千切りキャベツの正体
日本食の凄さを痛感したのは、ニューヨークのラーメンだった。
とにかく、店が多い。多分100店じゃ足りない。200店ぐらいある。そして、興味深いのは、それらラーメン屋のルーツ。中華料理の「拉麺」ではなく、日本のラーメンが流行っているのだ。一風堂、一蘭と言った見知った名前がニューヨークで「本場のラーメン」として扱われていることからも分かる。E.A.Kという横浜家系をモチーフにした店まであった。ちなみに、味も完全な家系。豚骨醤油のちぢれ麺。横浜民としては、泣けるほど、うまい。
確かに、「ラーメン」は、「拉麺」を飲み込み、変化させた。シンプルな塩や醤油だったはずのラーメンは、博多豚骨ブームを皮切りに、魚介でも、トマトでも、ちぢれ面でも極太麺でも、「麺に合うなら何でもあり」に進化させた。
それがHIPな最先端料理として、ニューヨークに受け入れられているのである。「日本の天ぷらが、インドでTEMPURA-TAに進化して、ニューヨークで流行った」といえば、「そんな訳あるか」というツッコミを入たくなる。でも、今、ニューヨークでラーメンが流行っているというのは、ほぼ同じ現象である。
この日本食の柔軟性については、トミヤマユキコさんが「ネオ日本食」としてラジオで語っていた。なんでも取り込むのは、ラーメンに限らない。パンは焼きそばパンに、インドカレーはコロッケカレーに、変えてしまうのが日本食。パンもイギリス辺りにいる頃は、まさか焼きそば挟まれるとは思わなかっただろう。そもそも焼きそばなんか知らんはず。
ところで、ここからが本題である。
とんかつについている千切りキャベツの由来だ。
そもそも論として、とんかつとは何者か。元々はフランス料理のコートレット (côtelette)。仔牛肉を細かいパン粉で炒め焼きする料理である。それが、日本に渡り、粗いパン粉で他の肉を焼き「カツレツ」に変化した。それを手に入りやすい豚で調理したのが「トンカツ」である。
そして、そのコートレットに付け合わせで付いていたものがある。ザワークラフトである。乳酸発酵させたキャベツの漬物と言えば良いのか。そして、それが、日本に持ち込まれた際に、一時的にKFCでお馴染みコールスローなどにも変化した。そして、最終的に落ち着いたのが千切りキャベツだ。
考えたことがなかった。生まれた時から、とんかつには千切りキャベツだった。そこに、奴がいることに何の違和感も持ったことがなかった。だから、由来なんて考えたことがなかった。
だが、彼は元々はドイツにいたのだ。人間なら白眼金髪のイケメンだったのだ。それが、ドイツから長い旅を経て、姿かたちを変え、今日もとんかつ屋さんで毎日顧客に提供されているのだ。和服かなんか着て。トンカツソースをだばだばかけられて。
千切りキャベツは、ドイツ生まれの「ネオ日本食」だったのだ。
千切りされただけなんだけど。
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上記は、TBSラジオ、アフター6ジャンクションからの情報でした。飲食のプロ、イナダシュンスケさんのコールスロー特集。最高。思わずコールスロー作った。