去り際
そういえば、2018年9月23日の夜はルーフトップバーに行っていたんだった。
それは、1年3ヶ月住んだニューヨークから離れる前日。賃貸の都合でマンションは既に返し、数日間ホテル住まいをしていた。引っ越しのために有休を貰っており、働いていた会社の人々には既に別れを告げていた。好きだったミュージカルも見返したし、通っていたレストランにも妻と再訪し終えていた。やるべきことは済ませていた。
最後は、折角だからニューヨークの綺麗な夜景が見える所に行って、ゆっくり過ごそう。それでルーフトップバーに行った。
Roof Top Bar、つまり、高層建築物の屋上にBarがある建物は、米国に広く存在するが、ニューヨークは特に多い。狭いマンハッタン島は世界中からありとあらゆる人が流れ込み、その人々を吸収するため街は高層建築に溢れている。それを活かして、様々なホテルがルーフトップバーを設けている。妻とせっかくならと色々と廻った中でも、一番の夜景にようやく巡り合えていた。
そのホテルは、マンハッタン島の中でもアッパーウエストの外れに位置している。最も栄えているミッドタウンに行くと、ビルに囲まれて空が狭い。それに対し、このホテルの周辺は比較的高層建築が少ない。そのため、バーの屋上の端まで行けば、開けた視界の中、背の高いマンションが幾つも立ち並び、それぞれが断片的な輝きを纏っている。空の月は、街中が輝きに満ちて、ほとんど存在感がない。
夜景を見下ろしながら、短かった1年3か月を思い出していた。様々な景色を見た。様々な人に会った。様々なものを学んだ。すべてがうまくいったわけではない、でも色々な挑戦をした。ここで得た様々なものが、この後の人生を決定的に変えていくかもしれない。
その全ての感情が絡み合って、結局、シンプルな一言に落ち着いた。
楽しかった。
うん、楽しかったよ、ほんとに。
数年ぶりにスマートフォンに保存されていたこの写真を見返した。
特別な時期が過ぎ去る最後の時は、いつも同じことを感じるな、と思う。
とても特別な、たのしい時間だった。
だから、ちょっと、さみしい。
今日、バトンズの学校の第一期が終わりました。
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