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小説・強制天職エージェント⑤

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小早川が去った後、水島は順調に結果を出し、同期の中で頭一つ出ていた。小早川がいたら、あいつの方が上だったかな、などと自嘲気味になることもあったが。

ある時、新しいプロジェクトを始めるからと上司に呼び出された。その部屋に小早川がいたのだった。

小早川は予想通り、退職後、準備期間を経て起業していた。会社の事業内容は転職エージェント。オーエンと提携を結んで、独自のビジネスモデルを展開していくという。その場で詳しい話はなく、水島は小早川の事務所で手伝いをするように、とだけ伝えられた。

あまり気は進まなかったが、会社命令だから仕方ない、と事務所を訪れた水島は驚いた。怪しいビルの一室で、従業員は彼1人だったのだ。水島は本社で継続中の仕事もあったため、ゆっくり話す時間もなく、訳が分からないまま、新しい仕事が始まった。

小早川の依頼で、仕事の合間を縫って、会社のデータベースを使って情報収集や資料作りを手伝った。

客の転職先をこちらで指定して、強制的に3か月間、働かせるという奇妙なシステムについては、先日知ったばかりだった。

そして今回、手持ちの仕事がひと段落し、こちらの仕事に注力できるようになったため、初めて一から案件に関わることになったのだ。

まさか、小早川の下で働くことになるとは。
水島は予想もしていなかった今の状況を振り返った。

—あいつが会社にいた頃は、追いつけそうで追いつけない状況に焦りもあった。かといって、あいつがオレの上司になるほどの差はなかった。10年後くらいに、出世争いで比較されることはあっても、今後、一緒のチームになることもないだろう—
小早川が辞めるまでは、そんな風に考えていた。

仕事を組むのはいいが、小早川が自分のボスというのは気に食わなかった。
しかし、これはプロジェクトの一環に過ぎない。元同期ということは関係なく、一時的な出向だ。オレは今後、出世していくだろうから、今の時期に外で勉強してこいということだろう。そう、武者修行なのだ。

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