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江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(1969)
石井輝男監督の1969年作品「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」を初めて劇場の大スクリーンで観てきた。
あまりに奇奇怪怪な内容に公開当時は酷い扱いを受けたものの、後にカルト映画としてじわじわと人気が拡がり、さらにソフト化されない時期が続いてますますマニアの間で熱が高まり「なんとかして見たい映画」となって…
ついに2007年に日本ではなく北米でDVDが発売され、僕もこの北米版DVDを買って初めて本作を見たのだった。
その北米版DVDを、夜中に真っ暗にした自分の部屋で見た時に受けた衝撃と奇しさは、今回は薄まって感じた。大きなスクリーンでたくさんの観客と観るより、ひとり小さなモニターで見る方が行動としては怪しげで、この映画が醸し出す空気感に合っていたのかもしれない。でも、大スクリーンでみんなと観るのは、また違った味わいで面白かった。
あと、映画の前半は意外と笑える場面が多くて、めちゃくちゃ印象に残っていた奇っ怪な展開は後半に入ってからなんだと改めて気付いた。やはりインパクトある場面の印象が強く残像として残っていたんだなぁ…
その映画後半なんだけど、とにかく気持ち悪〜い人が作り出した気持ち悪〜いものがわんさか出てきて、当時でもモラル的にヤバい感じだったのはわかる。造型はヤバいというよりキショい感じだけどね。あとは、この映画を支えている暗黒舞踏の創始者である土方巽の存在感が圧倒的。
そして、忘れられないあのビックリ仰天のラストシーンへ…
やっぱ凄い映画でした。よほどヘンテコなものや変わったもの、他にないものを観たい方にしかオススメしませんが、まさに"一見の価値あり"な映画です。
【ネタバレ】
前半のヘンテココメディから一転し、中盤の島に渡ったあたりから奇怪な世界に呑み込まれ、「フリークス」や「悪魔の植物人間」みたいな展開になっていたのが、さらに後半になると突然明智小五郎が現れ、ここまで全く推理モノだと思えなかった話の流れを一気に推理してみせるという驚きの展開。
ここで、明智小五郎は単に推理をするだけでなく、推理の中で、畳みかけるように「人間椅子」やら「屋根裏の散歩者」やら次々と江戸川乱歩作品の中身を並べ立て、「どうです。私の推理に間違いはないでしょう?」と言い切るから凄い。
そして、血の因縁を巡る結末へ。花火と共に、
おかーさーん… おかーさまー…
もう、空いた口も塞がらない感動のフィナーレです。
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