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ACIDE アシッド(2023)

宣伝文句の"致死率100%の高濃度酸性雨が降り注ぐ世界の終わり。息をつく間も許さない、究極のサバイバル・スリラー"っていうのと、いかにもそんな映画っぽい予告編がとても良く出来ていて、公開されてすぐに観に行った、ジュスト・フィリッポ監督の「ACIDE アシッド」。

なのですが… 実際に観た本編は、全くもって"究極のサバイバル・スリラー"には程遠い、登場人物のいろんな感情が交錯しながらも中途半端にバッサリ終わる人間ドラマでした。ハリウッド映画風に見事に編集された予告編とは違う… ああ、これ、フランス映画だったよなぁ…。完全に見誤ったな… と途中からは諦めて観ていました。

登場人物の誰ひとり感情移入できない、観客を鬱々イライラさせる(という意味では見事な)仕上がりの映画です。この内容じゃお客様を呼ぶのは難しい。よって、全く違う映画に見せた本作の宣伝についてはお見事と言いたい。けど、その宣伝に釣られて観た観客のガッカリ感もまたハンパないと思うので、痛し痒しだね。

【以下、ネタバレ】
冒頭、スマホで撮影される映像は、従業員が何かの不満に爆発して暴徒と化して会社を襲い、鎮圧に来た機動隊員をも半殺しにする姿。その、危うく機動隊員を殺しかけた男が主人公ミシャルだ。

そんなミシャルの映像がネットにあがっているのを見てゲラゲラ笑っている同級生に怒りのあまり馬糞を食わせ大暴れするセルマはミシャルの娘。娘は父親のことを慕っているようだが、両親は離婚して母親側に引き取られている。母親エリーズにはリッチな兄がいて、世話をしてもらっている様子。

病院で治療を受けている女性カリンはミシャルの現在の恋人らしい。愛してる!と言い合いながら手術室へ…みたいな展開。

そんな風に一通り登場人物紹介がされたところで、酸性雨が降り始める。逃げなきゃいけないけど、セルマは寄宿舎にいて危ない。自分の車が修理中のエリーズは、ミシャルを呼び出し、彼の車でセルマを迎えに行く。

そこから先は、酸性雨に降られて、逃げて逃げて逃げて… その間に夫婦喧嘩したり、父と母と娘がそれぞれに勝手なことを言ったり勝手な行動をして状況が悪化したり、自分が生き残るために他人や動物に酷いことをしたり、鬱々とした嫌なことばかりが続いて、ほとほと疲れちゃう。ミシャルは娘といるのに、恋人カリンのことばっか考えて行動しているし。

酸性雨の表現は、基本的に大雨と白い煙。あと、雨に溶かされたいろんなもの。といった程度で、ディザスター・ムービーには程遠い。

酸性雨の恐怖よりも、そこで争い、他人を蹴落とし、感情のままにギャーギャー叫んで、勝手な行動で周りに迷惑かけまくる人間の方にスポットライトを当てたいのだね、監督は。もっと「魔鬼雨」みたいのを期待しちゃってたな。

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