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「当たり前」の枠をどんどん外したら、私らしい暮らしに辿り着くかもしれない
もし「2LDK」の家に住むなら、設定された間取りに合わせて暮らすべきだ。以前の私はそう思っていました。
ここはリビングだから家族が集うために使い、寝室だから眠るために使い、ゲストルームだからお客さんのために使う。
家とはそういうもので、それが当たり前だと思って疑いもしませんでした。
でも、間取りの呪縛から脱したとき「家ってこんなふうに使ってもいいんだ」と気持ちが解放されたんです。
当たり前だと思っていた枠を一度取り払うと、スッキリする。
この体験は、私が持ついろんな枠に気づくきっかけになりました。
家の間取りだけじゃない、物事の価値観、夫婦の役割、働き方や子育ても、あらゆる領域で「何となく当たり前だと思っている枠」があって、その範囲内で自分の形を探してしまう。
私は40代で共働きをしている一児の母です。このプロフィールだけでも「こんな人かな」と想像させる枠があると思います。無意識に「じゃあ、ここからは外れてはいけないだろう」と定める線引きもありそう。
でも、そんな枠は意識しなくてもいいんじゃないか。
いっそ枠の外側に飛び出したら、もっともっと自由で豊かな時間を過ごせるんじゃないか。
きっかけは家の間取りだったけれど、私はその先にある暮らし方や生き方にも興味が出てきました。
このnoteでは枠を越える体験や試みを記録して、私なりの「私らしい暮らし」を考えていこうと思います。
***
私は、大阪の平安伸銅工業という日用品メーカーで社長を務めています。
40年前に会社が発案した収納グッズ「突っ張り棒/突っ張り棚」を、自宅で使っていただいている方もいるかもしれません。
部屋のスキマや空間を収納スペースに変えた点では、これまでの「収納の枠」を外せた存在だと思います。
私も2015年に父から会社を引き継いで以来、多くの整理収納アドバイザーさんやデザイナーさん、建築士さんたちと組んで商品の普及に努めました。
でも、ある体験から暮らし方の枠と外し方を考えるようになりました。
「2LDK」だけど「2LDK」として住まなくていいのではないか
きっかけは、整理収納アドバイザーである友人の言葉です。
「1部屋空いてんのに、なんでわざわざこんな使い方してるん?」
彼女がそう指摘したのは、私が当時暮らしていた2LDKマンションのゲストルーム。
家族は夫婦2人だけだったので、空いている1部屋にゲスト用のスペアベッドを置いていました。
でもこのベッドが使われる機会は年に1回もありません。
その代わり、ベランダが狭かったのでその部屋に突っ張り棒をつけて洗濯物を干し、乾いた服は全部そのままベッドに置くのが習慣になっていました。だからいつもベッドには服が山積みです。
本来は来客用のベッドとして使われるはずのものに服が山積みされているので、見てあまり良い気分はしません。
仕方ないけれど、この家はこういう間取りなので当たり前。
そう思っていました。でも、彼女の言葉にハッとしました。
「LDKが決まっているからって、なんでその通りに使おうとするん? あなたたちの暮らしに合わせて空間を使えばええのに」
彼女は「洋服を置きたいならゲストルームごと大きなウォークインクローゼットにすればいい。あなたたちの突っ張り棒を山ほど部屋に使えば5畳の収納部屋になる」とアドバイスしてくれました。
早速ベッドは撤去し、自社の突っ張り棒を駆使して部屋の左右に服を掛けられるように改善。
洗濯物は部屋の右側に干して、乾いたら左側に移動させることにしました。これならいちいち服を畳む必要もありません。
模様替えの効果は絶大でした。
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枠を外して分かった3つのメリット
「やってよかった!」と実感した効果は3つあります。
無理のない生活動線ができた
服を干して収納するのはこの部屋だけと決めたので洗濯物や着替えの動線が楽になり、家自体が散らかりにくくなりました。
気づいていなかったけれど、私たちは元々「そこに洗濯物や服を置くのが合理的な動線で暮らしていた」のです。でもこの部屋はゲストルームだと思い込んでちゃんと実践していなかった。
無理な動線で部屋を使っていると暮らしに歪みが起こって、いつも物が出しっぱなしになり、心がザワザワします。でも、状態に合った家だとそれが起こりません。
使いこなせていない自分への罪悪感が消えた
「ゲストルームなのに散らかしている」というプレッシャーがずっとありました。でも「ここは物干し兼クローゼット部屋」と決めて管理していたらストレスがなくなりました。
「この部屋はゲストルームとして使わなきゃ」という枠は、勝手に私が定義していただけだった。自分への罪悪感がなくなったのはとても大きな効果でした。
他のエリアに応用できた
ゲストルームを大改造した後は、他のエリアも用途を変えました。
手狭で使いにくかった「ウォークインクローゼット」は、服ではなく死蔵品専用の倉庫にしました。
また「カトラリー入れ」としていた引き出しには山ほどフォークやナイフが入っていましたが、夫婦2人分以外は倉庫へ移動です。
一番使いやすい引き出しだったので、カトラリーだけでなく、ピーラーやお玉など使用頻度の高いキッチンツールを入れる場所にしました。
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「使いにくくて当たり前」を見直して使いやすいように変える。
小さな単位でも手を加えるとみるみる暮らしやすくなりました。
私たちは「小さなザワザワ」に蓋をしている
一度快適さを知ると、以前からの不快が浮き彫りになってきます。何となく暮らしにくい、何かイラッとする、そんな感情が日常に散らばっていたのです。
整えた後なら「あれは良くなかった」と分かるけれど、顕在化する前は当然の不自由だと思って許容してしまう。
家族の持ち物でもよく起こります。
夫がよく玄関にカバンやコートを置きっぱなしにするのですが、私はそれが嫌でした。玄関を開けるたびに物が目に入って心がザワザワしてしまう。
逆に夫は、自分の持ち物を勝手に片づけられることが嫌でした。片づいているけれど、自分が使いたいときにどこにあるのか分からないと心がザワザワしてしまう。
私たちは普段こういう「小さなザワザワ」に蓋をしています。ちょっと嫌だなと思っても見えないことにしている。
でも私はゲストルームの模様替えを体験して、これからは自分の中にある「ザワザワ」とちゃんと向かい合おうと思いました。
目をつぶって見ないことにするのではなく、なぜ心がザワつくのか原因を考えて、思い込みを外した根本から変えていくことにしました。
「ありたい暮らし」から逆算する
数年後、私たちは2LDKのマンションから引っ越しました。
次に選んだのは60平米の中古マンション。元々あった2LDKの壁を壊してリノベーションし、間仕切りのないワンルームにつくり替えました。
「間取りに合わせて物を並べても暮らしにくい」というのが当時の私たちの「ザワザワ」だったからです。
それより「私たちがどうありたいか」から逆算して暮らしをつくれば、もっと豊かな時間を過ごせると強く感じていました。
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でもこの家は父と祖母から大反対を受けました。
父からは「資産価値が低すぎる、なんでこんな物件にしたんだ」と言われ続け、結局娘の出産まで一度も来てもらえませんでした。
祖母は、スケルトンの天井やコンクリート打ちっぱなしの内装を見て「なんでこんな倉庫みたいな家に住んどるんや」とちょっと涙ぐんでいました。
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たしかに父や祖母の世代からすれば理解を超えた家だったかもしれません。ただ私たちには明確なコンセプトがありました。
好きな物を愛でられる空間をつくる
私はどちらかというと、物をたくさん持つことに抵抗感がないタイプ。日々使っている生活雑貨や、コレクションしたもの、人から譲り受けたものはなるべく表に出して触れていたい。
例えば祖父母からもらった食器や陶器は、これまで扉がある作り付けの棚に収納するしかなく隠れてしまっていました。
でも物が活用されないと私の幸せ度が上がってこない。
もし見えるところに置いていたら「お客さんが来たらこれを使おう」と思えるし、普段遣いをしながら「これはおばあちゃんからもらったものなんだよね」「これおじいちゃんがこういう理由で買ってきたから」とストーリーを話せます。
日常の中で思い出を感じ取れる、思い出を味わえる時間が増えると、暮らしの幸福度が高まる。それが私の「ありたい暮らし」だったのです。
だから新居にはオープンな飾り棚を作り、自分たちが本当に愛でたい物をバーッと壁に一面に並べられる設計にしました。
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その価値観もOK、私の価値観もOK
将来どんな資産形成ができるかに重きを置いていた父や、どう内装を整えるかに重きを置いていた祖母の価値観とはきっと合わない。
人によっては「それはないな」と感じるだろうし、ある人にとっては「良い考えだ」と感じるかもしれない。
そのどちらもアリだと思うんです。
でも、お互いに「それもあってもいいな」と認め合えたら、暮らしをもっと自由にできるのではないでしょうか。
大切なのは、私にとって「ありたい暮らし」をクリアにすること。世の中の枠や定義から離れて、本当は何をしたいのか自分で吟味してみること。
予算や面積だけではなく、何を優先して暮らしたいのか、どうすれば「小さなザワザワ」をなくせるのか。
「こうしなきゃ」とか「こうすべき」という枠から外れても大丈夫。私や家族の感覚では何が心地よいのか、それだけに集中して考えました。
ザワザワの理由が分かるとスッキリする
私は物をたくさん持っていたいほうですが、それでも優先順位の高低はあります。
例えば「機能だけでそこにストーリーがないもの」は消耗品として扱う傾向にあります。
逆に、物自体の来歴やストーリーに愛着があると、「手放したくない!」と思います。祖母から引き継いだ着物や祖父からもらった壺は処分なんてできません。
新婚のときに買った家具もそうです。
この家具たちはちょっと大ぶりで、かなり部屋の面積を取っています。「一回り小さいものに変えたら部屋が狭くなっても快適に暮らせそうだね」という話になったとき、自分でも驚くくらい気乗りがしませんでした。
気乗りどころか具合が悪くなって、最後にはテンションが落ちすぎて寝込んでしまったほど。
自分でも全く原因が分かりません。どうしてこんな機嫌が悪くなるんだろうと考えたとき、思い当たったのが家具への愛着でした。
「手放したくない、手放すくらいなら部屋を変えたくない」
そう思い詰めるほど大切な存在だった。手放す可能性が出て初めて大切さが分かりました。
自分にとって譲れない条件が1つクリアになって、「ありたい暮らし」のための優先順位をつけやすくなりました。
家は一生の買い物ではないと思う
「ありたい暮らし」はいろんな場所で実践できると思います。
リノベーションしたマンションから、現在は引っ越して賃貸マンションに住んでいます。3年以内にまた別の場所へ引っ越す予定です。
住まいは「一生の買い物」とよく言われます。
その瞬間にベストな物をつくって、なるべく新品の状態を維持できるように住宅を管理する方も多いと思います。元の状態から劣化させないよう、なるべく手を加えずに大切に暮らす。
もちろんその価値観もアリです。
でも私は最近、違う選択に目が向くようになりました。
箱を維持するというより、私が今どうありたいかを優先する。もし壁紙が少し剥がれてしまっても劣化とは捉えない。好きな色で塗り直したり、壁紙を貼り直したりすればいい。
私のやりたいことや好奇心に合わせて間取りを変えて、必要であればまた引っ越してもいい。
選んだ部屋でどこまで好き勝手ができるか、どこまで家づくりを楽しめるか、がテーマになりつつあります。
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考え方はどんどん変わるし、変わっていい
子どもが生まれて、間取りに対する考え方が変わったのも大きな理由の1つです。
夫婦2人でワンルームに住んでいたときは、突っ張り棒やカーテンを使って柔軟に間仕切りをしていました。
コロナ禍で在宅勤務が必要になると、リビングダイニングの一部をワークスペースにして夫婦でディスプレイを並べました。
でも子どもが生まれて「在宅勤務」×「子ども」の2要素が入ってくると、仕事に集中できるよう、完全に壁で仕切られた個室も必要と考えるようになりました。
じゃあ、今の3人家族が暮らしやすい家に移ろう。
そこでリノベーションした中古マンションは手放して、個室が確保しやすい間取りの今のマンションへ引っ越しました。今求める「ありたい暮らし」に合った部屋を選択し直したんです。
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ただ、この考え方も「今はこうです」と紹介できても、数年後には変わっているかもしれません。
それも含めて価値観や考え方、暮らし方はどんどん変えていい。
いったん「こうあるべき」の枠から離れてみる。本当に私が何をしたいのか「小さなザワザワ」を見つけて直す。チャレンジした後で続けたいかを考える。
変化すること自体も悪くない選択だと感じています。
みんなの「暮らすがえ」をサポートする
私たちの会社でも、暮らしや環境の揺らぎに合わせてもっと簡単に暮らしを変えていくことを意識し始めました。
私らしくあるために、自分自身で暮らしを変えていく。
私たちの会社では、その変化を「暮らすがえ」と名付けました。
暮らしは十人十色で正解というものはありません。ましてやSNSで発信した後のいいねの数や、見映えで評価されるものでもありません。
サポートしたいのは、世の中から「良し」と判断されたものではなく「その人らしさ」を表現できる暮らしです。
私自身、人生をかけて「暮らすがえ」を試行錯誤しているところです。最初に述べたように、その領域は住宅や生活だけでなく、価値観や働き方にも及びます。
どんなふうに枠を越えたら暮らしが変わるだろうか。どんな視点で考え直したら、もっと暮らしが楽になるだろうか。
このnoteでも、私のありのままの価値観や考え方をお見せしながら、そのヒントをお伝えできたらいいなと思っています。
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