ウェールズ語教員の不足
Cymraeg 2050と題して掲げた「ウェールズ語話者100万人」の目標を達成するためには、現状の6,315〜9,140名*[1]に追加で17,000名のウェールズ語を話す教員が必要だと見積もられている(Senedd report, 2023)。これは全教科をウェールズ語で教える学校(Addysg cyfrwng Cymraeg)に限らず、英語で教育を行う学校におけるウェールズ語の教科担当の教員も足りていないのが実態である。特に中学校(Secondary school)は深刻で、そもそもウェールズ語話者に限らず、英国全土で中等教育での教員の成り手が減っている(The Education Directorate, 2022)。
1999年以降、該当地域の中等学校においてウェールズ語は16歳までの必須科目になっている。当然、相当数の教員が必要になるわけだが、ウェールズ語による教科教員になるための養成講座には特別奨学金が与えられている(Davies 2014)。ウェールズで教員になるためには基礎教職課程 (Initial Teacher Education, ITE) と大学学位を取得した後、教員資格(Qualified Teacher Status ,QTS)を取得する必要がある(Welsh Government, 2016)が、このITEないしQTS取得までにかかる履修期間中に対して、一人当たり£3,000を給付するIaith Athrawon Yfory Incentive Schemeという制度が存在している (Welsh Government, 2021) 。
例えば中学校( secondary school:391校)では現在2,004名が教科教員としてウェールズ語指導にあたっているが、これは2021年の中間目標の2,200名*[2]を下回っているほか、他分野を合わせれば合計600名が目標値に対して足らなかった(Language Magazine, 2023)。そのため、奨学金[3]を出し、イングランドで教職についているウェールズ出身者を呼び戻す施策も取られている。
*[1] 2020年11月の調査によれば、学校教職員において、ウェールズ語に堪能な教員は6,315名。中級レベルまでを足し合わせても9,140名程度である。
*[2] 2050年の到達目標は4,400名のウェールズ語担当教員を配備すること(Language Magazine, 2023)。
*[3] ウェールズ語学校での教員になるための研修課程への参加に5,000 (6,262)ポンド、実際に勤務することに5,000ポンドの奨学金が支給される(ibid.)