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波紋(2023)
荻上直子監督「波紋」を観た。前作「川っぺりムコリッタ」がとても好きだったので、その流れで。すると、トーンが全く違う映画だった!
要介護の父親と、高校生の息子と、専業主婦の妻を置いて、ある日ふと家を出て行ってしまった夫。残された妻は(その辺は詳しく描かれないが、破綻した心と生活をなんとか立て直すべく新興宗教を心の支えとし、)スーパーでパートしながら、お義父さんと息子を世話し、息子を九州の大学に送り出し、お義父さんを看取る。
スーパーでは嫌な客に絡まれ、更年期で体調も悪く、それでも新興宗教“緑命会”でなんとか心のバランスをとりながら安定した一人暮らしをしていた彼女のところへ、癌になったので治療費が欲しいという理由で10数年ぶりに夫が突然帰ってきた。帰ってくるや、昔ながらの亭主関白で横柄な態度を…
さらに、息子は聴覚障害を持つ6歳も年上の女性をいきなり結婚相手として連れて帰ってくる。
何とか落ち着いていた彼女の生活を破壊する出来事が次々と起こり、"水面に波紋が拡がるように"大きなストレスがかかる中、彼女はどうやってこの状態を打破するのか?(ちなみに信仰宗教は、「赦すことです」とか言っちゃって、まるで役に立たない。)
個人的には、昔ながらの"妻はひとりで家のことやっとけ"的スタンスでいる夫や息子に共感できない上、黙って勝手に出て行って、困ると帰ってくる夫に欠片も共感出来ないので、「そんなん、受け入れんな。追い出せよっ!」と思っちゃうんだけど、彼女もまた昔ながらのスタンスの中に生きているひとりなんだな…と。
この、どーにもできん大ピンチから物語がどう展開するのかはネタバレになるのでさておいて。心地良い映画ではないけど、大変面白い映画でありました。主演の筒井真理子さんが、これでもか!というレベルの吹っ切った熱演。これ、かなり凄いです。
あと、新興宗教“緑命会”の歌や踊りが超面白い。
【以下、ネタバレ】
ラストの、赤い傘と枯山水の白い庭の色彩的な対比および、晴天の中に雨が降りしきる見事な美しさ。これまでの彼女の人生の殻を破って、次のステップに進むことを指し示す吹っ切れたエンディングは見事でした。