モリコーネ 映画が恋した音楽家(2021)
僕がエンニオ・モリコーネ氏の音楽に感激してサントラアルバム(当時はLP)を買った最初の作品は、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」でした。その後、「ミッション」「アンタッチャブル」「フランティック」「ニュー・シネマ・パラダイス」とアルバムを購入して聴くようになるのですが、そのあたりから今度は「エンニオ・モリコーネ ベスト・アルバム」みたいなのも買うようになって、「夕陽のガンマン」をはじめとする初期の西部劇に向けて書かれた楽曲も氏の作品だと知るようになりました。
そんな、エンニオ・モリコーネ氏が、どのように"音楽"と対峙し、どのように学び、考え、取り組んだのかがとてもよくわかるドキュメンタリー映画が、現在劇場公開中のジュゼッペ トルナトーレ監督作品「モリコーネ 映画が恋した音楽家」です。
トリュフォーがヒッチコックにインタビューした「映画術」と同じく、モリコーネ氏にとって"信頼できる若き友人"であるトルナトーレ監督との対話は実にナチュラルで、こんな記録が遺されたことは奇跡的で本当に素晴らしいことだと思います。
もともとアカデミックな音楽を学んだ氏が、音楽界では低く見られる「商業音楽」を作り続ける自分を卑下し、葛藤し、苦しんだ年月が痛いほど伝わってきますし、逆に映画産業の中で仕事は増えても、なかなか評価されない悔しさも味わいながら、やがて全ての努力と苦闘が収斂して"現代の偉大な作曲家"として評価されるに至る長い過程には心が揺さぶられずにはおれません。
また、ひとつひとつの楽曲がどんなきっかけから発想され、どのような実験的精神や、アカデミックな音楽論から組み立てられていったのかを昨日のことのようにスラスラと語る氏の姿には驚きました。(観たことがない映画もたくさん出てきて、それがまた面白そうで、観たくなります。)
エンニオ・モリコーネ氏は、ものすごい勉強家であり、努力家であり、天才であったことが、素晴らしい音楽の数々と共に伝わる、稀に見る完成度のドキュメンタリー映画でした。 Bravissimo!!!