生活の中で目にする・耳にするウェールズ語
現在のウェールズにおいて、道路標識や公共の場の案内はほぼすべて英語とウェールズ語の2言語表記である。
1993年のウェールズ語制定法により、法律、政府関連に加え、医療機関、陸地測量部、社会保障事務所、大学等の主要な公共施設が2言語表記を始めたが、この動きは民間にも波及し、ドラッグストア大手のBoots、書籍・文具のW.H.Smith、銀行、住宅組合、スーパーマーケットなどの主要なチェーン店もウェールズ語表示を店内外に掲げ始めた(Davies 2014)。電車の案内、スーパーの店内アナウンス、エレベーターの音声案内なども、英語とウェールズ語が流れる。
アイルランドにおけるアイルランド語とは異なり、第一言語と定められている訳ではないため、表記の順は必ずしもウェールズ語・英語の順番ではない(管見の限りであるが、特に首都圏であるカーディフ、スウォンジーの周辺は英語・ウェールズ語の順番での表記の方が多い)。それでも2011年ウェールズ措置法以降、法的には英語と同じ地位とされている。そのため、駐車料金の督促について、支払い者がウェールズ語での案内を駐車場運営会社に求めたが、会社側がこれに応じなかったことにより、延滞料金の請求が無効となった裁判事例などが存在している(Wyn, 2023)。こういった背景から、公共で目にする案内は、広告の類においてまで、2言語表記であることが大半である。
しかし、話者が20%前後であることもあり、実際の運用となると建前と実用性とが見え隠れする。きちんと準備する時間があった案内や一般的な雛形があるものは確かに両言語が綺麗に表記されている。コロナ関連の注意事項も問題なく英語とウェールズ語の2言語表記だ。しかし、途中で訂正や追加が入った情報に目をやると、英語のみで更新がされ、ウェールズ語への翻訳が追いついていない(あるいは、おざなりになりがちな)様子が観察できる。
なお、ウェールズ語話者のみへの案内を目的にしたものは、ウェールズ語のみの案内となっている。
■オマケ
スウェーデン語表記が店内に散りばめられているイケアはこんな感じになります。