第12回 「理念採用」を最後に成功させる“説得力のある言い訳” ~内定辞退を防ぐ5つのポイント~
1 あなたの会社の内定者入社率はどれくらいですか
前回第11回では『大手に勝てる「理念採用」』のスタートとしてインターンシップについてお話ししました。今回のテーマは反対の端にあるゴール=入社についてです。
採用の最終目的は入社後の社員の活躍にあるわけですが、採用活動ということでは、入社がゴールとなります。もちろん「理念採用」がしっかりとできていれば、会社と本人はすでにお互いの目的や価値観を共有できているわけで、入社後の本人のやる気と活躍は大いに期待できるといえるのですが。
さて、問題は内定から入社までです。あなたの会社では出した内定に対して入社した人の割合(内定者入社率)はどれくらいでしょうか。
「うちは5人に1人入社してくれればいいほうだと考えています」。この場合20%ですね。
一方、採用人数や1人にかけられるパワーとの兼ね合いもありますが、「理念採用」で成功している企業の中には内定者入社率が80%というところもあるのです。人気の大手企業の話ではありません。
「ここのところ毎年採用予定は5人で、6~7人までは内定を出して1人くらいこぼれるといった感じです。他で内定がもらえないレベルの学生に出しているのではと勘繰る向きもあるかもしれませんが、決してそうではありません。自社の理念に共感できるかどうか、合うか合わないかというブレない基準で判断し、それ以外の適性も含めて最終的に内定を出しています」。
20%、片や80%となれば、生産性は4倍も違います。
足りない分を追加募集するための投資や時間まで含めるとさらに差は大きいでしょう。内定辞退は採用担当者にしてみれば最も嫌な言葉ではないでしょうか。手塩にかけて内定を出した人材に逃げられて、毎年悔しい思いをしている方も多いはず。
それなのに「うちは5人に1人入社してくれればいい」「うちならそれくらいだろう」と慣れてしまったり、諦めてしまってはいないでしょうか。10%を20%に、さらにもっと上げていくための工夫と努力を毎年重ねているでしょうか。
学生は情報に敏感です。SNSが当たり前の時代になって情報網はさらに広がり、大学や地域までも超えて情報が飛び交っています。自社の内定者同士でいえば、いつでも情報交換できる状態にあると考えるべきです。
「うちはまだ内定者を全員集めたことがないから大丈夫」。いえいえ彼らは面接の待合室で連絡先をすでに交換し合っているのです。
内定していた1人が辞退する。理由はさまざまでしょう。親に反対された。友人に心配された。仲間が大手や人気のある会社に決まり、それを自慢していた。途端に彼らは考え始めます。「本当にこの会社に決めてよかったのだろうか」「一生に一度のことなのにもっと他を探さなくていいのだろうか」と。
内定者が2人、3人と続けて辞退したと聞くと、辞退ドミノ倒しは加速していきます。「あいつも、あいつも、まさかあいつまでが辞退だって。自分はこのままでいいのだろうか」とますます不安になっていくのです。
「人気の大手企業ならまだしも、うちなんかじゃ一定数の辞退はなくならないよ」。確かに辞退者をゼロにするのは決して簡単なことではありません。そして辞退者が増えてくると内定者なら誰もが不安になり、ドミノ倒しが起こるのも事実でしょう。
しかし、辞退者が出ても他の内定者がほとんど影響を受けなかったというケースもあるのです。それは「理念採用」で成功している企業で多く見られます。
残った内定者たちは「辞退した彼(彼女)は、今から思えばこの会社にどこか合っていなかったように思います。でも人は人、自分は自分。自分は他社ではなく、この会社がぴったり合っていると確信していますから、入社する気持ちに変わりはありません」と。
内定者一人ひとりが自分の選択に“確信”をもっている会社では、大量の内定辞退は起こらないのです。
2 日本を揺るがしたあの企業の内定者1000人が出した選択
古い話になりますが、まだ日本がバブル景気に沸いていた1988年(昭和63年)、リクルート事件は起こりました。
若い読者の方には教科書に出てくる昭和の事件としての記憶しかないかもしれません。が、教科書に載るくらいです。当時人事部採用担当として現場にいた私にとっては天地がひっくり返るような事件でした。
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