【感情の解像度を高める】体内で起こる化学反応を観察しよう
「すること/しないこと」をさらに細分化して人生をディレクションする。そんな投稿を前回しました。
ならば次に考えるべきことは、何を「行動の選択基準」とするかです。
「どんな基準を持つか」とは、そのまま「どんな自分であるか」に直結します。自分の「あり方」が現れるのが行動の選択基準、言い換えると「意志」です。
では、あなたはどんな「意志」を、あるいはどんな「行動の選択基準」を持っていますか?
なぜ、その「意志」を持っているのですが?、何によってあなたにその意志を持つに至り、どんな未来に辿り着こうと思い、なぜそうありたいと思うのですか?
と言った具合にイロイロ聞いていくと、「どこかしらが結びついていない」ことが多いと感じています。
過去と未来なのか、自分の内と外なのか、wantとhave toなのか、What forとHow toなのか・・・これらは「○○よりも△△」という論調で語られがちですが、どっちも大事です。双方を反復横跳びしながら、その両方を腹落ちさせていくのが「あり方を整える」プロセスです。
01.感情を取っ掛かりにして考える
あえて「どこ」を取っ掛かりにすれば良いかを考えるのであれば、僕は「感情」に意識を向けてみることだと感じています。
感情は自分に最初に起こる反射です。体内で起こっている化学反応と言い換えてもよいでしょう。自分の感情は過去の経験や自分が培ってきた価値観と相互に影響し合っています。いまの自分を形成しているとても大きな要素です。
しかし、思った以上に「感情」はブラックボックスに包まれています。なぜ自分がその価値観を持っているか、どんな感情がうごめいているか、自分で自分のことを分かっている人は少ない。「感情の解像度」が低いんです。
でも、「共感」が大切な時代だと言われて結構な時間が経ちます。だと言うのに自分の感情すら適切に掴み取れていなくて大丈夫でしょうか。自分の感情の動き・その正体を知ろうとせずに、他人の感情を想像できるものか。4K画質が当たり前になった時代にずっとVGA画質ぐらいの世界にいるようなモノかもしれませんね
02.感情の解像度を高めていく
例えばよくあるこんな質問にどう答えますか?
・あなたは何をすることが好きですか?
・あなたは何に喜びを感じますか?
・あなたは何に面白さを感じますか?
・あなたは何をしているときが楽しいですか?
・あなたはどんなときにワクワクしますか?
全部ポジティブ方面な質問です。
これらの質問、それぞれ答えは異なりますか?、同じでしょうか?
例えば「面白い」と「楽しい」なんてメチャクチャ近い領域にある言葉な気がしますよね。でも、これが完全に同じものであるかどうかは人それぞれ。「言葉の指す領域」は人それぞれに違うはずなんです。
その言葉をどう捉えているか、ここに「その人となり」が現れます。感情の解像度が低いときにはこれらの質問への回答はボヤっと同じモノになると思います。
ところが、感情の解像度を高めていくと言葉の指す領域の「違い」や「重なり」を、自分に当てはめながら考えられるようになります。言葉の「辞書的な意味」を問うているわけではありません。その言葉を「自分がどう捉えているか」です。
感情の解像度が高まっていくと、自分が何にドリブンするのか、どんなドリブンをいま作り出せばよいのかも分かるようになってきます。日々の生活や仕事のどちらにも活かせそうですよね。
これを高めるには、毎日ほんのわずかな時間でも自分自身に意識を向けることです。逆に日々のトレーニング以外に良い方法は見当たりません。日々の生活の中で「体内の化学反応」を観察し続けること。多くの時間を費やす必要はありませんが、毎日続けることが必要だとは思います。
日々コンディションが異なる自分、日々環境が変わるこの世界、自分の外と内で起こる感情の反応や変化に耳をすませる。これを繰り返すことが感情の解像度を高める一歩です。
マインドフルネスも良いでしょう。ジャーナリングと呼ばれる毎日1ページに思ったことを書き連ねるメモも良いでしょう。日記も良いと思います。言語化にこだわらず絵や音で表現するのもOKです。
大切なことは自分の内に意識を向けて、その動きを掴むことだと思います。1日に5分でもよいので、自分の内側に意識を向けてみましょう。
03.「行為感情」と「結果感情」の存在
さて、応用的ですがここに「時間軸」を取り入れてみると違った視点が見えてきます。
例えば「○○が好き」の回答には「結果」であることと「行為」であることの両方がありそうですよね。「結果」に惹かれる人、「行為」に惹かれる人、その両方がいると思います。まずは自分がどんな「結果」に惹かれるか、あるいはどんな「行為」に惹かれるかを掘り下げてみてください。
この2つを「結果感情」と「行為感情」と便宜的に名づけます。
例えば、僕にとっての「楽しい」はアイデアを膨らませているときや、何かが少しずつカタチになってきているときなど、「世界を広げていっている」と感じるときです。自らの行為によって生まれる感情ですね。
対して僕にとっての「嬉しい」とは、誰かに自分のしたことが認めてもらえたり、相手の変化が見えたりしたとき、相手が明確に喜んでいることが自分に伝わったときに抱きます。つまり、自分の行為そのものではなく自分の行為がもたらした相手の結果(反応)によって引き起こされる感情です。
自らの行為そのものによって引き起こされる「行為感情」と、自分以外のものが自分に及ぼす影響によって引き起こされる「結果感情」の2つがあるならば、この時間軸の違いは明白です。
実際にこんな言葉はないと思いますし、もしかしたら心理学的には別の表現で語られているモノかもしれません。自分は言語や感情の専門家でも何でもありませんが、丁寧に感情に向き合っていると「感情×時間軸」の掛け合わせが面白いと気づいたのです。
で、ポジティブ方面の行為感情をゴリゴリ掘り下げてみると、複数の感情の関連性にも気づいてきました。
【僕の場合(ポジティブ感情同士の関係性)】
自分が仕事をしているシーンを例に挙げてみます。
自分にとって『楽しい』は世界を広げている作業をしているとき。アイデアを広げていったり、対象について調べているときです。このとき思考はどんどん拡散していきます。その際限なく広がっていく感覚がメチャクチャ楽しい。
で、あるところまで広げると、「気づき」がもたらされます。おお!もしかしてコレじゃないか!!という発見ですね。発見とは「心地よい予想外」です。驚きと閃きの瞬間、このとき僕は『面白い』と感じています。
僕にとって『面白い』とは未知との遭遇です。それも自分を湧き立たせてくれる出逢いです。『楽しい』が拡散であるならば『面白い』は収縮と言えるかもしれません。
そんな『面白い』に出会うと一気に未来のイメージが広がります。そして、今までとは異なる未来像が見えてくると『ワクワク』が起こります。『ワクワク』とは現在とは異なる線の先にある未来であり、『面白い』によって生まれたもの。
この『ワクワク』を追い求めてカタチに落とし込んだときに、相手にとって良いモノになったと実感できると、それは『嬉しい』という感情を引き起こします。特に相手と自分で「一緒に」何かを実現できたと感じるときは、より『嬉しい』が強くなります。
ところで、自分はこのエネルギーを一体誰に向けるのか。いくら仕事とはいえ「キライ」な相手に向けるのはシンドいのです。でも『好き』だと思う人やコトに対してはいくらでもこのエネルギーを向けられる。
この『好き』とは相手の想いと自分の想いの関係性から生まれるもの。自分と同じような「共感」によって生まれるときもあれば、自分とは全く違うけれ「感銘」によって生まれることもある。必ずしも共感ではなくとも『好き』に繋がるのは面白いところです。これが分かってくると、苦手な相手でも『好き』を見つけやすくなるのもさらに面白いところ。
ここまで言語化できてくると、自分のポジティブ感情がうまく回るサイクルも見えてきます。
拡散し世界を広げることで『楽しさ』を感じ、閃きにより収縮することで『面白さ』を見出し、見えた未来像に『ワクワク』しながら実行策に落とし込む。その結果、相手とともに『嬉しさ』を感じられるよう努める。これらは『好き』を見つけられる相手とであれば、なお好循環する。
「行為感情」は『楽しさ』→『面白さ』→『ワクワク』の順番です。「結果感情」は『嬉しさ』ですね。『好き』はその両方に渡っているような気がします。
と、これはあくまでも僕の場合です。なので、皆さんも自分なりに考えてもらいたいと思います。
04.行為と結果のサイクルをまわす感情的アプローチ
さて、なぜこんなカタチで感情の解像度を高めたのか。
それは「行為」と「結果」はサイクルとして続いていくものだから、両方を適切にドリブンさせていくアプローチを考えるためです。
例えば僕の感情のサイクルで言えば「嬉しさ」とは結果です。逆に言えば結果が出なければ味わうことのできない感情です。もし僕が「嬉しさ」ばかりを追い求めていると、結果が全く出なくなってしまうと苦しくなるのでしょう。
しかし、ここで「行為感情」をしっかり求めていくと変わってきます。しかも、その順番を意識するとなおスムーズです。僕の起点は「楽しさ」、つまり拡散から始めればよい。そこを見失わずにいれば、いま自分がどの段階にいるのかに応じて次に追いかける感情も見えてくる。適切な順路を辿っていればポジティブな状態にいつでも戻すことができるので、前に進み続けることができます。
とは言え、自らの行為だけで世の中が成立するわけでもない。先に挙げたとおり「行為」と「結果」はサイクルとして続いていくものです。「行為」が内発であるならば「結果」は外圧と言えるでしょう。この両方を追いかけていくこと、サイクルにして思考を切り替えながら進むことが、止まらないエネルギーになるのではないでしょうか。
内発はアート、外圧はデザインと言ってもよいかもしれませんね。この2つサイクルさせていくために、まずは自分の感情に目を向けてみること。目を向けたときに時間軸の考え方を取り入れてみること。そんなアプローチをしてみると、ちょっと面白いモノが見えるかもしれませんよ。
とは言え、最初からいきなり自分の感情を的確に掴み取ってドリブンするサイクルを回すことは難しい。だから、最初に考えてみる取っ掛かりは「結果」と「行為」のどちらに強く惹かれるかを考えてみることだと思います。そうすると2つの方向性が見えてきますね。
①自分がドリブンする方向を強める日々の過ごし方を意識する
②自分が意識していなかった方向でもドリブンするか試してみる
①は分かりやすいと思います。結果にドリブンするのであれば早く結果が出るようにしてみるとか、毎日の生活の中で自分がギュンと高まる方向になるように行動する。
でも、実は②も結構イイのです。「自分が知らない自分」が「思い込みによる自分」によって隠されている場合もある。ミスチルも「知らぬ間に築いてた自分らしさの檻の中で」って歌っていますよね。
だから、自分が意識していない方向に自分をドリブンさせるものがあるかを探ってみることは、自分の可能性を押し広げることにもつながります。特に「結果」に意識が向きがちな人は「行為」そのものでドリブンできるかどうか探ってほしいかな。
05.好きを仕事にする前に、好きを知る
よく「好きを仕事にする」って表現ありますよね。
でも、自分の「好き」の解像度が高い状態でないと、選んだ仕事が本当に「好き」と結びつくのか分からないですよね。だから「好きを仕事にする」なら、前提として「自分の好きをメチャクチャ掘り下げる」が要るんだと思うのです。
で、「自分の好きをメチャクチャ掘り下げる」と、もっと大切なことに気づくんです。
「好き」の解像度が高いと、仕事の中から自分の「好き」に繋がるモノを見出せるようになる。自分がどんな状況・どんな行動にあるときに「好き」を抱くことができるのか正しく掴み取っていれば、取り組んでいる仕事の中から好きを見つけたり、仕事の解釈を変えて好きを見つけることができる。
つまり「仕事を好きになる」ことができるんです。
特に若い人には自分の感情に向き合って、それを表現することを積み重ねてほしいな。とは言え、若い世代は僕らと比べて圧倒的に感情の解像度が高いですけどね。そういう意味では年齢を重ねた人間ほど感情への向き合い方が大切になるのかもしれません。
自分の感情が「何によって動かされたか」と「どんな動き方をしたか」、この辺りに目を向けてみましょう。自分の行動の選択基準を見定める、一丁目一番地だと思います。
あなたの感情はあなただけのもの。その動きに耳を澄ませば、あなたがどんな行動を取るべきなのかもきっと見えてくるはずです。
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