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2021年12月13日

【今日は何の日?】12月13日:大掃除の日

積もり積もった今年の汚れを落とし、気持ち新たに新年を迎えようとのことで、ハウスクリーニング事業を展開する株式会社東和総合サービスが、記念日に制定しています。

さて、今日の一話は?

「煤けて」


 東さんは仏壇を綺麗に掃除し、その後で手を合わせるのが毎日の日課である。
 ある日、いつものように仏壇を綺麗にしようと、両開きの扉を開けた。
 仏壇の中から焦げた臭いが部屋に広がった。何かが焼けた臭いが鼻を突いた。
 青くなった。仏様から小火を出してしまった。
 しかし、すぐに思い直した。昨晩は最後のお勤めを終え、蝋燭も線香も全ての火の気が落ちたのを確認してから扉を閉めたはずだ。

 確認してみると、やはり小火の痕跡があった。どうやら閉められた扉に火が燃え広がったらしい。
 開け放たれた扉の裏側だけが、無惨にも真っ黒に煤けていた。しかし内側の厨子の扉は綺麗なものだった。位牌も全く煤けていない。
 煤けた扉をよく見ると、無数の掌の跡が重なるようにして残っている。
 掌の跡は煤を散らすように黒く何十にも重なっていた。誰かが必死に火を叩いて消したように見えた。
 だが、昨晩は東さんは仏壇から火が出たのを見ていない。
 そもそも仏壇の脇で寝ていたのだから、煙でも出れば気付いたはずだ。内側から叩いたなら音が響いたはずだ。

「ご先祖様の内のどなたかが、護ってくださったのではないかと考えております」
 東さんはそう言って手を合わせた。

――「煤けて」神沼三平太『恐怖箱 百聞』

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