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黒松沙士に魅せられて

「黒松沙士」(ペットボトル入り)
「黒松沙士」(缶入り)

今日は、私が愛してやまない台湾の国民的炭酸飲料「黒松沙士」の魅力について語らせていただきます。


そもそも黒松沙士とは

「黒松沙士」とは、日本統治時代に創業した台湾の飲料大手・黒松股份有限公司(以下黒松)が販売している炭酸飲料です。
発売開始は1950年。バヤリースオレンジやコカ・コーラが日本国内で製造・販売(注)されるよりも前から台湾で販売されているということになり、かなりのロングセラー商品と言えます。

炭酸飲料とはいっても、サイダー(ラムネ)やコーラといったものとは異なり、「ルートビア」や「ドクターペッパー」の原料としても知られるサルトリイバラ科のサルサパリラという植物の根から抽出したエキスをベースにした飲み物で、ハッカの香りが強い一品です。
「ルートビア」と同様、「湿布のような味だ」という意見も散見します。
ただ、同じサルサパリラの根のエキスを使用しているといっても、本家アメリカの「ルートビア」や「ドクターペッパー」とは成分も風味もやや異なり、「ルートビア」と比較してやや酸味が強い印象を受けます。

現在は台湾国内のコンビニエンスストアやスーパーマーケット、自動販売機はもちろんのこと、日本の一部輸入食品店や中国物産店などでも取り扱いがあり、「台湾コーラ」・「中華コーラ」の別名で親しまれています。
また、台湾国内では「加塩」・「強炭酸」・「大人系(ビール味)」といったバリエーションも販売されており、旅行した際にトライしてみる価値はあると思います。
(注)バヤリースオレンジの日本国内での販売開始は1951年。コカ・コーラの日本国内での製造・一般販売開始は1957年。

様々なバリエーションの「黒松沙士」が並ぶスーパーマーケットの店頭
お徳用のペットボトルに入った「黒松沙士」も

出会いと思い入れ

台湾桃園国際空港内の自動販売機(2013年)

私が「黒松沙士」の存在を知ったのは、2005年春の初めての台湾旅行の時でした。
到着した中正国際空港(現台湾桃園国際空港)第2ターミナルのそこかしこに、黒松の自動販売機が設置しており、その中の商品の一つが「黒松沙士」でした。
もっとも、当時の私は台湾で得体の知れない清涼飲料水に手を出す勇気を持ち合わせておらず、1週間に及ぶ台湾一周の旅の中、黒松のミネラルウォーターこそたびたび購入したものの、肝心の「黒松沙士」には一度も手を出しませんでした。

そして帰国後、たまたま閲覧していた2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の台湾の鉄道に関する掲示板で、「黒松沙士をお供に乗り鉄をした」という書き込みを見かけたことから、運命の歯車が狂い始め?ます。
この書き込みを見かけて以降、黒松沙士』とは一体どういう飲み物なのだろうか」、「今度台湾に行ったら飲んでみたい」という感情が日増しに高まっていったのですが、その望みは意外に早く叶うことになります。

2006年秋、大学のゼミ旅行で約1年半振り2度目の訪台を果たした際のこと、引率してくださった留学生の方が新竹県内のご実家に一行を案内してくれました。
その際、ご実家で提供されたのが「コカ・コーラ」と「黒松沙士」でした。
恋焦がれた「黒松沙士」にやっと巡り会えたということで、私は躊躇わず「黒松沙士」の缶に手を伸ばし、グイグイと飲み干しました。
噂に聞いていた通り、「ルートビア」や「ドクターペッパー」に近い味で、人によって好みは分かれるだろうけど、私としては癖になってしまう味だというのが率直な感想でした。

こうして留学生氏のご実家での出来事をきっかけに、すっかり黒松沙士にハマってしまうことになった私。
就職後、コロナ禍の時期を除いてほぼ毎年のように台湾に旅行しているわけですが、乗り鉄の際はいつも「黒松沙士」の缶・ペットボトルないしは「台湾啤酒」の缶を片手に列車に乗り込んでいるほどです。
帰国便に搭乗する前にコンビニエンスストアかスーパーマーケット、自動販売機で「黒松沙士」を仕入れ、キャリーケースに忍ばせるといういわゆる「密輸」行為に及んだことも、今では懐かしい思い出です。

現在は日本国内の中華スーパーでの取り扱いが増えたこともあり、わざわざ「黒松沙士」の「密輸」をする必要は薄れましたが、旅慣れた人ならば旅行先で地域限定の嗜好品飲料やお菓子をまとめ買いして持ち帰るという行為には馴染みがあるのではと思います。
「黒松沙士」以外だと、たとえば北海道の「ガラナ」や「サッポロクラシック」、「やきそば弁当」、沖縄県の「ルートビア」、西日本各府県の「カール」あたりを旅先から持ち帰る行為が「密輸」と称されることが多い気がします。

すっかり「黒松沙士」中毒になってしまった身ですが、いつか一度行ってみたいのが台北市内中心部・台北捷運板南線忠孝復興駅近くにあるショッピングモール「微風廣場」。
このモールに黒松の企業博物館「黒松世界」が入居しており、「黒松沙士」の歴史についても学べるということなので、次の訪台の際に覗いてみる機会があればと思います。

余談

私の亡き飼い猫は虫除けの「ウナコーワ」のメントール臭が大好きで、毎年夏になると家族の誰かが「ウナコーワ」を体に塗るたび擦り寄ってきて、「ウナコーワ」を塗った箇所を舐め回すほどでした。
メントール臭が好きならもしかして「黒松沙士」も気に入るのではと思い、少しだけ「黒松沙士」を分けてみたのですが、あろうことか見向きもされませんでした。

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