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エルヴィス(2022)

バズ・ラーマン監督「エルヴィス」を観た。個人的には監督のギラギラゴージャスな映像が大好きで(「ムーラン・ルージュ」が1番好き!)、そこに期待してたんだけど、ギラギラはオープニングロゴとエンドクレジットだけで、本編ではギラギラ封じられていました。

それもそのはず、本作はエルヴィス・プレスリーの生涯を描く伝記的映画で、ギラギラに飾り付けるのではなく、エルヴィスの生きた時代や背景と彼の生き様をしっかりと再現して見せることに主軸が置かれていたのです。

僕は正直、エルヴィスの出自や育った背景を全く知らなかったので(子供の頃は、ラスベガスで歌うド派手なおじさんくらいのイメージしかありませんでした…)、エルヴィスの家が経済的に苦しくて黒人が多いメンフィスへと引っ越し、彼が子供の頃からゴスペルやブルースといった黒人音楽に触れて音楽性の基礎を作ったなんてこと、これっぽっちも知りませんでした。

しかも、当時の黒人差別はすさまじく、黒人の音楽を白人が歌うなんてとんでもない! 加えて、腰をガクガク震わせて歌うパフォーマンスも道徳的に許されん! となるわけですが、若い女性たちはセクシーなエルヴィスに痺れ、歌も上手いのでたちまち大人気となります。

そんな若きエルヴィスに目をつけてマネージャーになるのが"大佐"。“天性の詐欺師”と呼ばれた大佐は、エルヴィスを巨大なビジネスに仕立てていくのでした。

この映画、この大佐の視点から過去を振り返っていく作りがなかなか面白いのです。

エルヴィスは世界で最も成功したソロ・アーティストとして圧倒的な地位を築くものの、一方で金儲けのために"囚われの身"となり、42歳の若さでこの世を去る。そんな輝ける残酷なエルヴィスの一生をしっかりと描ききる見事な映画に仕上がっています。見応え十分!

オースティン・バトラーがエルビス・プレスリー役を全身全霊で演じ、大佐ををトム・ハンクスが貫禄たっぷり嫌味たっぷりに名演。

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