M-1グランプリにアマチュアが出場して一回戦通過して二回戦で落ちた話
こんにちは。アマチュア漫才コンビ「犬はかわいい」の新海と申します。
下の画像のピンクの髪が僕です。
日本最大の漫才コンテスト「M-1グランプリ」。
M-1グランプリはプロ・アマチュアの制限がないので、結成15年以内のコンビであれば誰でも出られます。
そんなM-1グランプリ2024にアマチュアとして出場し、一回戦を通過し、二回戦で落ちた話をここにまとめておきます。
少し長く細かくなりますが、この先「素人だけどM-1出てみたいな」と思った人が、この記事を見つけて、参考にしてもらえたら幸いです。
M-1に出ようと思ったきっかけ
僕は漫才は素人ですが、職業として、コメディショートアニメの監督をしています。
仕事柄お笑いは大好きで、いつか自分でもやってみたいという気持ちはありました。逆に芸人さんたちへのリスペクトも強く、簡単に手を出せないなとも思っていました。
そんな中、2023年に転機がありました。
僕は趣味でバスケットボールをしているのですが、足首のケガで、以前のようにバスケットボールができなくなりました。
「いつかはバスケはできなくなる。今から新しい趣味を探そう」と思い、僕から友人に声をかけました。
「M-1に出てみないか」と。
コンビ結成
声をかけたのは、バスケットボール仲間のはやとさん。(2つ年上なのでさん付け)
お笑い経験はもちろんない素人ですが、面白くて、頭も良くて、声がムチャクチャ大きい。なにより趣味でやる漫才なので、一緒に遊んでいて楽しい人がいい。この人しかいないと思いました。
コンビ名は、僕らのバスケットボールチームと同じ「犬はかわいい」とすることにしました。
これが2023年8月、渋谷のほていちゃんでの出来事です。
実は2023年にも出ていました
鋭い方は気づかれたかもしれませんが、その転機は2023年の出来事です。
そう、実は昨年のM-1グランプリ2023にも出ているんです…!
昨年の結果は一回戦敗退。
恥ずかしかったのでほぼ誰にも伝えず出て、落ちたことも一部の友人にしか話しませんでした。
今思うと色々と反省がありました。
ネタは「記憶喪失」ネタ。
記憶を失った方が「え、アマチュアのくせにM-1出てるの?」「アマチュアのくせに相方とか呼ぶなよ」「アマチュアのくせに客いじりをするなよ」「マイクの高さ調整すなよ!」みたいなツッコミをいれていく、といったものでした。
ちょっと設定が複雑だったし、自虐的なのも良くなかったなと思います。
それでもある程度ウケはしたので、落ちた時はちゃんと落ち込みました。
2024年の改善ポイント
去年落ち込んだし、当初2024年は出るか迷っていましたが、はやとさんに「今年も出よう」と言われ、出ることにしました。
出るからには昨年より良いものにしようと思い、いくつかの改善を行いました。
①ネタを複数から選んだ
そんな多くはないですが、ネタをいくつか作って、その中から人の意見を聞いて選ぶという工程を踏みました。
②ネタ見せをやった
2023年は誰にも見せずに本番に臨みましたが、友達を呼んで、ネタ見せを行いました。2ネタ見せて好きな方に挙手してもらい、多かったネタをブラッシュアップしていきました。
(ライブとか出たらもっと良かったとは思うんですが、ギリギリで出場することにしたのでそれは叶いませんでした)
③スタジオを借りた
2023年はカラオケで練習していましたが、レンタルスタジオを借りて練習しました。大人の資金力を使いました。
カラオケより広いのも良いですが、鏡で自分たちの動きが見え、修正していけるのがとても良かったです。
上記の改善を行い、最終的に2024年は
「ハラスメント」
ネタでいくことになりました。
ハラスメント上等な若い社員に経営者が振り回されるネタです。
ありがちですが、僕らが実際に会社でそれなりの役職についていることを活かせる設定。あとはやとさんの特徴である「大声」を活かしたネタになりました。
アマチュアが難しいこと
僕は自分のアニメの脚本も書きますし、TKOさんの単独ライブのネタを書かせてもらったこともありますし、劇団のコント公演の脚本を全部書いたこともあります。
ネタを書くのは仕事みたいなものなので、そこまで大変ではありませんでした。(だったらもっと面白いのを書けと言われると何も言えませんが…)
ただ、面白く演じるのはアマチュアには本当に難しいと感じました。
自然な会話にならない。単純に面白くならない。
さらに、どちらかがミスをするとリカバリーできないのは致命的でした。
もしどちらかがセリフ飛ばしてもフォローできない。変な間ができるし、照れて笑ってしまったりする。これはどうしても直りませんでした。
なので丸暗記しました。タイミングも演技もぜんぶ決めて丸暗記。
ひとつでもミスったら終わりです。
「漫才は会話だから、ガチガチに決めてやると面白くならない」と言われているのは知っていましたが、そのレベルには達せませんでした。
練習を重ね、最終的に3回に2回はノーミスでいけるくらいになりました。
一回戦にエントリーするには
ここまで自分語りばかりなので、アマチュア出場の参考になるような情報も言っていきたいと思います。
あなたがもし出場を考えているサラリーマンだとしたら特に聞いて欲しいのですが、アマチュア出場最大のネックは、
「日程を選べない」
ことです。
正しくは希望日は出せるのですが、かなりの数を出さないといけません。
「A日程の中から3つ、B日程の中から1つ、C日程の中から4つの候補日を出せ」
とか書いてあります。ほとんど平日です。そんな休めるか。
(全部選ばなくても出れるのかもしれませんが、出れないのが怖いのでほぼ埋めました)
ちなみに日程の連絡はきません。
一週間前に、その日の出場者が公式HPで発表されるので、そこに自分たちの名前があったら行くというシステム。
どの日に出番になるかわからないので、毎日HPをチェックします。
ただ、出場料は安いです。
コンビでたったの2000円。
広く募りたいから安いんだと思いますが、非常に良心的だなと感じました。
一回戦出場
2024年9月13日、渋谷のシダックスホールにて一回戦に挑むことになりました。昨年と同じ会場です。
当日の出場者はグループに分けられていて、会場入りの時間は指定されています。
会場の控え室はそんなに大きくないので、だいたい常時15組くらいが、ところてん方式で入っては出てを繰り返しています。
よく聞かれた質問のひとつが
「自分の番終わったら他の人見れるの?」
でしたが、お答えします。
見られません。
そしてついに自分たちの番がやってきました。
ちなみに僕は、人生でもトップクラスのド緊張をしていました。
バンドやってたこともあるし、アニメでイベント出たりもして、それなりに人前に出る人生だったのですが、いつもよりも全然バクバクで、本番10秒前までずっと小声でネタ合わせをしました。
さっき言った「ひとつでもミスったら終わり」というのがプレッシャーだったんだと思います。
出囃子が鳴り、本番が始まります。
序盤の難所(僕が忘れがちなセリフ)をなんとかクリア。
余裕がなくそこまで細かくはわからないのですが、なんだか去年より全然ウケてる気がしました。ずっと笑いが起きてる。
無事ミスなく終了し、袖にはけて、はやとさんとハイタッチ!
これはいったんじゃないかと興奮しました。
歓喜の瞬間
会場を出て、見に来てくれていた友人と合流し、発表を待つために昼から飲みにいきました。
友人たちは口をそろえて、
「20組くらい見たけど1、2番目にウケていた」
「絶対通ってると思う」
と言ってくれました。よしよし。
M-1の合格発表は、当日にインスタライブで行われます。
飲みながら待ち、ついに発表。
友人たちとスマホに耳を寄せて聞き、「犬はかわいい」の名前があった瞬間、歓喜しました。
優勝したかのような喜びぶり。これ…一回戦だぜ?
決勝進出したコンビでもここまで喜んでない。
でもそれぐらい嬉しかったです。
ちなみにM-1一回戦の通過率は、全体で19.5%。
アマチュアに限るとなんと7.9%!
アマチュアには学生お笑いのコンビも多く含まれることを考えると、素人おじさんコンビの突破は快挙と言えると思います。
二回戦への準備
無事一回戦を通過した「犬はかわいい」。まだ他の会場の一回戦が残っているので、二回戦は一ヶ月くらい先でした。
僕らが二回戦までにやるべきことは、
ネタを3分にする
こと。
一回戦の持ち時間は2分なのに対し、二回戦は3分だからです。
これも多く聞かれた質問ですが、
「二回戦で同じネタやっていいの?」
お答えします。
大丈夫です。
というかどこまでを同じネタと判断するかは難しいですよね。尺も変わるし、一言だけ変えたら違うネタなのかとか。
僕らも同じネタを伸ばす選択をしました。
一ヶ月は長かったですが、ちょうど僕が実家の都合で長く愛知に帰っていたので助かりました。
合間を縫って稽古して、本番に挑みます。
そう、一回戦で大ウケしていい気になった僕らは、もう二回戦勝つ気マンマンになっていました。
二回戦出場
二回戦は10月17日、浅草の5656会館で開催されました。
当日朝からカラオケで稽古し、本番に臨みます。
二回戦からは、昨年準々決勝以上に進出したシードのコンビも出るので、チケットは即完。
僕らの日も、ダンビラムーチョさん、モグライダーさん、EXITさんなど、有名な方が多く出場されていました。
ただ、僕らの出順は1日の中でもかなり前の方だったので、会場は結構空いていました。(後半に人気コンビは固まっている)
そして本番。
一回戦のような緊張はせず、むしろ一ヶ月あったのでネタの仕上がりは増していました。
演技も相変わらず丸暗記ですが、一回戦よりは成長している気がします。
ミスもなく、ほぼ100点のプレイができたと思います。
ただ、ウケはそこそこでした。
舞台上からはそこまで反応が分からないのですが、多分通過するところまではいけてないなと感じました。
審判の時
見に来てくれた友人たちの反応は
「通過率が2割だったとしたらギリギリのライン」
という感じ。
身内びいきを含めるとやはり厳しいと思いましたが、どうしても受かりたかったので、一縷の望みをかけて発表を待ちました。
発表結果は…敗退。
名前を呼ばれることはありませんでした。
同じ日に「いぬ」さんがいたので、「いぬ」と聞いた瞬間だけオッとなりましたが、儚い夢でした。
一番悔しいのは、会場が空いていたこと。
会場から出ていった人のチケットは当日販売に回されるので、結局後半になればなるほど客席が埋まっていくシステムになります。
審査員はそれを踏まえて会場ウケで審査してないとは思いますが、多くの人に見てもらえたらそこから笑いの渦が生まれたのではないか、と残念でなりません。
(僕らより出順が前の人もいるし、言っても詮ないんですけどね)
二回戦の通過率は全体で22.6%、アマチュアで4.6%。
一回戦から数えると、
「二回戦を通過できるアマチュアは0.3%」
ということになり、とても高い壁なのは分かっていましたが、それでも悔しかったです。
こうして「犬はかわいい」のM-1グランプリ2024は幕を閉じました。
最後に
今年のM-1に出場して、本当に良かったと思います。
一回戦勝てたこともそうですが、今年は友人たちに言って出たので、応援してもらえたのがとても嬉しかった。
この場を借りて、改めてお礼を言わせてください。
そして何よりはやとさん。
友達(相方)とひとつのことに本気でチャレンジするの、ずっと楽しかったです。ありがとうございます。
今週末のM-1グランプリ2024決勝、めちゃくちゃ楽しみですね。
僕ら「犬はかわいい」は、次のM-1グランプリ2025に向けて、また頑張りたいと思います!
なにせ趣味なので。