恐怖を紡ぎだす新たな書き手29名が参加 次世代の参加型怪談本『投稿 瞬殺怪談』冒頭3話「うるさい電話」「いませんけど」「外灯の下」試し読み
読み手を一刀両断する恐怖
あらすじ・内容
恐怖を紡ぎだす新たな書き手29名が参加。怪談作家8名と、応募作全729作から厳選した鋭利すぎる短編実話怪談、147篇!
あっという間にすぐ読めて怖い!
超短怪談の人気タイトル「瞬殺怪談」がニューフェイズで登場。怪談作家たちによる書き下ろしに、公募により厳選された29人42作品を加えた147話を収録。
・亡くした愛猫のつけていた鈴の音、それは…「ねこだまし」(黒
木あるじ)
・瑕疵物件だという友人の部屋で呑んでいると…「やっぱりね」(つくね乱蔵)
・祖母の家の冷蔵庫に詰まっていたものの記憶「蟹群」(我妻俊樹)
・同棲していた彼女が言うには…「号泣の告白」(黒史郎)
――ほか、田辺青蛙、丸山政也、鈴木捧、鷲羽大介が参加。
新たな才能と恐怖の発見をお届けする!
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冒頭3話試し読み
うるさい電話 つくね乱蔵
毎週末、美智子さんは母親に安否確認の電話をかけていた。
ある日の会話中、母の後ろから妙な音が聞こえてきた。
まるで雑踏の中にいるような、ざわついた音である。かけたのは固定電話だ。家の中で、そんなものが聞こえるはずがない。
テレビの音声かと思い、音を小さくするように頼んだのだが、そんなもの点けていないという。
じゃあいったい何なのよと言いかけた途端、唐突にざわめきが止んだ。
次の瞬間、大勢の人が声を揃えて母の名前を呼んだ。
「西田多佳子」
いきなり静かになった。
「母さん、今のなに?」
呼びかけても返事がない。それが最後だった。
発見された時、母親は電話に噛みついた状態で息絶えていたという。
いませんけど 黒 史郎
二十年以上前に宇都宮へ出張にいった際、K氏がYさんという女性客から聞いた。
友人間で「待ち場」と呼んでいた公園脇の道路がある。女性がそこに車を止めていると、すかさず男の乗った車が横付けしてくる。ナンパ目的で、そこはそういうスポットであった。
相手とマッチすれば一緒に車で出るが、タイプじゃない、キモイ、ヤバそう、そういう
相手が来た時は即座に断る。すると順番待ちしていた次の車が横に来て声をかけてくる。
ある時、声をかけてきたのは遊んでいそうだが顔のかわいらしい二人の男。熱烈な誘いにわざと「どうしよっかな」という態度をとっていると、相手の車の後部座席から二人の女がグンッと前に身を乗り出して顔を見せてきた。
(え? 女付きでナンパ? なんのつもり?)
そのことを指摘すると、男たちはきょとんとして「いませんけど」と無人の後部座席を見せられた。ならいいかとはならず、女の幽霊にとり憑かれているなんてヤバイ男たちに決まっていると判断し、適当に言って断って「待ち場」を去ったという。
外灯の下 丸山政也
今から二十年ほど前、Bさんが小学五年生頃のこと。
春先のある日の夕方、塾が終わってBさんは自宅に向かって歩いていた。
時刻は午後五時を少し回ったほどだったが、辺りはすっかり薄暗くなっている。
塾のある大通りから自宅へは、途中に大きな墓地のある欝蒼とした寂しい道を通らねばならなかった。外灯はかなり間隔をあけて、ぽつりぽつりとあるばかり。
すると、百メートルほど先の外灯の下にひとが立っている。眼を凝らすと、こちらに向かって手を振っているようだ。
そのシルエットで母親が迎えに来てくれたのかと思い、Bさんは少し安堵して小走りでそちらのほうに急いだ。
だが、しかし――。
それは母親ではなかった。
幾百、幾千もの得体の知れない虫の大群が、人間としか思えない形を作りながら、せわしなく飛び交っているのだった。ぶんぶんと激しい羽音を鳴らし、黒い影はまるでひとが深い呼吸でもしているかのように蠕動している。
それを見るやいなや、一気に怖気立って全速力で自宅に逃げ帰ったという。
後に思ったことだそうだが、真夏でもないのに虫があれほど外灯に集っていたのも不思議だとBさんは語る。
著者紹介
我妻俊樹 (あがつま・としき)
『実話怪談覚書 忌之刻』にて単著デビュー。著書に「実話怪談覚書」「奇々耳草紙」「忌印恐怖譚」「奇談百物語」各シリーズ。共著に「怪談四十九夜」シリーズなど。
黒木あるじ (くろき・あるじ)
怪談作家として精力的に活躍。著書に『山形怪談』のほか、「怪談実話」「黒木魔奇録」「怪談売買録」各単著シリーズなど。共著に「怪談四十九夜」「奥羽怪談」各シリーズなど。
黒 史郎 (くろ・しろう)
小説家として活動する傍ら、実話怪談も多く手掛ける。「黒異譚」「実話蒐録集」「異界怪談」各シリーズ、『横浜怪談』『川崎怪談』など。共著に「怪談四十九夜」シリーズなど。
鈴木 捧 (すずき・ささぐ)
【怪談マンスリーコンテスト】において、最恐賞と佳作をそれぞれ3度受賞。著書に『実話怪談 花筐』『実話怪談 蜃気楼』。共著に『怪談四十九夜 病蛍』など。趣味は山登りと映画鑑賞。
田辺青蛙 (たなべ・せいあ)
『生き屏風』で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。著書に「大阪怪談」シリーズ、『紀州怪談』『関西怪談』『北海道怪談』など。共著に「京都怪談」シリーズなど。
つくね乱蔵 (つくね・らんぞう)
『恐怖箱 厭怪』で単著デビュー。著書に『恐怖箱 厭満』『恐怖箱 厭福』など。共著に「怪談四十九夜」「恐怖箱テーマアンソロジー」各シリーズなど。黒川進吾の名でショートショートも発表。
丸山政也 (まるやま・まさや)
2011「もうひとりのダイアナ」で第3回『幽』怪談実話コンテスト大賞受賞。「信州怪談」「奇譚百物語」各単著シリーズなど。共著に『エモ怖』、「怪談四十九夜」シリーズなど。
鷲羽大介 (わしゅう・だいすけ)
一七四センチ八九キロ。右投げ右打ち。「せんだい文学塾」代表。著書に『暗獄怪談 憑かれた話』、共著に「江戸怪談を読む」「奥羽怪談」「怪談四十九夜」各シリーズなど。
クダマツヒロシ (くだまつ・ひろし)
兵庫県神戸市出身。黒目がち。2021年から怪談を語る活動を開始。兄の影響でオカルトや怪談に興味を持ち、幼少期から現在に至るまで怪談蒐集をライフワークとしている。
あんのくるみ (あんのくるみ)
絵本から怪談まで作品は幅広い。2020年刊行の絵本『つまさきもじもじ』は韓国でも翻訳出版されている。2023年随筆春秋賞にて佐藤愛子奨励賞を受賞。無類の猫好き。
雨水秀水 (うすい・しゅうすい)
平成生まれ。東北出身。
ヒサクニ (ひさくに)
静岡県静岡市出身。公認心理師、精神保健福祉士。人間の精神・心理に係わる怪異や恐怖体験を基にしたホラー作品の執筆に励む。高IQ団体JAPAN MENSA会員。
北城椿貴 (きたしろ・つばき)
神奈川県出身。2020年頃から怪談作家、怪談師として活動。会社員のかたわら各地の歴史にまつわる怪談を蒐集している。共著に『高崎怪談会 東国百鬼譚』など。
吉田 零 (よしだ・れい)
幼少より怪異に馴れ親しみ、怪談ジャンキーとなる。タバコと怪談があれば生きて行ける。タバコと怪談がないと生きて行けない。幽霊の恋人多数のエロオヤジ。
緒音 百 (おおと・もも)
佐賀県出身。大学時代に民俗学を専攻し、語り継ぐことの楽しさに目覚めて以来身近な怪談・奇談を蒐集している。共著に『鬼怪談 現代実話異録』『呪術怪談』など。
緒方さそり (おがた・さそり)
群馬県在住。O型、蠍座。趣味、読書と深夜ラジオ。小中高時代、林間学校や修学旅行に怪談本を持って行き、他の生徒達に引かれていた、陰気キャぼっち系怪談ジャンキーです。
影野ゾウ (かげの・ぞう)
VTuberとして初めて怪談最恐戦への出場を果たす。VTuber×怪談をテーマに、カプセルトイの販売やコラムの連載などを行う。
キアヌ・リョージ (きあぬ・りょーじ)
オカルト好きな祖母の影響により幼い頃から不思議に興味を持つ。現在、幽霊の出る工場に勤めており、日夜その存在に怯えながらも執筆活動に励んでいる。
春日線香 (かすが・せんこう)
大分県出身。2000年より詩作を開始する。著書に『詩集 十夜録』(私家版)。料理と読書、怪談をこよなく愛する。この世のほかならどこへでも。
鍋島子豚 (なべしま・こぶた)
東北の港町出身。酒の席での怪異収集が生き甲斐の永年中間管理職。愛猫ハイムラとセンセイに囲まれ、雪国生活を謳歌している。
天神山 (てんじんやま)
奈良県出身。ペンネームは落語の演目から。田辺青蛙先生のガチ推し勢。読むと胸がキュッと苦しくなる、唯一無二の世界観が大好きです。実家にバケモンがいます。
斉木 京 (さいき・きょう)
福島県出身、東京都在住。幼少の頃から怪談や妖怪に傾倒。著書に『贄怪談 長男が死ぬ家』、共著に『奥羽怪談』『恐怖箱 霊山』『田舎の怖イ噂』など。
藤野夏楓 (ふじの・かふう)
神奈川県出身。YouTubeにて『ねこぽて』名義で怪談朗読動画を配信。心霊特番のナレーション、短編ホラードラマの制作協力、ネット声優など多方面で活躍中。
天堂朱雀 (てんどう・すざく)
今の癒やしは柴犬とカワウソの徳島県生まれ。
夕暮怪雨 (ゆうぐれ・かいう)
怪談好きの書店員。執筆業の父と漫画家・伊藤潤二から大きく影響を受ける。YouTube にて夕暮兄弟名義、弟の血雨と怪談朗読動画を配信。サウナと猫を愛す男。共著に『実話怪談 怪奇島』など。
雪鳴月彦(せつなり・つきひこ)
福島県在住WEB作家。家族全員が過去に不可思議な経験をしているおかしな家で育つ。共著に『街角怪談』『百物語 サカサノロイ』『実録怪談 最恐事故物件』など。
高倉 樹 (たかくら・いつき)
大阪にて、古書店を営む一般人。河童捜索活動に従事し7年目に突入するも未だホシ見つからず。執筆業、装丁デザイン、本に関するよろず承ります。
青葉入鹿 (あおば・いるか)
静岡県富士市出身。学生時代は文化財について学び、現在は行政書士として働く傍ら介護福祉士としても高齢者を中心に怪奇な話や腑に落ちない経験の採話をしている。
沫 (まつ)
ディレクター業及び映像作家。芸能方面にて経営から企画、プロデュース、バンドのマネジメントのほか、自らがミュージシャンとして活躍する。一方、ウェブ作家として活動する父・筆者(ふでもの)と共に怪談ジャンルに挑戦。一日一話、千話終了のショート怪談をTwitterアカウント〝みっどないとだでぃ〟にて連載中。
宿屋ヒルベルト (やどや・ひるべると)
北海道出身、埼玉県在住。幼い頃はアンビリバボーとUSO!?ジャパンに震え上がった平成一桁生まれ。本業は編集者。共著に『恐怖箱 呪霊不動産』など。
多故くらら (たこ・くらら)
東京都在住。人生の三分の一が怪談でしたが最近は三分の二になりました。西に東に怪奇を求めて奔走中。好きなものはタコクラゲと冷やしトマト。
小泉怪奇 (こいずみ・かいき)
関西在住。怪談蒐集家。長年、怪談を取材し続け、時折ネットや書籍で怪談を書いたり、過去に怪談イベントで語ったりもしていた。
卯ちり (うちり)
秋田県出身。2019年より実話怪談の蒐集を開始し、執筆と怪談語りの双方で活動。共著に『実話奇彩 怪談散華』『奥羽怪談 鬼多國ノ怪』『呪術怪談』など。
猫科狸 (ねこかたぬき)
沖縄県出身。趣味はプロレス鑑賞、お絵描き。幼少期、父親から怪談噺、ホラー映画を見せられた事でその魅力に惹きこまれ、現在も恐怖体験、怪奇現象を探し求めている。
墓場少年 (はかばしょうねん)
愛媛県松山市在住。書店員やアパレルブランド店長を経て現在は温泉旅館勤務。安全地帯での怪談収集を信条としているが、地域密着型の怪異が多い為、たまに呪われる。
かわしマン (かわしまん)
埼玉県加須市出身。会社員。noteにて実話怪談、短編小説、アイドルソングのレビューなど幅広く執筆している。
浦宮キヨ (うらみや・きよ)
静岡県焼津市出身、浜松市在住。会社員として働く傍ら怪談を執筆。小学生の頃、図書室で借りたホラー小説をきっかけに人ならぬものの世界に魅了され、今に至る。