怒涛の3行怪談×1,000話詰め!『千粒怪談 雑穢』(神沼三平太)著者コメント・試し読み・朗読動画
千人が体験した恐怖。
千種類の怪異。
千回分のゾクッ。
内容・あらすじ
「路上に座り込んでいる少女がいた。
全身が真っ黒で、肌は爛れている。
女性が前を通る度に顔を上げて、「お母さん?」と訊ねている。
「見ちゃ駄目だからね」との友人の忠告にも拘らず、横を通るときに横目で少女の方を見た。
そこには誰もおらず、小さな靴だけが落ちていた」
10秒で読める怪奇譚が1000話。
1日1怪、1000日分の恐怖詰め!
3行に凝縮された恐怖。
体験者から語られた本当にあった怖い話を1,000話記録した膨大なる実話怪談集。
失踪した友人が最後に残した奇怪な言葉。
死者の魂が飛び交う不思議な壷。
霧の遊歩道を引きずられていく縄で縛られた女。
硯箱の二重底に隠されていた謎の写真。
ベランダに落ちていた青い卵の恐ろしい中身。
海岸で拾った呪いの石。死んだネット友達の母と名乗る女からかかってくる怪電話。
母が亡くなる直前、自宅の廊下に現れた異形。
飼い猫がテレビの裏で一心不乱に齧るモノ…。
1日1話読むとして、およそ2年9か月分のゾクッがこの1冊に封印されている。
お休み前に一服の闇をどうぞ――。
著者コメント
試し読み 5話
#132 友人が驚いたような顔で校舎の最上階を指差した。教室には鍵が掛かっているはずだが、窓に両腕を上げた黒いシルエットが張り付いている。次の瞬間、全く同じ黒いシルエットが隣の窓に張り付いた。更に一人が窓に張り付いた。その直後、二人で逃げるようにその場を後にした。
#213 ある団地の一室が、外から見るとゴミで一杯だとの通報を受けた。管理人がその部屋のドアを開けると、人が入れるような隙間もなく、ぎっしりゴミが詰まっていた。ただ、どの窓にも鍵が掛かっており、更に前の住人が引っ越した際にも、綺麗に片付けて出たのを確認している。
#302 マンションの天井の壁紙が妙に膨らんできたので、上の階で雨漏りでもしているのではないかと業者を呼んだ。業者はその膨らみを触り、「何かありますね」と言って、カッターで切った。中からは猫か何かの動物の毛がばさばさと落ちてきた。壁には割れ目も染みもなかった。
#490 残業していると、右肘を何かが引っ掻いた。肘を撫でたり周囲を見回しても原因が掴めない。気を取り直してキーボードを叩き始めると、また何かが肘を掻き始めた。チラリと見ると書類の間から紙のように薄い顔が覗いていた。それは大きく口を開けて、肘に前歯を立てた。
#855 家族は自分を残して、皆死んでしまった。皆死ぬ前に、「家の前に立ってるあの家族に謝らなきゃ」と言って、一度玄関を出ると、すぐに戻ってくる。そしてその夜に息を引き取る。そんなことを何度も繰り返してきた。いつ自分のところにその家族が来るのか気が気ではない。
―了―
朗読動画
5/27 18時公開!
著者プロフィール
神沼三平太 Sanpeita Kaminuma
神奈川県茅ヶ崎市出身。O型。髭坊主眼鏡の巨漢。大学や専門学校で非常勤講師として教鞭を取る一方で、怪異体験を幅広く蒐集する怪談おじさん。猫好き甘党タケノコ派。最近は対面で取材したり、怪談会を開催したりが憚られるのが悩みの種。成長期よ永遠なれ。主な著書に『実話怪談 凄惨蒐』、地元湘南の怪異を蒐集した『湘南怪談』、『実話怪談 吐気草』ほか草シリーズ。共著では『恐怖箱 煉獄百物語』ほか「恐怖箱百式」シリーズのメイン執筆、若本衣織との共著『実話怪談 玄室』などがある。