アフター・ヤン(2022)
コゴナダ監督「アフター・ヤン」を観た。とにかく静謐で、美しい、詩のようなSF作品。
人間と、人のクローンと、"テクノ"と呼ばれる人間そっくりのアンドロイドが一緒に暮らす近未来。
茶葉の販売店を営むジェイクと妻カイラ、幼い養女ミカは、"テクノ"のヤンと4人で幸せに暮らしていた。特にミカはヤンのことを「お兄ちゃん」と慕っている。
そんなある日、突然、ヤンが故障で動かなくなってしまい、ミカはひどく落ち込む。ジェイクはなんとかヤンを修理しようと東奔西走するが、なかなか有効な手段は見つからない。
だが、その過程で、ヤンの体内には毎日数秒間だけ動画を撮影できる装置が組み込まれていたことが判明する。そこに記録されていた映像とは…
この"毎日数秒だけ"という設定が絶妙に上手い。ヤンの残した数秒の映像を見返すことで、ジェイクもカイラも、その瞬間の会話やヤンの表情や自分の心情を思い出す。この描写が素晴らしい!
本作で、ヤンが"毎日数秒だけ"撮影した映像は3D空間に浮かぶフォルダのように表現され、映像と映像は関連付けがされていて、時間や人物による検索が出来たりする。これって、まさに人の"記憶の構造"への考察であり、"記憶の分析"でもある。非常に興味深いし、ホントにこんな感じなのかも…と思っちゃう。(映画「ブレインストーム」における記憶の映像表現に近い。)
画の切り取り方、絶妙な光の加減、静かな音楽… まるめヒーリング映像のような見た目の中に、記憶の構造分析、人種を超えたつながりなどを飲み込み、ヤンの記憶映像が次々と再生される瞬間に、観客は自分の人生の記憶を重ねてしまう。特に、歳を取っているほどに、深く…
そして、岩井俊二監督「リリイ・シュシュのすべて」の楽曲「グライド」が重要な役割を果たす。
I wanna be
I wanna be
I wanna be just like a …
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