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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 Vol.63
大人の流儀
伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。
時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。
帯には「あなたのこころの奥にある勇気と覚悟に出会える。『本物の大人』になりたいあなたへ、」(『続・大人の流儀』)と書かれています。
ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。
「星~被災地から見たこの国」から
伊集院 静の言葉 1 (187)
-----これは天災なのか。それとも違うことなのか?
仕事場に入り、ローソクの下で午後から起こったことを簡単でもいいから記しておくことにする。
自分と家族はなんとか生きている。そうでなくなった人々と何の差があったというのだ。何もありはしない。ただそういう場所にいただけのことなのだ。
「少し休んではどうですか」
「いや朝まで余震の具合いを見ておこう。先に休んでくれ」
リビングの椅子に長靴を履いたまま座り、目の前の書棚の本を見つめる。
「星~被災地から見たこの国」から
伊集院 静の言葉 2 (188)
三月十二日 午前四時。
激しい余震が襲ってくる。震度六はあろう。このクラスでも東京なら大騒ぎとなる。少しずつ余震に慣れてくる。揺れははじめの家屋の軋む音で大きさがわかりはじめる。阪神大震災のレポートを何冊か読んだ記憶と実際に被害に遭った人たちの話を思い出す。「いや闇の中で余震がはじまるとこれで終りかと何度も思いました」たしかに闇の中での激しい揺れと異様な音は人間の精神状態にかなりのダメージを与える。
「星~被災地から見たこの国」から
伊集院 静の言葉 3 (189)
空から撮られた写真は街から家屋が失せ、わずかにコンクリートの建物が残るだけで、子供の頃から何度も見た空爆、被爆の都市の写真そのままだった。
-----惨劇は皆共通した光景になるのか。
昨夜、東京では交通機関が停止し、私の事務所の女性も泊まり込んだらしい。
⭐ 出典元
『大人の流儀 2』(書籍の表紙は「続・大人の流儀」)
2011年12月12日第1刷発行
講談社
✒ 編集後記
『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。
伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。
伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。
🔷 「自分と家族はなんとか生きている。そうでなくなった人々と何の差があったというのだ。何もありはしない。ただそういう場所にいただけのことなのだ」
運命と言ってしまえばそれだけかもしれません。
しかし、それではあまりにも他人事の考え方で、無責任のそしりを免れません。
いつどこで誰が、地震に限らず大災害に見舞われるか予測がつきません。
せいぜい飲料水と食料の備蓄を確保しておく程度のことしかできません。
ただし、かりにそれらの備蓄ができたとしても、それは備蓄品が近くにある場合に役に立つことであって、外出中に災害に遭遇したらどうにもなりません。
余談になりますが、「地震・雷・火事・親父」という言葉がありますが、最近では滅多に聞かなくなりました。
怖いものを順番に具体例として取り上げた諺ですが、さいごの「親父」は父親ではなく「台風」という説がありますが、定かではありません。
🔶 東日本大震災から11年:被災地と復興の現状
⭐ 出典元: 公営財団法人ニッポンドットコム 東日本大震災から11年:被災地と復興の現状 2022.03.09
🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。
<著者略歴 『大人の流儀』から>
1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。
⭐ 原典のご紹介
⭐ 自費出版本
⭐ 私のマガジン (2022.09.10現在)
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