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貴公子(2023)

「THE WITCH 魔女」のパク・フンジョン監督の新作「貴公子」を観た。宣伝では"韓国ノワールアクション"と謳っているが、ちょっとジャンル違うんじゃない? 容赦ない暴力、ときどきコメディ… と言った感じの面白さでした。

フィリピンで病気の母のために地下格闘で日銭を稼ぐ青年マルコは、生まれてこの方会ったこともない韓国人の父を探していた。自分の稼ぎだけではままならない母の手術費を出して欲しいのだ。そんなある日、彼の前に“父の使い”を名乗る男が現れ、マルコは韓国に向かう。

飛行機の中でマルコが出会ったのは自らを“友達チング”と呼ぶ謎の男“貴公子”。不気味に笑う貴公子に恐怖を感じ逃げるマルコだったが、その後、マルコはたびたび貴公子と出くわすことになる。

なぜ、マルコの前に突然、父親は現れたのか…? 謎の貴公子の目的は!? すべてが明らかとなった時、マルコはさらなる危機に見舞われる。

基本的な筋書きは割とありがちなパターンながら、マルコの親族として登場する兄、妹、女弁護士、そして貴公子といったそれぞれの関係性が映画中盤までわからないので、マルコにとって誰が敵か味方か、そもそも何が起きているのかわからない… というのが面白いところ。

でも、それより何より面白いのは、キム・ソンホ演じる謎の殺し屋"貴公子"。映画冒頭から韓国映画らしい情け容赦ない残忍さで人を殺し、「オレ、プロだから…」と言いながらも、高価なスーツが雨に濡れるのを嫌がり、靴の汚れやヘアスタイルの乱れをいちいち気にする。そして、やたらと咳き込んでは苦しそうにしてる。

新車に傷がついては嘆き、傷を負うと悲鳴を上げ、コーラを飲んではゲップする。ひとなつっこい笑顔を見せつつ、いざとなったら殺人兵器と化す。この二面生を持つ殺し屋キャラクターが本作の1番の目玉で、キャッチコピーの「この男、天使か悪魔か」は、「この映画、犯罪映画かコメディか」と言い換えた方が正しく本作を表せるのでは?

考えてみれば、「THE WITCH 魔女」も普通のティーンエイジャー女子が実は恐ろしいパワーを持つ存在だったというギャップが映画の軸になっていたので、そういう意味では同じ構造か…

ギャップ萌えのアクション犯罪コメディとして、なかなか楽しい一作です。

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