健康維持は、継続が重要で大変 ~感想:『図解 ランニングの教科書』(著:中野ジェームズ修一)~

 最近、50代の人の大事にする価値観を聞く機会があった。
 そして、口を揃えて「健康が第一」という話をしていた。家族との穏やかな暮らしも、仕事での貢献も全ては健康が前提。健康が第一。

 違う文脈でも同じように解釈できる話を聞いた。
 最近、再雇用年齢が引き上げられようとしている。だが、現実的な目線からすると、全員を再雇用したい訳ではないという。
 そこでも重要になるポイントの一つは、健康だ。60歳を超えると、健康状況には大きな差がある。健康で働く意欲があり能力もある人であれば雇用したい。そうでないならば、考えたい。そんな話だった。

 30歳も後半になると、自分の健康について考えることも多い。
 明らかに体力は低下している。体格も変わってしまった。20代後半には、登山やランニングが趣味だったが、数年かなり遠ざかっている。今年も運動習慣を目標に掲げたが、実現できたとは言い難い。

 そんな問題意識で手に取ったのが、『図解 ランニングの教科書』。パーソナルトレーナーとして知られる中野ジェームズ修一の一冊だ。
 個人的に読み終わって感じたのは、「習慣化」の重要性と難しさだった。

 この本のテーマは、「ランニング習慣を身に付けるハードルを出来るだけ下げたい」という事だと思う。対象を初心者に絞っているからだろう。他のランニング専門書と比べると、ハードルを下げる提案をしてくれる

 例えば、「苦しければ歩いてもOK! 成功の鍵は継続」という章にはこんな記述がある

 運動不足の初心者が、最初から何十分も走り続けるのは難しいと思います。(略)
 そこで、これからランニングを始める皆さんにとっておきのアドバイスがあります。それは「苦しくなったら歩けばいい」です。

 「何時頃走るのが効果的ですか?」という問いには、著者はこんな回答をしている。

 その気持ちはよく分かるのですが、実はどの時間帯でもランニングの運動効果は大きくは変わりません。最も効果的なのは、”特定の時間に走ること”ではなく、自分にとって一番続けやすい時間帯を見つけ、習慣にすることなのです。
 「気分がいい」「楽しい」と感じることが習慣化のポイントになりますので、ご自身のライフスタイルに合わせて、自分にとって最も快適なタイミングを見つけて下さい。

 優しい。甘いとすらいえる記述に見える。
 一方で、習慣化することの難しさについても、触れてくれている。
 個人的に一番ハッとさせられたのは、下記の記述だった。

 40代になると、みなさん口を揃えて「体力が衰えてきた」とおっしゃるのですが、実際に衰えているのは体力ではなく疲労が回復するスピード、つまり「リカバリー力」です。これは本当に年齢には勝てません

 確かに。
 正直、現状ランニングを時々して感じるのは、翌日や翌々日の辛さだ。身体がだるい期間が長く続く。そして、長く続くことがわかり、仕事や子育てがしんどくなることが目に見えているから、走ることがより億劫になる。
 その意味では、健康を意識し始める40前後の人間にとっては、複数のハードルが待ち構えることになる。日々の忙しさ。その中で、継続的に走ること自体の面倒さ。リカバリー期間の長さ。中々に世知辛い。

 だが、これは、多分スタート地点だけの問題なのだ。習慣がなされ、体力が一定付けば、走ることに身体が慣れ、つらさ自体が和らぐのだと思う。だが、始める時は、そもそものその体力がない。だから、より辛い。

 その辛さに寄り添おうとするからこその「甘さ」なのだろう。そして、多少甘くして、はじまりのトレーニング強度を落としてでも、「習慣化」することがより重要だ、という考えなのだと思う。
 記載の優しさから、逆に「習慣化」の難しさについて考えさせられる本だった。

 厚労省の推奨は、週2回、30分以上の運動。
 リカバリーの辛さを乗り越えて、その習慣を身に付けられるだろうか。
 少なくとも、その重要性と方法論はよく分かる本だった。

  しかし、健康維持って、行ってしまえば死ぬまで続くタスクだ。
 それを週2回を数十年とか考えると、軽く気が遠くなる。


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