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エターナルズ(2021)

クロエ・ジャオ監督の「エターナルズ」を観た。

従来のMCU映画とは一線を画した作品。マーベルの世界を一段高みに上げるチャレンジをしている分、これまでの徹底した娯楽作品色は弱まり、賛否両論になるのもやむをえない。

そもそも「エターナルズ」は、これまでのMCUで言えば「ソー」に近い、"神々の映画"であって"スーパーヒーローの映画"ではない。その点はだれがどう監督しようと個人的に乗り切れるか不安だった。

本作の冒頭を観てもその不安は拭えなかったのだが、物語が進むうちに、「エターナルズ」の面々をリアルに実に丁寧に描いていく監督の手法を見て、なるほどと思った。

たとえ人間の能力を遥かに超えた神であっても、それぞれに違った能力や特徴があって、そこに心があるならば、それを過去のジャオ監督作品と同様にリアルに描写すれば、感情の起伏を伴うドラマは生まれるのだと。

10人の神のキャラクターそれぞれをしっかり描きながら、7000年にわたる人類の歴史を振り返る物語は全体尺としては長いが、逆にこれだけのエピソードをよくぞこの尺に収めたとも言える。

また、「エターナルズ」を「アベンジャーズ」より単にスケールが大きいヒーローものの拡大再生産にしなかったことも、これだけ内容を詰め込んだ上に意外な展開を見せる謎解きの物語に仕上げたことも、なかなか凄いことだと思う。

また、広大な自然の風景、太陽の光、そこに存在する苦悩する人間(今回は神様だけど)という要素には、クロエ・ジャオ監督らしさが溢れていた。

中盤、ファストスが人間の知恵を進化させてきたことを絶望的に後悔するシーンには虚をつかれた。

あと、キンゴの付き人として1人だけ人間を帯同させ、彼が常にカメラを構えて「エターナルズ」の面々のリアルを撮影している二重構造も監督らしくて良かった。

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