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ダ・ヴィンチは誰に微笑む(2021)

アントワーヌ・ビトキーヌ監督のドキュメンタリー映画「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」を観た。

ある美術商が名もなき競売会社のカタログから13万円で落札した由来のわからない1枚の絵が、直感、修復、鑑定、希望、思惑、報道、宣伝、政治といった様々な要素が絡み合う紆余曲折を経た果てに、2017年の競売で史上最高額の510億円で落札されるに至る舞台裏を、時系列の出来事や関係者への取材によって検証する、とても興味深い作品。

関係者が実際にインタビューを受けて、それぞれの立場でそれぞれの信じることを自信満々に語っているのがなかなか凄い。

そして、このドキュメンタリーが整理して見せてくれるアート界の裏側は、一種特殊な才能を持つ(歴史探索家のような方もいれば、一部は見方を変えると詐欺師的とも受け取れるような)人々が、日常の世界とは違うレイヤーで躍動する世界でもある。

ドキュメンタリーということで、配信などで家庭のTVで見てもいいが、我々には窺い知ることのない、この圧倒的に謎めいた世界を覗き見るには劇場という閉ざされた空間でスクリーンを凝視するのが良いかと思う。

知的好奇心を刺激される、見る者を別世界に誘ってくれる傑作。


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