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I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ(2022)
本作が長編デビューとなるチャンドラー・レバックが監督・脚本を担当した「I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ」を観た。本作は、監督の自伝的ストーリーを、主人公の性別をあえて男性に変更して描いた作品なのだそうだ。
カナダの田舎町で暮らす高校生のローレンスは映画が大好き…というか映画にやたらうるさい。社交性がなく周囲の人々とうまく付き合えない彼の願いは、ニューヨーク大学で「ハピネス」等を撮ったトッド・ソロンズ監督から映画を学ぶこと。
そんな彼と唯一仲良くしてくれる幼馴染のマットと毎日つるみながらも、「大学に行ったらお前との関係は切り捨てて、新しい人生をスタートする」なんて宣言しちゃったりするし、クラスでローレンスとマットをフォローしてくれる女子にも酷い対応をする。
自分だけが万能で周囲はバカな奴ばかりだという態度で浮きまくり、彼を大切にしてくれる母親にも辛く当たり(それでも母親は優しくしてくれる)、やがて唯一の親友まで傷つけて距離を取られてしまう。全て自業自得なんだけど。
そんなローレンスが、ニューヨーク大学の高額な学費を貯めるため地元のビデオ店でアルバイトを始め、そこで、かつて女優を目指していた店長アラナと出会う。このアラナがとても頭の良い気の利いた女性で、偏屈なローレンスの心を解きほぐしていく。
…のだが、ここでもまたローレンスはアラナやバイト仲間の信頼を裏切ってしまう。
このアラナとローレンスの関係や対話が、あまりにも素晴らしくて、ぐっとくる。アラナやローレンスが背負っている過去の重さが、そこに厚みを増す。
若い時、映画に限らず自分の好きなものにのめり込み過ぎて自分が一番わかってるって思い込んだり、自分は特別な存在だと勘違いしたり、周囲に横柄な態度を取ったり。
そんな瞬間、あったよなぁ…なんて思い返したり、あの場にアラナみたいな人にいて欲しかったなぁと思ったりする、ちょっと心が痛む、でもなかなか素敵な作品でした。