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2021年12月6日

【今日は何の日?】12月6日:姉の日

9月6日「妹の日」から3ヵ月後となることにちなんで、兄弟型姉妹型研究の第一人者で漫画家の畑田国男氏が記念日に制定しております。ちなみに、弟の日は3月6日、兄の日は6月6日となっています。

さて、今日の一話は?

「人感センサー」

小沢さんの自宅のすぐ側に、大きなお屋敷がある。その地域の大地主の家で、旦那さんは整形外科医だという話だ。
 小沢さんの娘達は、幼い頃からその屋敷の前を通るのを嫌がった。
 理由を訊くと、怖いのだという。そのお屋敷の前が小学校までの通学路なので、必然的に毎朝その前を通ることになる。だが、朝や昼間は仕方なくといった感じで走り抜けるし、夕方以降になると、絶対にそっちを通りたくないと涙目で言う。
 夕方、クラブ活動で遅くなるときには、わざわざ回り道をして戻ってくることもある。
「何で怖いの?」
 あるとき、小沢さんは娘達に訊ねた。
 姉妹が何故怖がるのか、自分にはよく分からなかったからだ。
 妹のほうが、
「ママ、分からないの?」
 と訊き返した。姉のほうが、
「あの家、黒いのが一杯いて、あの前を通ると付いてくるんだよ」
 と言った。小沢さんは信じられなかったが、姉妹揃って言うのだから母として信じない訳にもいかなかった。
「ママ、信じないなら見せてあげる」
 姉のほうがそう言って靴を履き、道に出た。
「一緒に来て」
 後を付いていくと例の屋敷に向かった。
 屋敷のガレージは、前を通ると人感センサーで明かりが点き、通り過ぎるとすぐ消える。
 それは小沢さんも知っていた。
「見ててね」
 姉はそう言うと、ゆっくりガレージの前を通り過ぎた。パッと明かりが点いた。通り過ぎるとすぐ消えた。小沢さんが何を言いたいのかしらと思って見ていると、誰も通っていないのに、再度明かりがパッと点いた。
「お姉ちゃんの後ろ、今、男の人がいる」
 小沢さんの横で妹がぼそりと呟いた。



――「人感センサー」神沼三平太『恐怖箱 百聞』より

☜2021年12月5日 ◆ 2021年12月7日☞