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スターラックス航空が2025年末を目処に「ワンワールド」への加盟申請へ

スターラックス航空のA321neo(2023年 関西国際空港)


フォーカス台湾の記事(2024年9月17日付け)

Skybudgetの記事(2024年9月19日付け)

TRAICYの記事(2024年9月22日付け)


スターラックス航空の「ワンワールド」加盟意向と立ちはだかる課題

9月17日付けのフォーカス台湾は、台湾の新興航空会社スターラックス航空の翟健華CEOが台北市内で開催された投資家向けの説明会にて、2025年末までに航空連合「ワンワールド」への加盟申請を行う見通しであると表明した旨を報じました。追って、「Sky-budget」や「TRAICY」といった日本の航空メディアからも報道が出ています。

台湾にはすでに、航空連合「スカイチーム」に加盟するチャイナエアライン、「スターアライアンス」に加盟するエバー航空という2社の大手航空会社が存在しています。
そのため、2020年の就航後第三勢力として急成長を遂げているスターラックス航空が航空連合に加盟するとなれば、現時点で台湾の航空会社が1社も加盟していない「ワンワールド」を選択するというのが自然な流れです。

ただ、同記事のなかでは、スターラックス航空の「ワンワールド」加盟にあたっては、「ワンワールド」の創設メンバーであるお隣・香港のキャセイパシフィック航空が周辺市場での競合関係を理由に拒否権を発動する可能性に触れています。
もっとも「ワンワールド」には、「スターアライアンス」や「スカイチーム」とは異なり、アジア系の航空会社がほとんど加盟しておらず(注)、かねてからアジア市場におけるシェアを思うように上げられないことが課題となっています。
アジア市場における「ワンワールド」のシェアを高めるためには、たとえ地理的に競合関係になり得る隣国の航空会社であっても、加盟してくれれば心強いわけで、キャセイパシフィック航空としても積極的に拒否権を発動する必要性はあまりないのではという見方もできます。

また、そもそも、キャセイパシフィック航空自体についても、相互資本提携関係のある中国国際航空の意向で同社が所属する「スターアライアンス」に移籍する噂が消えては出ての繰り返しなので、そうなると尚更アジアでの「ワンワールド」の縄張りを守るためにはスターラックス航空という大物新人の加盟が必要になってくるわけです。
(注)「ワンワールド」に加盟するアジア系航空会社はキャセイパシフィック航空、JAL、マレーシア航空、スリランカ航空の4社のみ。対する「スターアライアンス」に加盟するアジア系航空会社はエバー航空、ANAなど8社、「スカイチーム」に加盟するアジア系航空会社はチャイナエアライン、大韓航空など6社。

キャセイパシフィック航空のA350-900XWB

JALとスターラックス航空の提携の可能性

JALのB787-8(国際線仕様機)

「ワンワールド」に加盟している数少ないアジア系航空会社のうち1社は我らがJAL(日本航空)ですが、JALは現在日台路線で「スカイチーム」加盟のチャイナエアラインとコードシェアを実施しています。

仮にスターラックス航空が「ワンワールド」に加盟するのならば、その暁には、日台路線のコードシェア相手もチャイナエアラインからスターラックス航空に変更されるのではという見方が出ています。
ただし、JALはアライアンス外の航空会社とも積極的にコードシェアを実施しているエアラインなので、仮にスターラックス航空が「ワンワールド」に加盟したとしても、当面の間スターラックス航空との提携はマイレージの相互加算やラウンジの相互利用、インターライン契約にとどまり、日台路線では従来通りチャイナエアラインとのコードシェア運航が継続される可能性もあるかと思います。

いずれにしても、「ワンワールド」への新規加盟が実現してJALとの提携が開始されれば、「台湾のエミレーツ航空」を目指しており格調高いサービスに定評のあるスターラックス航空は今まで以上に利用しやすい航空会社になるわけで、大いに期待ができそうです。

三大航空連合加盟の航空会社が全て揃う国

チャイナエアラインのA330-300(「スカイチーム」特別塗装機)
エバー航空のB787-10(「スターアライアンス」特別塗装機)

三大航空連合「スターアライアンス」、「ワンワールド」、「スカイチーム」加盟の航空会社が全て存在する国は2024年時点ではアメリカ合衆国1国のみですが、今後スターラックス航空が「ワンワールド」に加盟すれば台湾がこれに続く形になります。
考えてみれば、お隣の中国(香港・マカオ除く)ですら、「スターアライアンス」加盟の航空会社と「スカイチーム」加盟の航空会社はあるものの、「ワンワールド」加盟の航空会社はないわけで、台湾のように国土が狭い国で三大航空連合加盟の航空会社が揃うのは異例のことです。

ちなみに、2012年に「ワンワールド」加盟のブリティッシュ・エアウェイズに統合されて消滅したbmi(「スターアライアンス」加盟)が現在も健在ならば、イギリスも三大航空連合加盟の航空会社が全て揃う国でした。
また、ノースウエスト航空(デルタ航空に吸収合併)やKLMオランダ航空と提携していたJAS(日本エアシステム)がJALと経営統合せず存続していたり、あるいはスカイマークが会社再建時にデルタ航空傘下に入っていたならば、日本にも三大航空連合加盟の航空会社が全て揃っていた可能性があります。

おわりに

普段ANAやエバー航空など「スターアライアンス」加盟の航空会社を愛用している小生ですが、エバー航空創業家出身の若きプリンス・張國煒氏が興したスターラックス航空にはかねて興味を持っており、機会があれば一度は利用してみたいと思っていたところです。
特に、同社の大阪~台北線には、長距離路線用でファーストクラスを設定したフラッグシップのエアバスA350-900XWBが投入されており、現在計11社が参入している同路線において唯一のファーストクラス設定便ということで注目が集まっているところです。
今後、同社の「ワンワールド」加盟に向けた動きがどのような展開を見せるかは分かりませんが、晴れて加盟が実現し、より多くの利用者にとって使い勝手の良い航空会社となることを願いつつ結びとさせていただきます。


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