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コカイン・ベア(2023)

監督としては、正直あまり信頼していないエリザベス・バンクス監督の「コカイン・ベア」を観た。だって設定がかなり変で、わかりやすく面白い映画になりそうだと思ったから。

1985年9月11日の朝。麻薬密輸人のアンドリュー・カーター・ソーントン2世がFBIに追われ、セスナ機からコカインが入ったバッグを投げ捨てたところ、これをクマが食べて死んだ。

…という事実に着想を得て、そこから先は好き勝手にアレンジして、コカインを食べたクマが大暴れする映画に仕立てあげた作品。

冒頭からカップルが「熊の色が黒か茶色かで、死んだふりをすべきか逃げるかが異なる」って話をしていたら、実際登場した熊の色が判別できなくて慌てるみたいなギャグに始まって、この映画のコメディ寄りのトーンが示される。一方で、熊が人を襲うシーンはかなりグロテスクで、ギャグとグロが混じった「死霊のはらわた」的な狙いが感じられる(狙っただけで出来てないけどね)。

しかし…

この映画には、冒頭に登場するヘンテコラブラブカップル、森に落ちたコカインを探す元締めのボス&その手下2人、彼らを追う刑事たち、地元のチンピラ3人組、親に内緒で滝の写生に来た子供たち、それを追ってきた母親、森林警備隊員と野生動物管理官、怪我人の報せを受けてやってきた救急隊員… と、95分の尺なのに数多くの人物が登場する。

(たくさんの人を殺す見せ場作りのために)これだけの登場人物を森に集めた設定の仕方は巧いが、それぞれのエピソードが薄っぺらくて、面白くない。「13日の金曜日」のように、単に殺され役ならそこまで設定してその説明しなくていいのを、各登場人物のしょうもないエピソードを中途半端な長さで見せていくのが、オフビートな笑いにもなってなくて辛い。

だから、全体に熊が登場するシーンは面白いのだけど、登場人物たちがやりとりするくだらないシーンに関しては、最初はバカバカしくて面白いなぁ…と思いながら観てられるんだけど、途中からだんだんその意味のない、さほど笑えない底の浅い繰り返しに飽きてしまう。

結果、物語は途中から失速して盛り上がることもなく終わってしまった。これ、結局"出オチ"じゃん!

"コカインをキメた熊が大暴れ"という発想は面白かったし、こんな一発ギャグみたいなお話なのにちゃんと予算使ってて、熊のCGのレベルも凄く高くて、素晴らしく面白い作品に仕上がりそうなのに、登場人物の捌きの下手さとモタモタした演出が残念だったよ。もっと狙いを絞れば、もっと面白い映画になったはず。惜しい!(ので、やはり監督の腕には疑問が残るのであった。)

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