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若き見知らぬ者たち(2024)

内山拓也監督「若き見知らぬ者たち」を観た。どうにもならないこの世の地獄に、主人公たちと一緒に2時間付き合わされる苦行のような映画だった。

いや、映画の出来が悪いとか言うんじゃない。役者の皆さんの演技も素晴らしい。監督が狙ったものを、たぶん狙い通りに描ききったのだと思うんだけど、最初から明るい気持ちになる要素がゼロなので…

風間彩人は亡くなった父の借金を返済し、難病を患い痴呆症のようになってしまった母の介護をしながら、昼は工事現場、夜はかつて両親が開いたカラオケバーで働いている。

弟も同居し、同じく借金返済と介護を担いながら、父の背を追って始めた総合格闘技の選手として日々練習に明け暮れる。

息の詰まるような生活に蝕まれながらも、彩人は恋人の日向との小さな幸せを掴みたいと考えている。しかし、彩人の親友である大和の結婚を祝うつつましくも幸せな宴会の夜、彼らのささやかな日常は、思いもよらない暴力によって奪われてしまう…

この映画で、警官の理不尽な職質や暴力などをしつこく描くのは、そういう警察を批判するのが本作の大きな目的だったのか?(描写から、作り手の憎悪が伝わってくる。)

または、格闘技におけるフェアな暴力と警察やバーで絡んでくる客のアンフェアな暴力を並べて見せることで、この世のアンフェアな暴力を批判したかったのか?

そのあたりがテーマだったとしても(違ってるかもしれないが)、物語全体の話運びと、それぞれの登場人物の行動には謎なものが多く、「いくらなんでも、そこでそんな行動はしないでしょう…」「さすがに、それはそのまま見過ごさないでしょう…」みたいのが多過ぎて、観ていていろんな意味でしんどかったです。

特に霧島れいかさん、磯村勇斗さんの特筆すべき熱演がもったいない。

木を描いて、森を描けず。といった感じかなぁ…

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