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整形水(2020)

チョ・ギョンフン監督の2020年作品「整形水」について真面目に書いてみます。


初めて映画「整形水」を見たのは、オンライン・スクリーニング。会社で海外作品の買い付けにチャレンジすることになり、各種映画祭でスタッフが見つけてきた2作品をスクリーニングしたうちの1作が本作でした。

「整形水」の第一印象は、「結構えげつない」「絵のタッチが独特で不思議というか、なんだか奇妙」「現代社会の嫌なとこ突いてる」そして、総じて「エンタメ作品として、えも言われぬ強烈なパワーがある!」といったものでした。

幼い頃から自分の容姿に強いコンプレックスを持つ主人公が、メイクを担当する女性タレントやマンションの管理人から馬鹿にされ、ちょっと気の毒に思っていたら、そんな彼女もヤケ酒+ポテチをドカ食いの上、ネットで人を誹謗中傷しまくることでストレス発散しているという…「めっちゃひねくれた嫌なヤツやん!」って感じで。

とにもかくにも、登場人物がそろいもそろって自分勝手で性格悪い。(主人公の両親は除く。)

この映画の"怖さ"は、表層的なホラー映画的表現による怖さではなく、そんなささくれ立った人間の"負の感情"が、どストレートに、かつ大々的に表現されているところにあります。

人が人を外見で判断することは、視覚や好みがある以上避けられないのだとは思うけど、それが世の中において極端な"ものさし"になっていないか? その傾向をダイエット関連商材、美容商材、さらには美容整形という「ビジネスの原理」が、ある一方向に後押ししているのではないか?

インターネットによってこんなに便利な世の中になり、(国によって状況は異なるが)個人が世界中に向けて自由に自分の意見を発言できるようになったのは良かったが、同時に、自分の姿を隠しながら世界中に向けて個人攻撃ができるようになってしまった現代。

安全なところから見ず知らずの他人を傷つけることに無神経、無頓着、下手すればそれを「個人的な娯楽」にまでしてしまってはいないか?

そういった現代社会に対するさまざまな疑問を凝縮し、その嫌な部分を全面的に押し出して、かつ、それらを最終的には"ある種のファンタジー"または"都市伝説"にまで昇華する形でエンタメ作品に落とし込んだところが、本作の"えも言われぬパワー"だと思うのです。

こんなに"耳が痛い"(というより、"目が痛い"感じですが…)お話を、それでも見やすくしているのが「アニメ」という表現で、アニメという表現方法を効果的に使った事例としても、とても面白い。

例えば、主人公が初めて整形水を使った後の、作画崩壊したキャラか!? とビックリしちゃうようなキャラクターの顔にはユーモアすら感じるし、この3Dでマンガ的なキャラのデザインや、ややぎこちない演技(演技じゃないか?)が狙ってか狙わずかして怖さを緩和させているからこそ思い切った描写ができるという利点があったりするし。

そんな、さまざまな要素が混じり合って独自の世界観を作り上げ、さらに想像しえない"マンガみたいな"斜め上の展開に帰結するこの作品。尺は85分とコンパクトにまとまっているので、ジェットコースターのように楽しめる映画だと思います。

ぜひ、みなさんも、この「予測不能な都市伝説」をお楽しみください♪


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