2021年11月14日
【今日は何の日?】11月14日:パチンコの日
1966(昭和41)年11月14日に、全国遊技業協同組合連合会が通産省から正式に認可されたことにちなんで制定された記念日。
さて、本日の一話は?
「自販機」
『もしもし! 俺です俺! 夜遅くにごめん。今、時間いい? 聞いて聞いて!』
電話を取ると眠巣氏の声。だいぶ興奮している。
「なに? どしたの?」
『今、出た。面白いもん出た』
当人が興奮していて要領を得ないので、以下再現してみる。
眠巣氏は、仕事から終電で帰ってきたところだった。
忙しかった仕事がようやく一段落したので、古書店で怪談本をまとめ買いしてきた。
その怪談本を読みながら駅を出たのが、今から十五分くらい前というから午前零時半くらいだろうか。
アパートへの帰り道は身体が覚えている。
街灯の明かりの下でページをめくりながら、シャッターの降りた街を歩いた。
途中、パチンコ屋があった。
とっくに閉店しているようで、店内に人の気配はない。
いつもこの店の前の自販機でジュースを買っている。今日はどうしようかな、と逡巡しながらその脇を通りかかったとき、話し声が聞こえた。
「……ましもすりょしいにしゃれぃ」
「……とめれしにきりもかとるな?」
「……らもりょもかとるつえは」
三十代くらいの男の声だった。
何か会話を交わしているようだが、およそ日本語ではない。
通りすぎかけたところで、気付いた。
『その声、自販機の中から聞こえてたんだわ』
「そんなことないだろう。店の中に誰かいたんだろう?」
『いや、絶対違う。だって、ジュースの取り出し口、あそこから声が聞こえてたもん』
二~三歩すぎたところで立ち止まり、振り向く。
声は止んだ、という。
★
――「自販機」加藤一『禍禍―プチ怪談の詰め合わせ』より