
【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉 Vol.11】
大人の流儀
伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。
時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。
帯に自筆で「ちゃんとした大人になりたければこの本を読みなさい」と記しています。
ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。
出典元
『大人の流儀 1』
2011年3月18日第1刷発行
2011年7月14日第11刷発行
講談社
「企業の真の財産は社員である」から
伊集院 静の言葉 1 (31)
今は景気が良くても、存続が危なっかしい会社はゴマンとある。
企業は人である。底力は人間力である。
それを鍛えるのに必要なもののひとつに言葉がある。
「さぞ苦しいだろうが、君の今の苦しみはやがて必ず君の力になる」
これをニュアンスを含めて的確に英語で言えるのかね?
会社で使う大切な言葉とはこういうものだと私は思う。
「大人の身だしなみについて」から
伊集院 静の言葉 2 (32)
私はこれまで大人の男の”服装”についてと、同じく大人の男の”食”についての文章をほとんど書かなかった。”食”に関しては、すでに書いたように、いかなる名文家が書いても、そこに卑しさがつきまとう。
”服装”または”お洒落”について書くと、そこにイタリア料理好きの男に似て、軽薄さが漂う。いや漂うじゃなくて、聞いていて、君は四六時中(へんな言葉だが)自分のお洒落のことばかりを考えているのか、他にやらねばならないことがあるだろう、と思ってしまう。
伊集院 静の言葉 3 (33)
”身嗜み”でまず必要なのは、体調だ。体調を整えておかなくては、その席で相手に気がかりを与える顔色をしていては失礼だからだ。
顔色からしてそうなのだから、自分の五体を整えねばならない。
髪、髭、爪・・・・・・匂いにいたるまで整えておく必要がある。これが基本だ。
基本がそうであるなら、服装、髪型、態度は何を基準にするか。
それは清い容姿である。潔いかたちを主旨としてすべてを整える。それで十分。
若い人には、若者なりの潔さがあり、三十歳、四十歳にはそれなりの清さ、潔さがあって当然だ。
✒ 編集後記
『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。
伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。
伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。
🔷 今回は”身嗜み”に関する記述に興味を持ちました。
「服装、髪型、態度は何を基準にするか。
それは清い容姿である。潔いかたちを主旨としてすべてを整える。それで十分」
という考え方に新鮮さを感じました。さすがに優れた作家だな、と納得しました。
伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。
<著者略歴 『大人の流儀』から>
1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。
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