或る夜の出来事(1934)
フランク・キャプラ監督の1934年作品「或る夜の出来事」を見た。スクリューボール・コメディ映画の傑作として名高く、後の映画へ与えた影響も大きい作品で、アカデミー賞では主要5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞)を受賞した。
90年前の白黒映画なので、さすがに古さは否めないが、それでもその古さを越える魅力に溢れている。
大富豪の箱入り娘エリーは、ひょんなことで出会ったプレイボーイの飛行士と結婚しようとして父親に反対され、海上に浮かぶヨットに監禁されていた。そんな父のやり方に反発したエリーは海に飛び込んで脱出。
父親はすぐに探偵を複数雇って捜査網を張るが、エリーは裏をかいて夜行バスに乗り込む。そこに乗り合わせたのが、上司と意見が合わず外されたばかりの新聞記者ピーターで、些細な勘違いから座席を争って2人は大喧嘩。お互いに印象は最悪だ。
エリーが新聞を賑わせている令嬢だと気付いたピーターは起死回生のスクープ記事を狙う目的もあってエリーを助けようとするが、負けん気が強く、世間知らずで我儘なエリーはなかなか言うことを聞かず身勝手な行動に出る。
無造作に足元に置いた荷物を盗まれ、なけなしのピーターのお金も貧しい母子に渡してしまうエリー。手元にほとんどお金がなくなった2人は、新婚夫婦と偽って安宿の一室に泊まることになったり、ついには野宿する羽目に…
そんな風に、最悪な出会いをした、住んでいる世界がまるで異なる2人が反発し合いながらもさまざまなトラブルを乗り越えるうちに心を通わせていく、まさにスクリューボール・コメディ!
無駄のない展開で2人のやりとりを面白可笑しく見せながら、後半は一捻りした流れに持ち込んで観る者をやきもきさせる脚本はさすがで、映画史に残る傑作と言われるのにも納得。
エリーの父親が本当に娘のことを思って行動しているのが素敵だ。とはいえ、エリーはやはり世間知らずなお嬢様過ぎて、後々面倒な相手だと思うけどなぁ… ピーターも大変だね!!