:46:01



CONTENTS

PROLOGUE アマゾン「顧客満足」への渇望

PART 1 ファンを作る顧客サービス アフターではもう遅い

PART 2 「声なきクレーム」に商機 不満買い取ります

PART 3 災害が問うた迅速さ 2014年版アフターサービス
ランキング



第1回は、

PROLOGUE アマゾン「顧客満足」への渇望

PART 1 ファンを作る顧客サービス アフターではもう遅い


を取り上げます。


今週の特集記事のテーマは

クレームや不満をここぞとばかりにカイゼンにつなげる。
異様なまでの執念で、顧客満足のみを追求するアマゾンジャパン。
先進企業のサービス戦略は、従来は知ることもできなかった
「声なきクレーム」すら活用する段階に入った。
顧客満足を巡る競争を今、異次元のステージに差し掛かっている
 (『日経ビジネス』 2014.11.03 号 P.026)

です。



クレーム上等!
またアマゾンで買ってしまうワケ
2014年度アフターサービス
ランキング
(『日経ビジネス』 2014.11.03 号 表紙)


本題に入る前に、一言。

日本語の「クレーム」と英語の「claim」は違うことに注意しましょう。

日本語の「クレーム」は誹謗中傷も含め、自分の不満解消のための一つの行為です。「いちゃもんをつける」も含まれます。

一方、英語の「claim」は自分の「正当性」を主張することです。

この2つの言葉には、明確な「根拠」があって主張しているのか、そうでないのか、という違いがあります。この違いを理解しておきましょう。

最初に、アマゾンジャパンのカスタマーサービスセンターがスタートした、驚くべき対応をご紹介します。

顧客満足度を維持、向上させることに終わりはありません。ですが、アマゾンジャパンの対応は究極の形と言えるかもしれません。

PROLOGUE アマゾン「顧客満足」への渇望


今特集記事を読んで、驚くとともに、アマゾンならやりそうなことだな、というのが率直な感想でした。

とにかく、記事をご覧ください。
アマゾンは、他社ではとても追いつけない領域に踏み込んでいることが実感できるでしょう。

アマゾン・ドットコム――。

世の中に「顧客第一主義」を掲げる企業は数あれど、ここまで顧客満足に執着する企業は少ないだろう。

飛行機や船舶で使われる救難信号「Mayday(メーデー)」。今年11月、その名を冠したサービスが日本で始まる。

アマゾンが販売する新型タブレットのアイコンにタッチすると、画面上にオペレーターの姿が現れ、年中無休24時間対応で端末操作などの質問に答えてくれる。

利用は無料だ。

「ピザを頼むのを手助けしてほしい、ゲームの操作方法を教えてくれ・・・。こんなご要望にも、もちろん対応します」。

アマゾンジャパンの宮田要カスタマーサービス本部長は、当然のことのように淡々と説明する。

まさに顧客の困り事による救難信号(メーデー)を受けて、助けるのがアマゾンの役割というわけだ。その言葉に誇張はない。同サービスは1年前から米国で展開してきた実績があるからだ。

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またアマゾンで買ってしまうワケ 
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 2014.11.03 p. 028 


この話を読みますと、なぜこんなことまでカスタマーサービスセンターに聞くのだろうか、と疑問になりますよね? そんなことはネットで調べることができるし、周囲の人に尋ねることもできます。

アマゾンの狙いはどこにあるのでしょうか?

「顧客の労力を減らす」。アマゾンの思想を突き詰めると、最終的にその一点に集約される。

クレームや意見が寄せられたら、待ってましたとばかりに解消し、将来のクレームの芽も摘み取る。そんなカイゼンを地道に続ける。

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2014.11.03 pp. 028-029 


アマゾンは目先の問題解決に奔走しているように見えて、実は将来起こりうる問題を先に摘み取っていることが分かります。

そうした発想や考え方は今までにもあったかもしれませんが、アマゾンほど徹底して実践しているケースは稀でしょう。

「そこまでやらなくてよい」「コスト高になる」という言葉が支配的で、尻すぼみになっているのです。

アマゾンも自社だけですべてが解決するとは、考えていません。そこで昨日まで競合であった企業と業務提携し、「顧客の労力を減らす」ことを実践しています。「昨日の敵は今日の友」です。

そんな1例をご紹介しましょう。
オートバックスセブンとの業務提携です。

今年9月、アマゾンはカー用品販売大手のオートバックスセブンと提携した。

アマゾンで購入したカーナビやタイヤ、マフラー、シートなどをオートバックスに持っていけば、技術者が取り付けてくれる。

タイヤ取り付けで1500円からなど、通常より安い料金設定という。

両社は元来、ライバル関係にあった。

オートバックスは「日頃来ない顧客が来店するという効果が大きな要因」と明かす。

アマゾンジャパンの大西勇一・カー&バイク用品事業部長は「カーナビなどで取り付けの専門知識がなく、不安を持つお客様の声に応えただけ」と説明する。

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2014.11.03 p. 029 


これはほんの序の口です。
さすがに、次の試みには舌を巻きました。

昨年12月、米国で「予備出荷」の特許を取得した。消費者の購入行動を予測して、あらかじめ大まかな地域宛てに発送。

実際に注文ボタンがクリックされたら即座に具体的な宛名を付与し、品物を届ける。

注文前に発送してしまうという。究極の配送時間短縮策だ。

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「予備出荷」という言葉も初耳ですし、こうした発想(発送)ができるとは、思いませんでした。
同業他社がアマゾンに対抗することは、容易ではないでしょう。

アマゾンの圧倒的な一人勝ちは、今年のアフターサービスランキングにもハッキリ現れています。

今年のアフターサービスランキングで、アマゾンは92.2という驚異的な再利用意向率を叩き出した。ネット通販のみならず、家電や自動車、銀行、住宅など全部門を通じた最高のスコアだ。

業種を超えて異次元の顧客満足を競い合う新たな時代が始まった。

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2014.11.03 p. 029 


「凄いですね」「驚きましたね」「素晴らしいですね」というSOSで表現できます。

ビジネスコミュニケーションの専門家、箱田忠昭さんが著作の中で語っていました。


PART 1 ファンを作る顧客サービス アフターではもう遅い


今年の全米オープンテニスシングルスで、錦織圭(にしこりけい)選手が日本人で初めて決勝に進出したことは、メディで大きく取り上げられ、話題になりましたね。

もしや、優勝? なんて一瞬でも考えた日本人もいたかもしれません。残念ながら敗れてしまいました。ですが、全米オープン準優勝ですから立派なものです。

次にご紹介する話は、その錦織圭選手にまつわることです。全米オープンの日本での放映権はWOWOWが持っていました。

錦織圭選手が勝ち上がっていくに従い、大変のことになっていきました。続きをどうぞ――。

錦織圭選手がアジア勢初の快挙を成し遂げた、今年8~9月の全米オープンテニス男子シングルス。日本で放映権を持っていたWOWOWには大会期間中、前例のない規模で加入申し込みが殺到した。問い合わせ件数は準決勝の前で例年の10倍、決勝前には20倍以上に達した。

「個人情報の入力は後回しで構わない。全員、カギ開けに集中しろ!」

消費者からの問い合わせに対応するカスタマーリレーション部には、牧原広知部長のハッパを掛ける声が飛んでいた。

「カギ開け」とは、新規加入者のテレビ画面に同社の放送が映るようにするために最低限必要な作業を指す。具体的には、各家庭のデジタル放送受信機に挿入する「B-CASカード」の番号を社内システムに登録することなどだ。

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2014.11.03 p. 030 


実際にどんなことが起きていたのかは、次をご覧ください。

膨れ上がる申し込みをさばき切れないと見た同社は、後に不払いなどのリスクが生じることを承知の上で、「とにかく番組が見られる環境を作ることを優先する」(牧原部長)という判断を下した。

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 2014.11.03 p. 030 


それでも、ベスト4、決勝に進出する前は「作業が間に合わない状況に追い込まれた」(p. 030)ため、「緊急でサーバーの増強やシステム改修に踏み切ったことで、放送開始の数分前にすべてのカギ開けをなんとか終えた」(p. 030)といいます。

WOWOWは「月ぎめの有料放送」であるので、特徴的なことがあります。

もともと、見たい番組が放送される期間だけ視聴契約するようなスポット客が少なくない。

実際、テニスの4大大会であれば、期間中の新規加入者のうち約半数は過去にも同社と契約したことがある元利用者という。

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 2014.11.03 p. 031 


では、「期間限定視聴契約者」が約半数を占めているのが現状でありながら、こうした大胆な決断を下したのでしょうか?

番組がちゃんと見られさえすれば、たとえその後解約されたとしても、再び錦織選手が4大大会の決勝にたどり着いた暁には再契約が期待できる。

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 2014.11.03 p. 031 


注:日付は日本時間

(写真=上:AP/アフロ、
下左・中:アフロ、
下右:PanoramiC/アフロ)
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またアマゾンで買ってしまうワケ
2014年度アフターサービス
ランキング
2014.11.03


アマゾンとWOWOWのケースをご覧頂きましたが、「事後ではダメ」なのだ、という時代に変わってきているという現状を、どの業界の人たちも認識する必要がある、と思います。

英語に2つの言葉があります。
Reactive(リアクティブ) と Proactive(プロアクティブ)です。

前者は、事が起こってから対応することです。
泥縄式と言い換えてもよいでしょう。

後者は、事前に予測し対策を「講じておく」ことです。
先回りして待っていて対応する、ということです。

例えは悪いですが、事件の被疑者の逃走を防ぐために想定される複数箇所に早急に検問を設け、万全な体制を整えておく、と言ったらよいでしょうか。

アフターサービスとはどのようなものなのか、『日経ビジネス』取材班は、次のように考えています。

アフターサービスの本来の目的は、購入者に製品を快適に使い続けてもらうことにある。

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またアマゾンで買ってしまうワケ 
 2014年度アフターサービスランキング 
 2014.11.03 p. 032 


次にご紹介するのは、アマゾンやWOWOWのケースと少し異なり、電化製品などのハードにソフトを組込み、クレームの発生を未然に防ぐ試みです。

次の画像をご覧ください。

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2014.11.03


少し分かりにくいかもしれません。
『日経ビジネス』の解説を読んでみましょう。
なるほどね、と思うと同時に、果たしてここまで必要なのかという気持ちにもなりましたね。

「でんちがもうダメみたいやわ」「フィルターを交換してください」――。 

故障や不具合を未然に防ぐため、自ら利用者に“話しかける”家電。実用化したのはシャープだ。

この機能は2013年12月に発売した自動掃除機「ココロボ」から実装した。スマートフォンに専用アプリを入れておくと、冒頭のようなメッセージをスマホで受け取れる。

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 2014年度アフターサービスランキング 
 2014.11.03 pp. 032-033 


「ともだち家電」と呼ぶそうです。

シャープはこうしたコミュニケーションができる家電を「ともだち家電」と呼び、対応製品を拡大している。9月には空気清浄機の新製品の一部にも採用しており、近く洗濯機やエアコンにも機能を搭載する予定という。

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  2014年度アフターサービスランキング 

2014.11.03 p. 033 


このような機能を搭載する理由は何でしょうか?

お客様相談センターの大久保正樹所長は「トラブルを未然に防げれば、使用時の快適さはぐっと上がる。それが、ブランドや信頼の向上につながる」と話す。

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またアマゾンで買ってしまうワケ 
  2014年度アフターサービスランキング 

2014.11.03 p. 033 


このパートで、『日経ビジネス』は次のようにまとめています。

顧客サポートにはもはやビフォーもアフターもない。検討、購入、使用、買い替えと、連続してつながる顧客の行動サイクルすべてを支える覚悟がなければ、もはやファンを獲得することはできない。

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  2014年度アフターサービスランキング 
 2014.11.03 p. 033 


「おもてなし」という言葉が、一時、流行語となりました。もともと日本の文化にはあったのですが、「おもてなし」が度を過ぎると「おせっかい」になります。「少し、放っておいてくれ!」という事態にもなりかねません。

そこで必要なことは、「思いやり」なのです。

2020年に開催される東京オリンピックには、日本の「おもてなし」を全力で示そうと意気込んでいるかもしれません。

ですが、外国人の中には(日本人でもそうかもしれませんが)くつろぎたいと思って、日本に滞在する人たちもいるはずです。

オリンピックだけでなく、鄙びた田園風景も見てみたいという人たちもいるはずです。

そんな人たちの気持ちを考えずに、自分たちの「おもてなし」を押し付けると、逆効果になりはしないか、と心配です。

全く関係ないと思われた、アフターサービス、あるいはプロアクティブな対応のケースを見て、「おもてなし」が想起されました。


次回は、

PART 2 「声なきクレーム」に商機 不満買い取ります

をお伝えします。



🔷編集後記

この特集記事(元記事)が公開されたのは、10年前のことで、アメブロでも10年前(2014-11-05 18:46:01)のことでした。

大幅に加筆修正しました。

クレームへの対応は難しいと思います。
SNSが発達した今、直接サービスセンターへ連絡するだけでなく、SNSに投稿するケースがあります。

しかも、注目されたいがために、事実と異なる状況をでっち上げ、誹謗中傷することさえあります。

その投稿を見た人がウソを見破れず、信じ込んでしまい、拡散してしまうことさえあります。

そうなると、まさにバイラル(ウィルス)のように広まってしまいます。しかも尾ひれがついてオリジナルと大きく逸脱してしまうことにもなります。

悪質な犯罪行為という自覚がないため厄介です。

その一方で、「おもてなし」は度を過ぎると迷惑になります。おもてなしをした方は良いことをしたつもりになっていても、相手は不快感を抱くだけになってしまうこともあります。

顧客満足度調査が行われることがありますが、回答には必ず隠された真実があります。本心を明かすことが嫌で、調査を実施した側が喜ぶような回答をする人もいます。


(6,707 文字)


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