パラレル・マザーズ(2021)
ペドロ・アルモドバル監督の「パラレル・マザーズ」を観た。
アラフォーの写真家ジャニスと17歳のアナは、共に予想外の妊娠で、シングルマザーになることを決意して入院した病院で出会う。2人は、同じ日に女の子を出産し、再会を誓い合って退院する。
しかし、ジャニスは娘と対面した元恋人から「自分の子供とは思えない」と告げられ、悩んだあげくに踏み切ったDNAテストで、娘が実の子ではないことを知る。アナの娘と取り違えられたのではないかと疑ったジャニスだったが、激しい葛藤の末、この秘密を封印し、アナとの連絡を絶つ。
それから1年後、アナと偶然に再会したジャニスは、アナの娘が亡くなったことを知らされる…
というストーリーラインが公式サイトで公開されていたので、そこから先どうなるんだろう? と、ドキドキ・ワクワクしながら劇場に向かったのですが、そこから先を描こうとする映画ではありませんでした。
この2人の母親の物語の外側には、スペイン内戦の中で殺され、その辺に埋められた家族の遺骨を発掘してきちんと墓地に埋葬したいという人々の願いが強く描かれていて、どちらかと言えば、こっちが主題だったかに見えた。
親に恵まれなかった若きアナにジャニスが料理を教え、疑似家族的な関係を築く場面も印象的で、複数の角度から、スペインにおける"家族"の姿を描こうとした作品なのかな。
その分、結果的に物語としては消化不良な印象が否めない。全体に悪くはないが、オチのないドラマを見ていたような気持ち。
ジャニスを演じるペネロペ・クルスは、この設定における複雑な感情を見事に体現してベスト・アクトと言っていいレベルの熱演。