アダマン号に乗って(2023)
ニコラ・フィリベール監督によるドキュメンタリー映画「アダマン号に乗って」を観た。2023年・第73回ベルリン国際映画祭金熊賞〈最高賞〉を受賞した作品だ。
舞台は、パリのセーヌ川に浮かぶ木造建築の船「アダマン号」。ここは、精神疾患のある人々を迎え入れ、文化活動を通じて彼らの支えとなる時間と空間を提供するデイケアセンター。音楽、絵画、詩などで自らを表現することで患者たちは癒しを見いだしていく。
「自分を責める声がずっと聴こえて苦しいんだ」「友達に会いたいけど、会えない」「薬を飲まないと暴れちゃう」「薬を飲まないと飛び降りちゃいそうになる」みんな口々に精神疾患の辛さを語るが、それをカメラに向かって語れるところまでは安定している。
そんな安定を作る一助になっている「アダマン号」での日々は彼らにとってかけがえのないものなのだということが、本作を通じてしみじみと伝わってくるのだ。
「アダマン号」に集う患者さんたちと、彼らを見守り寄り添う看護師や職員たちの日常を穏やかに切り取って見せることで、私たちが現代社会の慌ただしさの中で忘れがちになっている個の大切さや人とのつながりを改めて考えさせてくれる一作。
"大切なのは余白を持つこと" それが、映画の冒頭で語られる言葉だ。
4/28(金)公開。