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悪い子バビー(1993)


ロルフ・デ・ヒーア監督が1993年に撮り、第50回ベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した映画「悪い子バビー」が30年の時を経て日本で劇場公開された。

予告編を見ただけで十分にその異様さは伝わるが、とにかく異質で、突き抜けていて、見たことのない凄い映画であることは間違いない。面白いという感覚とはほど遠いけど… ややギョッとするところもあるけど、その存在感たるや圧巻!

母親の異常な愛情により、産まれてこのかた35年間、暗く汚い部屋の中に閉じ込められ、母親以外の人と会うこともなく生きてきた男・バビー。外に出れば汚染された空気の毒で死んでしまうと教えられ、ガスマスクを付けた母親が外出している間は椅子に座ってじっと待ってなさいと指示されれば、何時間でもそのままの姿勢で動かず待っている。

言葉は相手の発した言葉を繰り返すだけで、ほとんど学もなく、物事の善悪もわからない。食事はちぎった食パンに砂糖とミルクをかけただけのもの。夜は意味も分からずに母親の相手をさせられている。35歳になっても、ほとんど子供のような知識のままで、母親になされるがままの生活だ。

部屋に迷い込んだ猫は何故ガスマスクをしていないのに死ななかったのか? 母親に尋ねると、猫は息をしないからだと教えられ、なるほど凄いなと猫の顔をラップでくるんでしまう。そして、動かなくなった猫を「どうして動かないの? 動いてよ!」と大切にそばに置いておく。彼に生と死の概念などないのだ。

そんなある日、父親を名乗る男が突然帰って来たことをきっかけに、バビーの人生は大きな変化を遂げる。35年も放置したのに悪びれもせず家で主人を気取る父親。35年も放っておかれたのに喜んで父親と愛を交わす母親。そして、バビーは邪魔者扱いに…

父親にドアから外に蹴り出され、毒の恐怖に慄くバビー。しかし、本当は外に毒などなく、そこには多くの人間が暮らす刺激に満ち溢れた世界が存在していた。

世の中の常識を知らないどころか、最低限の知識もないバビーは悪気なく行く先々で問題を起こし、大暴走を繰り広げる。一方で、そんなバビーの無垢で自由で荒々しいスタイルを認めて助けてくれる人も現れる。

果たしてバビーは、この世界に居場所を見つけることが出来るのか!? バビーという真っさらな人間の姿を通じて、我々の生きている世界を改めて見つめ直す、刺激的な作品です。これは、一見の価値あり物件。

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