【マキアヴェッリ語録】 第21回
マキアヴェッリ語録
🔷 塩野七生さんの『マキアヴェッリ語録』からマキアヴェッリの言葉をご紹介します。マキアヴェッリに対する先入観が覆されることでしょう。
目的は手段を正当化する
マキアヴェッリ(日本ではマキャベリと表現されることが多い)は『君主論』の著者として知られ、「マキャベリズム」が人口に膾炙しています。
その思想を端的に表現する言葉は、「目的は手段を正当化する」です。
目的のためならどんな手段を講じてもかまわない、と解することが多いですね。
実は、私もこの書を読むまではそのように解釈していました。
言葉を文脈の中で解釈せず、言葉が独り歩きすることの怖さは、風説の流布でも経験することです。
福島第一原発事故以後、周辺にお住まいの方々は風説の流布に悩まされ続けています。拡散した誤情報はさらに誤情報を加え、拡大していきます。
容易に訂正されることはありません。
話しを戻しますと、マキアヴェッリの実像はどのようなものであったのか、そして「目的は手段を正当化する」と言っていることの真意は何だったのか、を知りたいと思いました。
先入観を取り払い、大前研一さんが言う、「オールクリア(電卓のAC)」にしてマキアヴェッリの説くことに耳を傾けることにしました。
マキアヴェッリは、1469年5月3日にイタリアのフィレンツェで生まれ、1527年6月21日に没しています。15世紀から16世紀にかけて活躍した思想家です。500年位前の人です。
塩野七生さんは、「まえがき」に代えて「読者に」で次のように記しています。塩野さんが解説ではなく、また要約でもなく、「抜粋」にした理由を説明しています。
尚、10ページ以上にわたる説明からポイントとなる言葉を「抜粋」しました。
塩野さんが解説ではなく、また要約でもなく、「抜粋」にした理由
⭐ 伝道師(エバンジェリスト)としてnoteに投稿されている野口悠紀雄さんは、『知の進化論 百科全書・グーグル・人工知能』(朝日新書 2016年11月30日第1刷発行)の中でマキアヴェッリについて次のように述べています。
お待たせしました。マキアヴェッリの名言を紹介していきます。
マキアヴェッリの名言
第2部 国家篇
マキアヴェッリの語る言葉は深い
🔶 マキアヴェッリの語る言葉は深い、と思います。
マキアヴェッリは人間観察に優れた人だった、と想像します。心理学にも長けていたのでしょう。
「君主」を「リーダー」に置き換えて考えてみるとより身近に感じられるでしょう。
🔷 「第2部 国家篇」からマキアヴェッリの有名な言葉が多く出てきます。マキアヴェッリは権謀術数(相手をたくみにあざむくはかりごと)をめぐらす悪人という評価を長い間されてきました。
しかし、『マキアヴェッリ語録』を読みますと、それは全体のごく一部を取り上げて、決めつけていることに気づくでしょう。
マキアヴェッリは決してそんな小さな器の人物ではなかったことが分かるはずです。
⭐️ キーセンテンス
「民衆は、群れをなせば大胆な行為に出るが、個人となれば臆病である」
「指導者のいないために統制のとれていない群衆ほど、何をしでかすか予測も立たず怖ろしい存在はないのだが、一面、これほどもろいものもない」
この言葉は、群集心理を的確に述べた言葉だと思います。デモでもテロでもそうです。
更に加えて、洗脳もそうです。
無謀な行為をするのは群集心理によるものです。先導する者が悪意を持っていたならば、群れは一人ではできないことをやってしまうことがあります。
冷静な判断力を失ってしまうのです。
27年前に発生した大事件のオウム真理教による「地下鉄サリン事件」など一連の極悪犯罪を見れば分かります。今も後遺症で苦しんでいる方々がいます。
事件がわかる 地下鉄サリン事件
強大な組織に一人で立ち向かうシーンが映画やドラマに時々出てくることがあります。
これは、蟷螂の斧(「力のない者が、自分の実力もかえりみずに強い者に立ち向かうことのたとえ」 「故事ことわざ辞典」から)です。一人では勝ち目がありません。
一騎当千(「非常に勇ましく強い者のたとえ。人並み外れた才能や技術の持ち主」 「故事ことわざ辞典」から)という言葉もありますが、無謀としか言えないケースが多いです。
塩野七生さんと五木寛之さんの対談集
『おとな二人の午後』
(世界文化社 2000年6月10日 初版第一刷発行)
の中で、五木さんと塩野さんは次のように語って
います。歴史についての考察です。
とても興味深い話ですね。
私は、歴史は勝者の側から書かれたもので、敗者の側から書かれたものは実在しても埋もれてしまっていると考えています。
○○裏面史というタイトルの書物が昔はありましたが、最近は、こうしたタイトルの書物は人気がなく売れないためなのか、見たことがありません。
裏面史の代わりに、都市伝説というまことしやかな話がトレンドになることがありますが、怪しいものです。
『リーダーシップの本質』
堀紘一氏の『リーダーシップの本質』と対比していただくと、興味深い事実を発見できると思います。
🔷 著者紹介
塩野七生<著者紹介から Wikipediaで追加>
日本の歴史作家、小説家である。名前の「七生」は、ペンネームではなく本名。
東京都立日比谷高等学校、学習院大学文学部哲学科卒業。
日比谷高時代は庄司薫、古井由吉らが同級生で、後輩に利根川進がいて親しかった。
1970年には『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』で毎日出版文化賞を受賞。
同年から再びイタリアへ移り住む。『ローマ人の物語』にとりくむ。
2006年に『第15巻 ローマ世界の終焉』にて完結した(文庫版も2011年9月に刊行完結)。『ローマ人の物語Ⅰ』により新潮学芸賞受賞。
99年、司馬遼太郎賞。
2002年、イタリア政府より国家功労勲章を授与される。
2007年、文化功労者に選ばれる。
高校の大先輩でした。