白い牛のバラッド(2020)
ベタシュ・サナイハ&マリヤム・モガッダム監督「白い牛のバラッド」を観た。マリヤム・モガッダムは脚本と主演も兼ねる。
死刑執行数が世界2位のイランを舞台に、冤罪の死刑で夫を失ったシングルマザーと娘の物語を描くイラン&フランス合作映画。イラン国内では検閲にひっかかって上映禁止になったとか。
イランの映画を見る度に、この国では、まだまだ女性が生きづらい面が多いのだなと考えさせられるが、本作でも我々から見ればいろいろと理不尽なことが起きる。(とはいえ、国によって文化もルールも異なるので仕方がないし、イスラムの教えに従って生きている人にとっては、それが正義なのだ。)
冤罪で夫を亡くし、ろうあ者である娘と2人で生きていくしかないシングルマザー。彼女に非はないのに、働くことも住むことも何もかもが難しい。
そんなところに現れた、亡き夫にお金を借りていたという"夫の友人"。彼は困難に直面する彼女を全面的にサポートしてくれる。最初は知らない男を少し訝しく思っていた彼女も、徐々に彼に心を許し始める。しかし…
刑務所の中庭の中央に、白い牛が立っている。四方には壁に沿って大勢の人たちが立ち並ぶ。牛は神に捧げる犠牲だ。冤罪で死刑になった夫は、神に捧げられた犠牲者だったのか?
すんなりとわかりやすい映画ではないが、静かにいろいろなことを考えさせてくれる深みのある作品です。
彼女も、彼も、とてつもなく心が痛い。
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