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【五木寛之 心に沁み入る不滅の言葉】 第11回

『生かされる命をみつめて 自分を愛する 編』 五木寛之講演集


 五木寛之さんの『生かされる命をみつめて 自分を愛する 編』から心に沁み入る不滅の言葉をご紹介します。

 五木さんは戦時中から特異な体験をしています。
 「五木さんは生まれて間もなく家族と共に朝鮮半島に渡り、幼少時代を過ごしました。そこで迎えた終戦。五木さんたちは必死の思いで日本に引き揚げたそうです」(「捨てない生活も悪くない」 五木寛之さんインタビューから)


 今年9月に90歳になるそうです。今日に至るまで数多の体験と多くの人々との関わりを掛け替えのない宝物のように感じている、と思っています。

 五木さんは広く知られた超一流の作家ですが、随筆家としても、講演者としても超一流だと、私は思っています。

 一般論ですが、もの書きは話すのがあまり得意ではないという傾向があります。しかし、五木さんは当てはまらないと思います。 



「誰のために」から

五木寛之の心に沁み入る不滅の言葉 1 (31)

 
 ある時は。喜ぶということで潤いを与え、波を立てる。ある時は悲しむというような反対のことで、波を立て、心を揺らす。
 いずれにしても人間らしい生き生きした潤いのある感情を取り戻すことが、じつは大事であると、ようやく気がつき始めたわけなのです。
 喜ぶことはいいことで、悲しむことは良くないことだ、とふつう考えがちなのですが、そうではないと思います。
 

『生かされる命をみつめて 自分を愛する 編』 五木寛之                  




「歓びノート」から

五木寛之の心に沁み入る不滅の言葉 2 (32)

 
 本当に心の底から悲しんで、「ああ、悲しい」と思うこと、心の底から喜んで「ああ、嬉しい」と思うこと、じつは両方とも、人間の感情を生き生きと潤いをもって波立たせる、大事なことではないかとあらためて思いました。

『生かされる命をみつめて 自分を愛する 編』 五木寛之                  



「歓びノート」から

五木寛之の心に沁み入る不滅の言葉 3 (33)

 
 その頃からでしょうか。
 人間の悲しみとか寂しさ、そういうこともまた人間の心を生き生きと活性化し、ひょっとしたら心身の自然治癒力ちゆりょくを高めて、生きていく力を与えてくれるものではないか、と考えるようになりました。
 そして、悲しむ、うれう、などのマイナスイメージとも呼べるようなことばがあると、ふっとそれに目が行くようになったのです。

『生かされる命をみつめて 自分を愛する 編』 五木寛之                  


出典元

『生かされる命をみつめて 自分を愛する 編 五木寛之講演集』から
2015年10月15日 初版第1刷発行
実業之日本社




✒ 編集後記

『生かされる命をみつめて 自分を愛する 編 五木寛之講演集』は、講演集ということになっていますが、巻末を読むと、「2011年8月東京書籍刊『生かされる命をみつめて』『朝顔は闇の底に咲く』『歓ぶこと悲しむこと』に加筆の上、再構成、再編集したものです」と記載されています。

裏表紙を見ると、「50年近くかけて語った講演」と記されています。それだけの実績があります。

🔷 「人間の悲しみとか寂しさ、そういうこともまた人間の心を生き生きと活性化し、ひょっとしたら心身の自然治癒力ちゆりょくを高めて、生きていく力を与えてくれるものではないか、と考えるようになりました」

この言葉を自分なりに解釈しますと、次のようになります。
悲しみや寂しさという感情を排除するのではなく、すべてをそのままで受け容れることが大切だということです。

そして、そうした感情を昇華させていくことによって、生きていく力を獲得できるようになると解釈しました。

あなたはどのように考えましたか?
どのようなご意見でも構いませんので、ぜひお聞かせ下さい!


🔶 五木寛之さんの言葉は、軽妙洒脱という言葉が相応しいかもしれません。軽々に断定することはできませんが。

五木さんの言葉を読むと、心に響くという言うよりも、心に沁み入る言葉の方が適切だと思いました。

しかも、不滅の言葉と言ってもよいでしょう。



著者略歴

五木寛之ひつき・ひろゆき

1932年福岡県出身。早稲田大学露文科中退。67年、直木賞受賞。

76年、吉川英治文学賞受賞。

主な小説作品に『戒厳令の夜』『風の王国』『晴れた日には鏡をわすれて』ほか。

エッセイ、批評書に『大河の一滴』『ゆるやかな生き方』『余命』など。

02年、菊池寛賞を受賞。

10年、『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。

各文学賞選考委員も務める。






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藤巻 隆
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